浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



銀座散歩とすし栄

dancyotei2009-07-09

7月5日(日)昼


今日は、内儀(かみ)さんと銀座に買い物に出る。


今、バーゲンシーズンであるが、
私がスーツを買おうと思い、出かけることにした、
のである。


いつもはいい加減な格好をして歩き回るが、
銀座でスーツ、といえば、一応長袖のシャツとスラックス、
革靴で、靴下も履かねばなるまい。


昼前、出て、稲荷町から銀座線。
銀座で降りて、五丁目のBB社の路面店


二階が紳士物。
内儀さんには、新入社員のようだ、と、いわれるが、
黒のものを購入。
黒っぽいのも、一着くらいあってもよいだろう。


内儀さんも、スーツを買ったようだ。


さて。


ここから、実は、最初からの予定なのだが、
ちょうどこのはす向かいにある、松坂屋に入っている
鮨や、すし栄へ行ってみようと思っていた。


これは、先日の池波先生の「食べ物日記」から、のものである。


ここは「銀座日記」など、今までのエッセイでも出てこなかった。
豊子夫人同伴で、この松坂屋の、すし栄、へ寄られている記述が
なん回かあった。


私は、この店知らなかったのだが、
ちょっと調べてみると、すし栄は、本店は七丁目、
昭和通りを入ったところ。(どのくらい昔から、
ここにあったのかは、わからないが、旧尾張町である。)


すし栄のホームページ(下にリンク)によれば、
創業は嘉永元年(1848年)、と、いう。


美家古鮨が、文化年間、といわれ、鮨の考案といわれる、
華屋が文政七年開業。


年代的には、美夜古、華屋の順で、すし栄の嘉永
六年がペリー来航の年で、その後、になる。
実際にはこれらは伝承の部分も少なくないと思われ、
定かではなく、ここのホームページに書かれている、
"最古の江戸前寿司処"という形容詞が正しいかどうか
わからぬが、まあ、美夜古同様、店の起源が鮨発祥の頃近くに
さかのぼれる、ということは確かなのではあろう。


松坂屋の店は、きてみると、
地下の食品売り場のイートインコーナーにあった。


カウンターにテーブル席もあるが、むろん広くはない。


先客は、老夫婦が二組。
池波先生ご夫婦ではないが、やはり昔から、夫婦で買い物の
ついでに、鮨をつまんでいく場所、であったのかもしれぬ。


ビールをもらって、内儀さんとともに、
一人前を頼む。





グラスから、箸袋、しょうゆ皿にまで、ここの
オリジナルキャラクターが入っている。
内儀さんなど、かわいい、と、気に入ったようだが、
これは、漫画家の横山隆一氏の作らしい。
横山氏といえば、早稲田大学のキャラクターになっている
フクちゃん。
フクちゃんは戦争中から書かれていたので、
私の世代では、むろんリアルタイムでは知らないのだが、
この早稲田のフクちゃんであれば、知っている。


米粒がモチーフなのかとも思ったが、書かれたのは
おそらく戦前であろう。この店の三代目のご主人の
顔、らしい。赤いのは、舌ではなく、マグロ。


ともあれ。
一人前。





マグロ赤身と、しまあじ
安い一人前を頼んだが、しまあじが入るのは、うれしい。


いか。





写真を撮り忘れた、もう一種(鯵、で、あったか)あり、




穴子、海老、玉子。


それから、鉄火巻
これで一人前。


折角であるから、もう少し、頼んでみる。


鰹と小肌。




鰹は、たたき。
ん?、、小肌は?、、おぼろが入っているか?


確認のため、小肌をもう一つと、上トロ。





やはり、小肌には、おぼろがはさまれている。


ここの、種と酢飯の大きさとバランス。
酢飯は小さめで、種は大き目、で、あろうか。
(バランスとしては種が大き目。)
同じく、江戸にさかのぼる美夜古系などは、
酢飯が大き目というバランスを通しているが、
ここは、時代とともに種が大きくなってきた、のか、、。


ともあれ。
デパートの出店、で、あるが、ちょいとつまむには、
よい店で、あろう。


勘定をして出る。


歩行者天国で、人通りも多い、銀座の中央通り。
ちょいと、鳩居堂をのぞいてみる。
なにかというと、扇子、で、ある。


先日、江戸扇子のことを少し書いたが、
ここの京扇子を見ようと、いうことである。


前にも書いたが、
江戸扇子は、落語用の扇子もそうだが、
先がバチのように広がった独特の形。
これはなにも江戸扇子固有のものではなく、
京都などでも一般にあった形が江戸扇子という名前で
残っているといった方が正しいということがわかってきた。


そこで、そういう形の京扇子がここには置いていないか
と、思ったのである。


結論からいうと、江戸扇子と同じ型のものはなかったが、
ちょっと太めで、安くはないが、ちょっと、よい感じの、
手書きで、すす竹の渋い扇子を求める。
まあ、一本ぐらい、ちゃんとしたものを持っていても
よいか、と。


さて。


ここから、日本橋まで歩いてみようかと考える。
内儀さんも付き合うというので、ともに歩く。


目的は、丸善


京橋を超えて、八重洲をすぎて、丸善


改築をしていたが、きれいになった。
少し本を見て、数冊購入。


一階の紳士ものの鞄、財布などの小物売り場。
ひょっとして、と思ってみてみると、
やっぱりあった、扇子。それもあの形の江戸扇子。


丸善ブランドではなく、近所の老舗、日本橋伊場仙のもの。
(まあ、そうであろう。丸善が独自に扇子など
こしらえていても、粋ではあろうが、、。
そういえば、丸善は今年開業140周年で、オリジナルの
記念万年筆「檸檬」(梶井基次郎にちなんでいる。)
を売っている。まあ、万年筆であれば丸善らしい。)


ここにあったのは、江戸扇子ではあるが柄は、印刷で
3000円程度。青海波に菊五郎格子のものを購入。
(今日だけで二本も買ってしまった。
先日来、高座扇を二本、美大の学生さんのデザインのものを
一本買っている。
扇子マニアになりそうである。)


ここから、さらに、日本橋を渡って、三越までくる。


神田まで歩こうか、と、思ったが、
サンダルの内儀さんが、足が痛い、と、いい出し、
銀座線で帰宅。





すし栄