7月10日(金)夜
金曜日。
例によって栃木からスペーシアで帰ってきた。
少し早いので松屋でなにか買って帰ろうと
考えた。
地下の食品売り場。
惣菜ではなく、魚売り場へきてみる。
鱸(すずき)、千葉産。
切り身も刺身もあって、随分と多く並んでいる。
旬といってよかろう。
塩焼きもうまいが。
だが、ここの魚売り場も、最近はスーパーと
同じようになってしまった。
なにか料理をするというものよりは
刺身でそのまま食べるか、切り身の類ばかり。
どうしようか。
いっそのこと[すし栄]に寄ろうか。
[すし栄]というのは銀座[すし栄]。
この地下のちょっとしたイートインコーナー。
[すし栄]の創業は幕末、ペリーが浦賀にくる5年前の
嘉永元年(1848年)江戸神田という。
現代に続く鮨やとしては最も古い暖簾ということになる。
この松屋の地下の店ももう30年以上という。
本店は銀座で、池波先生もご婦人との買い物の合間に
寄られた銀座高島屋の地下をはじめ、支店もいくつか
あったのだが、これらは今は閉めている。
持ち帰り店として渋谷東急東横のれん街にもあるようだが
カウンターのある店としては今はここだけ。
カウンターに座る。
瓶ビールをもらって、いつも食べている旬のものの一人前、
「旬彩にぎり」というをの頼む。
¥1890也。
左下から、鱧(はも)炙り、きす昆布〆、かんぴょう巻、
真ん中左から、づけまぐろ、かんぱち、鯵、鰯。
上左から、中とろ、鰹、鱸。
また登場の鱸、で、ある。
あまり一般には最近は鮨やで食べられなくなっている
かもしれぬが、江戸前の夏の白身としては定番であった。
冬が近くなると落ち鱸などといって脂がのる。
この時期は独特の香りが微かにあるが、さっぱりとした白身。
今、東京湾には鱸はかなりの量がいるらしい。
アメ横などでも安いものがよく並ぶが、おそらく
東京湾産であろう。
下手なものを買ってしまうと、どろくさくて
とても食べられない。
むろん、これはそんなことはなく、うまい白身。
どれもなかなかうまいのだが、
どうも鰹が今一つ。
先月であったか、新橋の[しみづ]へ
行ったときには、食べられなかった。
この時[しみづ]の親方は、あまりいいものが
安定して入らないといっていた。
「吉池」などの魚やには今は三陸のものが比較的安く
並んでいるし、アメ横などには一本\800などで
売ってはいる。
食べてないのでわからないが、やはり今一つ
なのであろうか。
確か昨年はそうとうな不漁であった。
海水温の上昇、獲りすぎ、いろいろといわれている
ようだが、心配である。
きす昆布〆。
これなどはやはりこの店ならでは、
で、あろう。
[しみづ]には酢〆のものを置いているが
やはり古い江戸前仕事をするこの店ならでは
のものであろう。
追加で、すみいかと、小肌を一つずつ頼む。
食べてから気が付いた。
頼まなければよかった。
特にすみいか。
すみいかというのは、歯応えとあまみ。
そしてほのかな香りが命であるが、そうしてのものが
ほとんどない。
すみいかは、今は産卵期。
8、9月には、子供のすみいかが、しんいかといって
並ぶようになる。
(これは冷凍ものだったかもしれない。)
頼んだ自分を責めるべきであろう。
小肌も夏が産卵期で、もうじき新子が並ぶ。
だがこちらは十分にうまい。
小肌というのは、数年生きて大きくなる。
しんこ、こはだ、なかずみ、このしろ。
にぎりにしてうまいのは10cmくらいまで。
これもそう大きいものではあるまい。
魚やには小肌サイズのものが年中出回っている。
冷凍のものというのは、あまり聞いたことがない。
日本のどこかでは、獲れるのか。
うまかった。
ご馳走様でした。