浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



断腸亭スペインへ行く その12

引き続き、スペイン、バルセロナ

ガウディのグエル公園から、旧市街の
ブカーリア市場へきている。

観光客でごった返している。
ものによってはその場で食べられるようにカップに入れたり、
フォークを付けたりして売っている。カウンターを設け、
ワイン、シャンパンなども出しているところもある。

フルーツ店から鮮魚店を見てきた。
海老、かに、貝類も種類豊富。

市場に魚介類が多いと、魚好きとしてはなんだかうれしい。
それもちゃんと細かく種類を分けて売られている。

ここから魚。

中央、わかりやすい、舌平目。
いや?、よく見ると右に目があるので、鰈か。
値札に、LLENGUADO、カタルーニャ語のようだが、発音が
よくわからぬ。LENGUADO、レングアド、スペイン語
ちょっと調べてわかったのだが、舌平目といっているもの
には左目と右目と両方いるよう。

この店、札のすべてに、名前がカタルーニャ語スペイン語
几帳面に併記されている。敬意を表して両方写しておく。
(以下、カタルーニャ語は(カ)、スペイン語は(ス)。)

その右、長いもの。たら、かと思ったらこれ、値札を読むと
MERLUZA、メルルーサ(ス)とLUBINA、ルビナ(カ)。

メルルーサは日本でももうお馴染みの白身で、フィレオ
フィッシュなどに使われたりもしている。似ているはず、
こやつ、たらの仲間であった。
日本近海にはおらず、南半球、南米などと書かれているものを
見た記憶があったが、よくよく調べると、欧州大西洋にも
いるよう。生なのでスペイン周辺で獲れたものであろう。

舌平目の左、ちょっと小型のもの。これはメルルーサの子供。
これもフライにするよう。よほどのメルルーサ好き。

そして、その左。
このように切られるとなんだかわからぬ。
皆様、予想できようか?。日本人にも大いに馴染のある魚。
値札の名前、CUA DE RAP、クアドラップ(カ)、COLA DE RAPE、
コラデラペ(ス)を訳すとなんとこれ、あんこう
後にもまた出てくるが、これは尻尾側。

その奥、これもメルルーサであろうか、むいたもの。

その左。
これは、SARDINA、サルディナ(カ、スとも)、いわし。
日本のものと見た目がちょっと違うが、真いわし?。
が、やはり違うよう。大西洋、地中海、黒海には
真いわしはおらず、和名にしいわし、といって、近似種。

舌平目の奥の赤い切り身。
これは、まぐろ。TONYINA、トニーナ(カ)、ATUN、アトゥーン(ス)。

やはり魚も種類豊富。

次は、この左。

右の平目。
あー、これこれ。
日本の平目よりもちょっと色が薄く、真四角。
平目は平目でも、これ、TURBOT、ターボット。
TURBOTはフランス語で発音はティンボ、英語でもTURBOT。
日本近海にはいないが和名いしびらめ。ヨーロッパ、特に
フレンチで定番。一度だけ随分前だが、日比谷の
[アピシウス]で食べた記憶がある。ムニエルでうまい。
(最近、韓国、中国で盛んに養殖され、日本にも活けで
入ってきているらしい。私は見たことはないが。)

その左、黒っぽいの。
これだけ値札が付いていないので、わからないのだが、
見た目からこれ、かつお、ではなかろうか。
かつおは地中海にはいないようで、大西洋スペイン北岸、
バスク地方などで獲れるよう。

さらにその左。
やはり、黒っぽいの。見たことがない。値札には、ORADA、
オラダ(カ)、DORADA、ドラダ(ス)。
調べると和名ヨーロッパヘダイ、というよう。地中海から
黒海などにもいて、こちらではとてもポピュラーな魚のよう。

かつお(?)の奥、これが、かたくちいわし。
seito、セイトー(カ)、boqueron、ボケロン(ス)、いわゆる
anchovy、アンチョビ。(ちなみに、アンチョビは英語。)

おもしろいので、丹念に調べてしまう。

またあった。

これはあんこうの頭。CAP DE RAP、カプデラップ(カ)。
CABEZA DE RAPE、カベザデラペ(ス)。先に尾っぽがあったが、
RAP、RAPEがあんこう。CAP、CABEZAが頭。

これだけ明確に頭と尻尾を分けて売っているのが、おもしろい。
明らかに別の料理になる、のであろう。

次。

右が、鮭、サーモン。もちろん、大西洋鮭、アトランティック
サーモンであろう。表記はSALMO、サルモ(ス)。

中が、CORBALL、コルバル?(カ)/CORVINA、コルビーナ(ス)。
私は見たこともないと思うが、日本近海にいる、にべ、という
魚の類のよう。

そして、左、たこ。ちょっと色がピンクっぽい。これで生
なのであろう。
POP、ポプ(カ)、PULPO、プルポ(ス)。GALLEGOと書かれて
いるが、これはスペイン最北西ガリシア地方のことのよう。
有名産地なのであろう。(確かに、ガリシア地方はたこ料理が
名物のよう。)
種としては、和名地中海まだこ、か。日本のまだこの兄弟。

奥に、はらわたや、頭のみ、きれいに身を切った後の中骨など、
あらも売られている。これもさすが。ちゃんと魚を食べている
人々である。

気が付くが、ここにはバルセロナ近海だけではなく、
スペイン国内各所から魚介類が、運ばれてもいるよう。

別の店だが、またいた、RAP、あんこう

これは丸のまま。

さてさて。
この店がまったく几帳面なのだろうと思うが、それぞれ
ちゃんと名前があり、その魚に合った料理があることを
物語っている。やはり、カタルーニャ人、スペイン人は
ちゃんと魚を獲って、ちゃんと食べている。

これは、同じように魚を長く食べてきた民族として
なんだかうれしいではないか。

英語では、伊勢海老もざりがにも一緒くた。
逆にイギリスには豚の血のソーセージというのがある。
彼らは、豚の血までちゃんと料理して食べる。
これが食文化というものなのであろう。

 

つづく

 

 

 

※お願い
メッセージ、コメントはFacebook へ節度を持ってお願いいたします。
匿名でのメール、ダイレクトメッセージはお断りいたします。
また、プロフィール非公開の場合、バックグラウンドなど簡単な自己紹助を
お願いいたしております。なき場合のコメントはできません。