浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



羊串肉

dancyotei2012-02-29



2月26日(日)夕



さて。



昨日は猪。
引き続いて、今日は、羊、で、ある。


羊串肉、と、書いて、ヤン・ロウ・チュアン
読むらしい。
むろん、中国語。

読んで字の如く、羊肉の串、焼き。
中国東北部、いわゆる旧満州、いうところの
満州族の料理。


以前、凝ったことがあったのだが、
とあるきっかけがあって、食べたくなった。


串焼きの羊肉、というのは、満州族もそうなのだが、
アジア遊牧民を起源とし、広く食べられている食い物。
満州からモンゴル、ウイグルカザフスタン、トルコ。
元帝国、あるいは、オスマントルコの領国。
そして、南へ下がって、パキスタン、さらにインド、アラブ
でも、食べられている。


あちらへいくと、シシカバブ、ご存知ケバブ、なんという
ものになる。


串に刺して、焼いただけなので、驚くほどの料理ではないのだが、
やはりこれだけ広い地域で食べられているというのは
おもしろい。


味のポイントは、クミン。


日本ではクミンはカレーに入っている調味料の一種
くらいなものだが、これらの地域では胡椒くらいの
ポジションで、モロッコマラケシュへいったら
屋台でクミン塩などといって、塩と合わせたものが
そのへんにおいてあった。


さて。


羊肉。
これを東京で手に入れようとすると、意外に、たいへんなのである。


スーパーに羊は、滅多に売っていない。
あっても、ラムチョップか、ジンギスカン用のスライス。


串に刺すのであるから、スライスではだめだし、
ラムチョップはもったいない。


前にもそうしたのであるが、スライス前の
ものを調達しなければならない。


AM、ハナマサは買いに出る。


おお、そうであった。
今日は、東京マラソン


浅草もコースなので、なんとなく、このあたりの街の雰囲気も
あわただしい。


ヘリコプターなども飛んでいる。


きてみると、売っていない。
ハナマサでも、新御徒町なんという、中途半端な場所
では、売れないのであろう。


大きなハナマサへいこう。
秋葉原


一度戻り、自転車で出かける。


秋葉原は蔵前橋通りの、ガード下にある。


羊肉の塊。あった、あった。


塊、と、いっても、スライスする前の棒状のもの。


日本に入ってきている羊は、多くが、ジンギスカン用の
スライスにするのであろう。


塊肉を直径15cmほどの棒状にまとめ、冷凍し、
これでオーストラリアなどから入ってくるようである。
そして、その棒を凍ったまま、1mm厚程度にスライスする。


その、棒。


1本、量は1kg程度か、2000円ちょい。


帰宅。


この棒を、解凍して、ほぐす、のである。


レンジを併用しつつ、しばらく放置。


ある程度ほぐれてきたのが、夕方。


400〜500gを用意。
串に刺せる大きさに切って、下拵え。


玉ねぎ半個、にんにく2〜3かけらをおろし金でおろす。
塩を適量。


クミンは大匙2くらい入れてみる。
よくもみ込む。


焼く準備。
焼くのは、七輪で、炭。


そうそう。
もう一つ。


今回、このため、というわけでもないのだが、
拙亭にあった七輪は古くなっていたので、
ネットで、新しいものを買って、昨日着いたところであった。
(時節柄、ネットで七輪を買うのは、なにやらヤバイ感じではある。)


丸い従来のものではなく、角型で横長のもの。
焼き物をするだけなので、これを選んだ。


炭を火熾しで熾し、ベランダ。
七輪を、エアコンの室外機の前に置いておくと、
風がちょうどよい具合にかかる。
キンキンに熾きる間、台所へ戻り、肉を串に刺す。


金串もあったので、金串から刺す。





OK。



火の様子も見て、寒いが、着込んでベランダに出る。
(むろん、ドアは閉める。)





少し、火力がまだ弱い。


二つ程、炭をさらにガスで熾して、足す。


だんだん、よい感じになってきた。


この肉は、多少脂もあるのだが、脂の多い秋刀魚や、例えば、
鶏皮のようなものは、モウモウとした煙になるが、
そこまでではなく、ごくたまに、脂が落ちるくらい。


寒いので、ずっと見ているのではなく、
時折焼け具合を覗くくらい。





だいぶよい感じになってきた。


もう一息。





よいかな。


皿に載せて、





部屋の中へ。


羊好きの内儀(かみ)さんも呼んで、ビールを抜く。


おお!。


これは、これは。


うまいぞ。


下味を付け、30分以上は、置いておいた。
この下味がしっかりついていたのが、成功のもとのようである。


北海道出身の羊に食べ慣れた内儀さんによれば、
羊はよく焼いた方がよい、などというが、
ちょっと、レアくらいでも、うまい。
(が、味は、内儀さんも褒めている。)


とまらないうまさ、で、ある。


焼けるそばから、どんどん、ばくばくと、食べる。




うまかった〜。
4〜500gほど、二人で、瞬く間に食べてしまった。


羊串肉。


遊牧民の味。



堪能、で、ある。




(しかし、昨日から、肉、肉、であった。)