浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



雷門・松喜の肉ですき焼き

dancyotei2015-09-22

9月21日(月)夜



さて。



今夜はすき焼き。



内儀(かみ)さんが、すき焼きにしようと、
浅草雷門の[松喜]で肉を買ってきた。


雷門通りにある牛肉店で、浅草界隈では名代。
そこそこよい肉が、割安。安売りの日には列にもなる。


このクラシックな紙の包みがよい。





そして、オリジナルの割り下。






便利だし、うまい。



もう一つ。これも欠かせない。






白滝。
むろん、ここは肉やなので、白滝は作っていないが
[松喜]に置いているものは細いもので、ちょっと珍しい。


これらは[松喜]には売っていないが、
この他に、焼き豆腐とねぎ。




さて。



[松喜]はレストランをやっていたこともあったが、
基本的には肉や、である。
それも牛肉をメインにした。
割り下や白滝も売っているくらいで“すき焼きシフト”
の肉やといってよかろう。


浅草というのは老舗のすき焼きやの多い町である。

[今半]がそれぞれ別の店で、本店、別館、浅草今半の三軒。
それから、雷門通りの[ちんや]。さらに[米久]。
([松喜]も肉やだが、すき焼きシフトの牛肉やである。)
五軒のうち三軒は同系だが、それでも五軒は多かろう。


これだけ老舗のすき焼きやが集まっている街も
東京でも珍しいのではなかろうか。


東京の古くからの盛り場、例えば、人形町、上野、銀座、
新橋、などみても老舗はこんなには集まっていない。


疑問に思って、調べてみていたら、
ちょっとおもしろいものを見つけた。


なにかというと浅草[ちんや]の六代目の旦那
住吉史彦氏が書かれていた、歴史などを含めた、
かなりしっかりしたすき焼きに関するレポート(講演録)を見つけた。
(この方は、1965年生まれで私よりは二つ下で
 まあ、同世代といってよかろう。)


これ、かなり興味深い。


毎度書いているが、食いものの歴史、食いものやの歴史というのは、
ちゃんとしたものは、ほとんどない、と、いってよい。


このレポートは老舗すき焼きやのご店主という立場で
かなり詳細に調べられているようで、信頼度は高そうである。


私も以前にすき焼きの歴史を推論を交えて
考えてみたことがある
が、わからないことも
多かった。


住吉史彦氏のレポートを読むと、推論を裏付けてくれて
いたところもありまた、その疑問に答えてくれてもいた。


最初の私の浅草にはすき焼きやが多い、ということの
答えは得られなかったが、東京の主だった老舗すき焼き店を
挙げられていた。


その中の浅草でないところを拾ってみた。
新橋[今朝」、小伝馬町[伊勢重]、湯島[江知勝]、
神田[いし橋」、銀座[吉澤]。
ほとんど知っているところであったが、よく調べてみると
銀座[吉澤]が昭和二年で、それ以外は、文明開化の頃
まだ牛鍋といっていた時代から続く、押しも押されぬ、大老舗。


しかし、やっぱり皆それぞれ、別の街である。
また、盛り場、当時の花街、などなぜそこか、興味深い。


あるいは、老舗が集まっているのはすき焼きやだけでなく、
例えば、天ぷらや、うなぎやなども浅草には老舗が
集まっている。
ということは、浅草だから、ともいえるかもしれぬ。


この件、またゆっくり考えてみようか。


ということで、すき焼き。





やっぱり大きく切った肉はよい。
また、このくらいの厚みも必要かもしれない。


すき焼きだけでは、と酢の物も。





溶き玉子をくぐらせて、





食べる。



まさに、堪えられぬ。



うなぎの蒲焼とはまた違う、幸せを感じる。


たまには、うまい肉ですき焼き。


皆さんもそんな気分がおありになるように
思われるが、ちょっと大袈裟だが、すき焼きを食うのは
日本人の補給。
そんな気がするではないか。




03-3841-2983
台東区雷門2丁目17−8