浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



断腸亭の夏休み・沖縄石垣島その10

dancyotei2013-08-29



さて。

断腸亭の夏休み、石垣島、最終回。

ホテルからタクシーで新石垣空港まできて、
空港ロビーで八重山そばを食べる。



島の胡椒、ビバーツと島唐辛子

ビバーツはホテルの食事でも出ていた。
ちょっと香りが違うが、ほぼ、胡椒。

この瓶詰の島唐辛子は、においをかぐと強いアルコールの
香りがしたので、おそらく泡盛漬け。

上にのっているのはしょうゆ味の牛肉と蒲鉾細切り。
沖縄のソーキそばは、文字通り、ソーキ(豚あばら肉)の煮込みが
のるが、八重山そばはこういうことになっているよう。

また麺がソーキそばは平打ちなのに対して、
八重山そばは丸い、という違いがあるとのこと。

が、つゆは豚と鰹のブレンドというのはどちらも同じだという。

どちらにしても、スープは澄んでいてさっぱり系と
いってよいのだろう。

また、麺も茹で置きに油をまぶす、どちらかといえば、
ぼそぼそとした食感で、うどんのような感じ。

例えば、沖縄本島などでは、同じ沖縄そばでも伝統的な茹で置き
油まぶしではないものも出てきているようではある。

さてさて。

そんなことで、今回の石垣島、終了。

まとめのようなものを書いてみたい。

石垣島のダイビングについては、散々書いたように、とにかく
マンタに尽きる。

これだけの高確率で出合えるポイントは、世界でも例を知らない。
マンタポイントとしては世界一であると、いってもよいだろう。

ただ、複雑なのは石垣でいえば、サンゴのこと。

実際のところ惨憺(さんたん)たるもの。

ただ、一方で、こんなこともある。
数年前になん年かぶりで、モルディブへ行った時のことだが、
モルディブもなん年か前にサンゴがドッと減った時期があったという。
インド洋津波や海水温の上昇などいろいろな要因があったのだろうが、
現地では、昔からこういうことは繰り替えしているので、
そんなに心配はしていない、という声も聞いた。

海水温の上昇というのは、地球温暖化が原因だとすれば
確実に人類の手によってなされたことなのであろう。
サンゴ礁を減らすだけではなく、様々な環境変化を呼び起こし、
最終的には人類自身の首をしめることは明白である。
前にも書いたが、日本人も含めアジア人は欧米人に比べ、
このあたりのことに鈍感であることを実感している。

繰り返しになるが、自然に楽しませてもらっている一(いち)ダイバー
として、世界に冠たるサンゴ礁を持っている(た)国民として、
減ったものの復帰と、保護、保全に国を挙げて注力すべきであると
考える。

さて。

もう一つ、石垣島は、風物、食い物、人、含めて
癒し満載であるということ。

TVなどメディアでも多く紹介されているが、きてみると
やはり、その通りであったということ。

が、一方で、石垣島は市街地もあり、新空港もできたし、
まったく辺鄙な離島ではない。
各種インフラは整っているといってよかろう。

だが、癒し満載。

これでは別荘を持ちたくなるのも、うなづける。
なんにも考えないで、ぼーっとするには、国内でもっとも
よいところ、なのではなかろうか。

最後に。

もう一つだけ。

やはり、今回、石垣島や、八重山にとどまらず、沖縄県という
ところについて考えざるを得なかったのである。

ここは日本国ではあるが、文化という視点では、やはり、
倭(ヤマト)ではない、ということ。

今回、実は、この日記中、沖縄にたいして、ヤマトを
内地、あるいは、本土といいう言葉を、できるだけ使わないように
してきたのである。
内地、本土には、ある種の差別的ニュアンスを感じたからである。

むろん、明治以前は、薩摩と清国に同時に支配されるという
関係にはあったが、形式的には琉球王国という立派な王のいる、
独立国であったわけである。

ヤマトの影響は文化的にも多大に受けており、言葉の面でも
共通する部分は多いとは思うが、やはり、文化体系としては
ヤマトとは違う民族(=民族自決という意味では国と同義になるが)
といってよろしかろう。

民俗学文化人類学を学んだ者とすれば、出自の違う文化を持っている
人々として、等しく尊重してしかるべきと考える。

また、政治的にも過去から現代に渡って、沖縄と日本とは大きな
課題を抱えたままである。

太平洋戦争で国内唯一の地上戦が行われ、多くの市民が命を落とし、
終戦後は連合国による占領、復帰後も米軍基地が広大な敷地を占めて
今に至るまで住民に多大な不安と実害を及ぼしていることは
周知のことである。

以上のようなことをふまえて、沖縄県のことを考えると、
わかりやすいのは、ヤマト=日本政府として米軍基地は必要最小限だけ残し、
沖縄県からヤマトのどこかへ移転し、沖縄県には日本国として援助保護はするが、
他の都道府県とは違った大幅な自治を認める、というようなことになろう。

ただ、実際にはそう簡単なことではないこともよくわかっている。
じゃあ、どこで米軍基地を受け入れるのかということが
すぐに問題になる。

また、今回改めて思い知らされたが、地図を見れば、
例の尖閣諸島は、石垣島から目と鼻の先。沖縄本島よりも近い。

那覇空港には航空自衛隊も同居し、南西諸島への
領空侵犯などに対してのスクランブルの拠点として
重要度は増している。

のんびり癒し満載の島、マンタの世界的なポイント、
(むろん、環境保護に注力すべき地域であるが)
だけではない、沖縄県、あるいは、八重山石垣島

現に紛争のある国境の島であり、独自の文化と歴史
(つまりアイデンティティー)を持ってきた人々の島々で
(その上、ヤマトは多大な迷惑をかけてきたところで)あることを
日本国民全員が、少なくとも認識、理解し同じ立場に立つことから
始めてはどうであろうか。おそらくヤマトの人々は本当には
理解できていないと思われるから。

今回、石垣島へいってそんなことも考えた次第である。