浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



松屋浅草・銀座すし栄

dancyotei2015-07-12



7月10日(金)夜



金曜日。



例によって栃木からスペーシアで帰ってきた。


少し早いので松屋でなにか買って帰ろうと
考えた。


地下の食品売り場。


惣菜ではなく、魚売り場へきてみる。


鱸(すずき)、千葉産。
切り身も刺身もあって、随分と多く並んでいる。
旬といってよかろう。
塩焼きもうまいが。


だが、ここの魚売り場も、最近はスーパーと
同じようになってしまった。


なにか料理をするというものよりは
刺身でそのまま食べるか、切り身の類ばかり。


どうしようか。


いっそのこと[すし栄]に寄ろうか。


[すし栄]というのは銀座[すし栄]。


この地下のちょっとしたイートインコーナー。


[すし栄]の創業は幕末、ペリーが浦賀にくる5年前の
嘉永元年(1848年)江戸神田という。
現代に続く鮨やとしては最も古い暖簾ということになる。


この松屋の地下の店ももう30年以上という。


本店は銀座で、池波先生もご婦人との買い物の合間に
寄られた銀座高島屋の地下をはじめ、支店もいくつか
あったのだが、これらは今は閉めている。


持ち帰り店として渋谷東急東横のれん街にもあるようだが
カウンターのある店としては今はここだけ。


カウンターに座る。


瓶ビールをもらって、いつも食べている旬のものの一人前、
「旬彩にぎり」というをの頼む。


¥1890也。





左下から、鱧(はも)炙り、きす昆布〆、かんぴょう巻、


真ん中左から、づけまぐろ、かんぱち、鯵、鰯。


上左から、中とろ、鰹、鱸。



また登場の鱸、で、ある。


あまり一般には最近は鮨やで食べられなくなっている
かもしれぬが、江戸前の夏の白身としては定番であった。
冬が近くなると落ち鱸などといって脂がのる。
この時期は独特の香りが微かにあるが、さっぱりとした白身


今、東京湾には鱸はかなりの量がいるらしい。


アメ横などでも安いものがよく並ぶが、おそらく
東京湾産であろう。
下手なものを買ってしまうと、どろくさくて
とても食べられない。


むろん、これはそんなことはなく、うまい白身


どれもなかなかうまいのだが、
どうも鰹が今一つ。


先月であったか、新橋の[しみづ]へ
行ったときには、食べられなかった。
この時[しみづ]の親方は、あまりいいものが
安定して入らないといっていた。


「吉池」などの魚やには今は三陸のものが比較的安く
並んでいるし、アメ横などには一本\800などで
売ってはいる。
食べてないのでわからないが、やはり今一つ
なのであろうか。


確か昨年はそうとうな不漁であった。


海水温の上昇、獲りすぎ、いろいろといわれている
ようだが、心配である。


きす昆布〆。


これなどはやはりこの店ならでは、
で、あろう。


[しみづ]には酢〆のものを置いているが
やはり古い江戸前仕事をするこの店ならでは
のものであろう。


追加で、すみいかと、小肌を一つずつ頼む。





食べてから気が付いた。


頼まなければよかった。


特にすみいか。


すみいかというのは、歯応えとあまみ。
そしてほのかな香りが命であるが、そうしてのものが
ほとんどない。


すみいかは、今は産卵期。
8、9月には、子供のすみいかが、しんいかといって
並ぶようになる。
(これは冷凍ものだったかもしれない。)


頼んだ自分を責めるべきであろう。


小肌も夏が産卵期で、もうじき新子が並ぶ。


だがこちらは十分にうまい。


小肌というのは、数年生きて大きくなる。
しんこ、こはだ、なかずみ、このしろ。


にぎりにしてうまいのは10cmくらいまで。
これもそう大きいものではあるまい。


魚やには小肌サイズのものが年中出回っている。
冷凍のものというのは、あまり聞いたことがない。
日本のどこかでは、獲れるのか。


うまかった。


ご馳走様でした。




すし栄