8月9日(火)夜
火曜日、夜。
帰り道、上野の洋食や、とんかつや[ぽん多本家]へ
行くことにした。
とんかつというよりは、例のバタヤキが食べたい、
と思ったのである。
ムニエル、ではなく、バタヤキという名前の料理を出す
洋食やというのはここと、人形町の[小春軒]
くらいではなかろうか。
こんがり焼いた、バターしょうゆ味。
あれがどうにも堪(たま)らない。
しかし、自分で作ってみても、
どうしてもあんな風にはならない。
小麦粉をまぶしてこんがり焼いても、
仕上げにしょうゆを入れると、どうしてもベチャっと
してしまうのである。
他にはないかと老舗をいろいろ探したが
日本橋[たいめいけん]、帝国ホテルのダイナー、
浅草[ヨシカミ]、、どこにも
バタヤキというものはなさそうである。
昔はあったのかもしれぬ。
どこか他にも復活してくれるところはないだろうか。
御徒町で降りて、吉池から松坂屋の裏を抜けて、
[ぽん多本家]。
創業明治38年、
重い木の扉を開けて入る。
夜になっても30℃台の外気から、
キンキンに冷えた店内へ。
一人なので一階のカウンター。
こちらにはお客はなく、静か。
座ってビール。
メニューを見る。
いろいろ考えているうちに、今日は蛤のバタヤキではなく、
ノーマルにカツレツにしようかと、考え始めていたのである。
ビールはキリンラガーの中瓶。
カツレツを単品で頼む。
やはり、ご飯とみそ汁はやめておこう。
ここのお通しは、いつもおもしろいのだが、
今日は山椒の利いた煮穴子。
まるで鮨やか和食やである。
つまみながら、ビールをゆっくり呑む。
カウンターの向こうは調理場。
調理をしているのは、グレーになっている髪を
七三にきっちりと分けた初老の男性。
この方、ちょっと眼光が鋭い。
なぜだかここのカウンターは背が高い。
座ると顔は見えるのだが、手元はまったく見えない。
むろん意図して見えないようにしているのであろう。
きた。
アップ。
いつものように真ん中を横にして、側面を出して
撮ってみた。
おわかりになろうか。
ほんのりピンク。
肉はロース。
揚げ油はやはりラードであろうか。
香りがよい。
低温でじっくり揚げているというが
揚げ色は薄め。
縦に切ってあり、さらに横にも半分に
包丁が入っている。
このところ、ここでは蛤バタヤキばかり食べていたので
カツレツは久しぶり。
まずは、ソースではなく塩でじっくりあじわう。
うまみあふれ、しっとり。
このうまさ、塩で食べてこそである。
低温でゆっくり揚げているので、
気持ち、油切れがわるく感じることもある。
時間がたってしまうとより感じやすい
ということがあるのかもしれない。
二階席よりも、早く運ばれる(?)
一階のカウンターの方がよいのか?。
まあ、どちらにしてもかなり微妙なところを狙って
揚げているのだと思われる。
肉質もおそらく十二分に吟味されたもの
なのであろう。
久しぶりのせいかもしれぬが、
こんなにうまかったのか、と
改めて気付かされた感じである。
途中から、ソースをかけて食べたが、
塩で通しても十分であったかもしれない。
うまかった、うまかった。
大満足である。
熱い焙じ茶が出される。
これもまた、うまい。
奥の帳場で勘定をし、ありがとうございますぅ〜
の声に送られて、出る
2,700円也と、値段も最高レベルであるが
今日のデキであれば、間違いなく、
最高レベルのカツレツといってよろしかろう。
バタヤキもむろんうまいのだが、
とんかつ発祥の頃からの店の歴史は伊達では
ない。
台東区上野3-23-3
03-3831-2351
と、いうことで断腸亭も夏休みに突入です。
残暑厳しき折、皆様もご自愛くだされたい。
Have a nice summer vacation!