4783号
5月31日(土)夜
さて。
天ぷら、で、ある。
四季に渡って、天ぷらというのは、うまいもの
であるが、暑くなってくるとまた、よい。
食べたくなるもの、で、ある。
天ぷらというと、私には、三筋の[みやこし]。
ご近所。旧町で言っても三筋は隣町である。
もう20年以上通っていると思われる。
天ぷらというのは、日本料理、和食の定番であり、
一大ジャンルであるが、江戸で発祥し、発展した
東京の郷土料理といってよろしかろう。
にぎり鮨同様、江戸前、江戸の前の海で獲れた
魚を揚げる、ものとして始まり、また、鮨同様に
当初は屋台で食べさせる庶民のものでもあった。
それが、様々な形を経て、今のものになってきた
というわけである。
にぎり鮨というのは、冷蔵設備がない頃からあり
その後、流通も含めて進歩し、鮮度のいいものが
使えるようになり、大きく変わった。
世界にも広がり、今も、発祥地である東京の鮨は
変わっている。
まあ、変わるものも変わらぬものもあってよいのだが、
にぎり鮨に対して、天ぷらというのはある程度、
本質的には料理として完成しているのではないかと
思っている。
東京の天ぷらやでも、新しい試みがなされてもいるが、
あまりこれは、というものはないように思う。
定番の海老や穴子をいかに上手く、芸術的に揚げるのか
という個々の職人技の向上はむろんあるのであろうが。
ただ、心配なのはにぎり鮨も同様だが、種である
定番の魚介類が獲れなくなっているということ。
穴子は最早東京湾では流通するほど獲れておらず、
ほぼ対馬近海のもの。あんなに東京湾で獲れていた
きすも東京の魚やで見なくなった。
書いたように前の海で獲れたものを使うのが東京の
天ぷらであり、先日のイタリア同様に、地産地消という
のか、周辺の環境と不可分な食文化である。
揚げる技術も大切であるが、皆、この現状に本気で目を
向けるべきと考える。持続可能な食文化になっていない
ことに。和食をユネスコ無形文化遺産にすることに
旗を振ってきた農水省は、むろん近海の水産物の漁獲
も管轄している。この事態にもっと危機感を持ち真剣に
取り組むべきではなかろうか。材料がなければ料理は
作れない。世界のどこかから買ってくればよいというもの
ではないはずである。
ともあれ。[みやこし]で、あった。
拙亭からぶらぶら歩いて、10分もかからない。
6時。
ご主人と女将さんのご挨拶をして、奥のカウンターに掛ける。
瓶ビール、サッポロラガー、をもらう。
お通しはいか下足。
酢味噌和え。
いつも通り、特の定食、9,000円也。
海老、二匹。
もちろん、東京ではさいまき海老などともいわれる
小型の車海老。
江戸前天ぷらでは超定番であり、一番バッター、
かつ、王者であろう。
これなくしては、江戸前天ぷらは語れない。
薄衣で軽く、かつ、衣はしっかりと揚げられている。
最初は塩で、二匹目は天つゆで。
今、車海老は養殖が盛んにされているので、資源としては
心配はないのであろう。
海老の頭。
これは塩で。とても軽く、サクサクで、うまい。
いか。
一般的に東京の鮨やや、天ぷらやでは、基本すみいか
を使うのだが、産卵期が近いこの時期は、大きく堅くなる
ので、他のいかに換える。
今日は、あおりいか。
厚いが、柔らかでうまい。すみいかとの違いは、サクッと
した歯切れがないことか。
きす。
やはり、獲れる量が減っても江戸前天ぷらにはなくては
ならない種、で、ある。白身だが、独特の歯ざわりと
香りである。[美家古寿司]など古い江戸前鮨では
〆て握っていたが、最近は見なくなっている。
親方が、小鮎、食べますかと、聞いてくれた。
今は、琵琶湖産。多摩川でも獲れていたはずなので、
東京でも食べていた?わからぬが。やはり、この季節のもの。
レモンと塩で。ちょっとほろ苦いが、うまいもんである。
穴子。
これから夏にかけて、うまくなる。
サクサクの揚げあがり。
塩でもいけるくらい、うまいもんである。
野菜天。
椎茸、蓮根、小玉ねぎ。
そして、追加でアスパラ。
これらも、今日はすべて塩でいってしまった。
天ぷらは蒸し料理だと、よくいうが、
野菜だと、これはよくわかる。
小玉ねぎが一番好きだが、全体にほどよくかつ、
しっかりと、つまり過不足なく火が通り、
玉ねぎのよいあまみが引き出され、また、
サク、プリっとした食感もよろしい。
最後は、小天丼。
味噌汁は、蜆。お新香。
かき揚げは小柱。
これも、江戸前の看板であろう。
うまかった、うまかった。
いつもご馳走様です。
台東区三筋2-5-10 宮腰ビル1F
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