9月22日(火)夜
さて。
なにもしない、と、書いたが、
一日だけ、芝居見物。
これ、あまりにも有名な芝居であるが、
私は初見。
観ていないのに特段の理由はないと思うのだが、
毎年一回程度はかかっており、たまたま芝居を観ようという時に
上演されていなかったからであろう。
しかし、たかだか年に2〜3回だが、
もうなん年も、半分勉強だと思って歌舞伎を観ているが
まだまだ有名な芝居を観終わっていない。
落語などでは、寄席はもっと安いし、テープなども多数売られている。
そういう意味では安直に聞くことができる。
歌舞伎というもののハードルの高さに加えて、
圧倒的な作品群の厚み、ということであろう。
毎年九月の歌舞伎座は、表題にあるように「秀山祭」といって
初代吉右衛門の芸を偲んで、彼のあたり狂言を
当代吉右衛門などを中心に上演されている。
4時半開演なので、着物を着て3時すぎに
内儀(かみ)さんと出る。
まだ夏物。
青竹色の小紋の一重に深緑の紗の羽織。
白足袋に雪駄。
よい天気で湿度は低いが、着物を着て歩くと
そこそこに暑い。
稲荷町から銀座線に乗って銀座で降りる。
早めに出てきたのは三越に寄って、弁当を買うため。
今日は、日本橋[弁松]の二段。
ご飯は蛸飯。ちょっと珍しいのでこれにしてみた。
歌舞伎座正面。
「伽羅先代萩」の看板。
開場になり、入る。
ビールと筋書を買ってイヤホンガイドを借りて
席に着く。
席は一階、前のブロックのちょうど中央。
舞台の真正面でもある。
本当は、舞台向かって下手、花道側のブロックが
よかったのだが、取れなかったのである。
お馴染みの定式幕(じょうしきまく)。
柝が入り、幕が開く。
演目を書き出しておこう。
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夜の部
花水橋
竹の間
御殿
床下
対決
刃傷
〈花水橋〉
足利頼兼 梅 玉
絹川谷蔵 又五郎
〈竹の間〉
乳人政岡 玉三郎
沖の井 菊之助
鳶の嘉藤太 吉之助
小槙 児太郎
八汐 歌 六
〈御殿〉
乳人政岡 玉三郎
沖の井 菊之助
小槙 児太郎
栄御前 吉 弥
八汐 歌 六
〈床下〉
仁木弾正 吉右衛門
荒獅子男之助 松 緑
〈対決・刃傷〉
仁木弾正 吉右衛門
渡辺民部 歌 昇
山中鹿之介 種之助
大江鬼貫 由次郎
山名宗全 友右衛門
渡辺外記左衛門 歌 六
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外題(げだい)、タイトルは、「伽羅先代萩」と書いて
めいぼくせんだいはぎ、と、読ませる。
伽羅はキャラだが、お香などに使われる、東南アジア原産の木。
まあ、名木(銘木?)。
先代は仙台のこと。
仙台といえば、昔から萩が名物。
仙台にはご存知「萩の月」というお菓子があるが、
あれもその例。
江戸もまだ前期といってよい1660年、万治、寛文のころから
1703年元禄末期まで40年以上に渡って、仙台伊達藩で
起こったお家騒動、伊達騒動を題材にしている。
この芝居が今の形で上演されるようになったのは
意外に新しく明治になってからという。
ただ、伊達騒動を扱った芝居、浄瑠璃としては、
騒動が収まった元禄のすぐあとの正徳の頃に初演されているものが
あったようで、その後たくさんのバリエーションが作られては
上演されてきた。
そういう意味では、今の形は、様々な脚本のいいとこ取りをして
成り立っているもののようである。
役者は、吉右衛門、玉三郎他、だが、
この二人の人間国宝が座長格ということであろう。
実のところ私は、玉三郎も観るのは初めて。
別段、玉三郎が嫌いなわけではない。
TVで「ふるあめりかに袖はぬらさじ」を
観たことがあるが、その演技の味には唸らされた。
ただこの人が出演る芝居は、やはり踊りのものが多く、
踊りがわからぬ私はどうしても避けてしまうのである。
つづく