浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



二長町のこととラーメン天神下大喜

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4018号

1月22日(土)第一食

さて。
今日は、ラーメン。
二長町天神下[大喜]。

今年、最初である。
ここは元浅草の拙亭から自転車でも10分とかからないのだが
どうしても間が空いてしまう。
まわりになにもなく、ついでで行く場所がないのである。

毎度書いているが、ここは台東二丁目で旧二長町。

旧二長町というのは、今までちゃんと書いていなかった。
今日は、これを少しまとめてみよう。

現代の地図

今の地図に旧二長町の境を入れてみた。
東が清洲橋通り、南は三井記念病院凸版印刷の通り。
北は蔵前橋通りの二本北の通り、西はあまり目印になるものが
ないのだが、蔵前橋通りでいえば昭和通りから一つ目の信号の
通り。
私の住む旧町は七軒町であるが、鳥越神社の氏子。
二長町も鳥越神社で共通している、まあ、お仲間。
鳥越神社の氏子範囲では南西の端になる。

江戸の地図

江戸の頃からみてみる。
町屋のない完全な武家屋敷地域といってよいだろう。
対馬守(対馬藩10万石)上屋敷、藤堂佐渡守(勢州久居藩5.3石)
上屋敷の大きな大名屋敷が大部分を占めて、その北が御徒町から続く、
幕府御徒組の組屋敷など。
藤堂家はこの南側に藤堂和泉守上屋敷があって、こちらは
伊勢津藩32万石で藤堂家の本家。宗家も藤堂家もどちらも外様。
近くの秋田佐竹家、平戸松浦家などの上屋敷もあるが、やっぱり
外様。この界隈は外濠(神田川)の外であり、江戸城から遠いが、
川向うの本所・深川よりは近い。外様ではそこそこ大切な藩、
というような位置付けになるのか。
ちなみに、この南の神田和泉町は藤堂和泉守屋敷が由来。

二長町の町名由来は、二丁目、ということが、台東区の町名由来板などに
も書かれているが詳細は触れられていないものが多い。
「江戸明治東京重ね図」のこの二長町の北の境に三味線堀二丁目
という表記があり、このことか。江戸期のこの通りの俗称であったと
思われる。
ただ、宗家、藤堂家屋敷は「上向柳原」と当時の武家案内である、
武鑑には表記されているよう。多少広いがこの地域を指す呼び名
とすればこれが公式であったのであろう。

さて、明治。各武家屋敷はなくなり、二長町となる。
明治36年の地図。

蔵前橋通りはまだない。
今も、凸版印刷の本社ビルがあるが、同社は明治33年(1900年)
この地で創業している。細い通りと雑居ビルの界隈では、
三井記念病院と並んで、ランドマークであろう。

また、明治のこの界隈であれば、芝居町という側面にも
触れなければならない。歌舞伎では二長町時代という名前も
残っている。
この凸版印刷の西隣りあたりに、江戸三座の一つの市村座
あったのである。

ちょっとこの日記を見返すと、既に[大喜]の回に書いていた。

また、二長町の市村座のことはここにも書いていた。

こちらもご参照されたい。
ともかくも、今では芝居町という雰囲気は皆無ではあるが。

蔵前橋通りができるのは、関東大震災後。
蔵前橋と同時といってよいのであろう。
近くの昭和通り清洲橋通りなどと同じように
震災復興事業の一つであった。

ごく簡単ではあるが、二長町はこんなところで、
天神下[大喜]であった。

ここの定番メニューは、とりそばなどの塩系、
そして、しょうゆ系。納豆ももう定番だが、しょうゆ。
そして、にぼし。これもしょうゆ。
これにつけめん。さらに、限定がこれらに加わる。
いつも、くるたびに限定が変わるので、そちらを
食べてしまう。

で、今日は、定番三本柱の一つ、にぼし、に
してみようか。時刻は14時台、昼営業の終わり頃。

特製にぼし。

わんたん、味玉、チャーシュー。

アップ。

平打ちの縮れ、太麺。
しょうゆ、というくくりだが、しょうゆ感はかなり
低い。

鶏であろうか、そぼろも入っている。
メンマも入り、背脂も浮いている。

食べ始めると、なるほど煮干系の味と香り。

ここのチャーシューというのは、いつもこんなであったか。
今、ラーメンやのチャーシューはほぼ、焼豚ではなく、煮豚。
が、これはこんがり、焼いた味がする。
細かい、芸、であろう。

わんたんも、鶏、なのか。

背脂も浮いているのだが、ギトギト感がない。
スープもやはり、主は鶏、なのか。

そう、食べ進めていくうちに、もはや忘れていたが、
これ、煮干であった。

これが不思議なことに、段々に煮干を感じなくなっている。
とてもバランスの取れたスープになってくる。

なんであろうか、これは。
まったく、不思議。

やはり[大喜]ご主人、只者、ではなかろう。

あー、これ、あるね、というものがいつも感じられない。

食べる者の、遥か上をいっている。

こういう人を、天才というと私は思うのである。

ご馳走様でした。

 

 

台東区台東2-4-4
TEL 03-3834-0348

 

 

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