さてさて。
両国、あひ鴨一品[鳥安]の前に長々と両国広小路のことを
書いてきてしまった。
今、神田川北の柳橋と、南側の両国広小路との関わりを
いう人も、あまりない。
しかし、江戸から、明治へのこの地の変遷というのは
是非とも明らかにしておきたい大切な問題であろうと
思うのである。
江戸一、東京一の芸者町であったにしては、あまりにも
冷たすぎるであろう。
両国広小路というのは、中央区、いわゆる柳橋は台東区、
両国という地名は今墨田区。つまり3地区にまたがっており
また、各区とも端っこ。各区の歴史担当も、手薄、なのでは
なかろうか。
さて。
17時ほぼぴったり[鳥安]に着く。
今日は、この前、浅草のちどりやで買った、
着物できてみた。
青竹色といった感じの、お召風(?)紬のつい。
入って名前をいうと、三階とのこと。
エレベーターであがる。
今までは、二階の掘りごたつ座敷、で、あった。
三階はテーブル席。
テーブル席、ではあるが、格子戸のある個室。
以前の座敷であった頃のものであろうか、
古い欄間が隣の部屋との間の天井下にしつらえてある。
ここに後ろからライトがあてられ、入口上部に
影を写し出している。この内装がいつ新築されたのかわからぬが、
和モダンというのであろうか、なかなかなよい雰囲気。
掛けて、ビールをもらう。
ここは、座るだけ。
名前の通り、あひ鴨一品なので注文の必要はない。
相鴨すきやきコース一人前10,000円也。
コースターの絵柄がよい。
鳥の顔と、安、であろう。
なんだかかわいい。
箸。
小さいが、留めている紙、和紙のよう、も
コースターと同じ絵柄。芸が細かいではないか。
前菜。
右上から、鴨ロースト、右下ごぼう、左下がなんだかわからなかったが
入っているのは黒豆か。左上が海苔なのだが、佃煮ではなく
酢の物。
吸い物。
これも10cmくらいのかわいいい土鍋。
オリジナルであろうか、よいセンス、で、ある。
よい出汁が出ている。
三つ葉となめこ、小さなささみのつくね。
鴨を焼く炭火の焜炉(こんろ)がきた。
ささみのごまソースかけ。
銀杏とえりんぎ、ししとう、かぼちゃ。
おろしがきた。
まんまるの半球状に固められて美しい。
まわりはしょうゆ。
確か、うなぎの麻布[野田岩]も箸休めに
おろしを出すが、同じ盛り付けだったのではなかろうか。
材料もきた。
鴨。
野菜。
ここも、お姐さんがすべて焼いてくれる。
鴨肉というのは、焼き方がすべて、で、ある。
むろん焼きすぎると、堅くなって縮んで、台無し。
かなりデリケートな仕事のはずである。
焼き上がった。まずは胸肉から。
おろしとしょうゆだけで食べる。
これがこの店流。
これがうまい、の、で、ある。
これぞ江戸前。
鍋はこんな感じ。
団子と砂肝。
お姐さんは生の鴨挽肉をよい形に箸だけで団子に作り、
さらによい塩梅に焼いている。
団子にするのも芸術的な手際であるし、厚みのあるものを
焦がさずちゃんと火を通すのは、やはりそうとうに
訓練されていると思われる。
(この方、意外に(?)、お若いのである。)
また、この団子がうまい。
かすかに、なにか味が付いている。
なんであろうか。
お姐さんに確かめてみると、うちはほとんど
味は付けていないのですが、、、
ほんの少し、味醂、と。
ほう。
つづく