浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



三筋・天ぷら・みやこし

dancyotei2015-09-15

9月13日(日)夜

日曜日。

午後、例によって魚を見にアメ横の魚やへ行く。

台風の影響で時化であろうか、目ぼしいものがまったくない。
吉池にまわるが、やはりイマイチ。
台風の影響が少ないからなのか、八角なんというのが
たくさんあったり、北海道からなのか。

と、いうことで、夕飯は天ぷら。
天ぷらといえば、ご近所三筋の[みやこし]で、ある。

なぜ、魚やにろくなものがないと、天ぷらなのかは
自分でもよくわからない。
とにかく、天ぷら、で、ある。

夕方、予約を入れて19時にする。

10分前に内儀(かみ)さんと家を出て、雪駄履きで
出掛ける。

白い麻の暖簾をわけて、格子を入る。

入るとカウンターはほぼ満席。
奥の座敷も入っているようである。

開けておいていただいた、カウンターに座る。

ビールをもらって、梅の定食を頼む。(5000円也)

お通し。


これは茹でたいか下足、ぽん酢しょうゆ。

すみいかであろう。
それもこの時期であるから
新いかといってよい、まだ子供であろう。
柔らかい。

乙なもんである。

天ぷら。

海老から。
小型の車海老、江戸前でいう、さいまき海老。


最初は、塩で。

もう一本。


これは天つゆ。

至福の海老、である。
ほっかほか。
表面はしっかりした衣で、中の海老はプリッとした食感でありながら、
みずみずしい。

海老の頭のから揚げ。
これは塩。カリカリでうまい。

次は、いか。


これがすみいか。
これも塩。

すみいかのあまみに加えて、
新いかの柔らかさは、格別である。

鮨やでも新いかは食べたいが、天ぷらでも“二重丸”、で、ある。

これも江戸前天ぷらの醍醐味といってよろしかろう。
もう一つもらいたいくらい。

あとで、隣に座っていた親爺さんが、芝海老を使うセットのかき揚げは
オミヤにしてもらい、別に、ここで食べる分に、いかでかき揚げを頼んでいた。
新いかのかき揚げ、、、。まさに、ご通家(つうか)。

きす。


これも定番。
やはり、しっかりした衣。

はぜ。


親方は、松島です、といって出す。

松島は、宮城の松島。

むろん江戸前天ぷらでは、江戸前東京湾で獲れたもの。
今でも湾岸や本所、深川あたりの堀でも釣れるようだが、
さすがに流通はしていないのであろう。

穴子


格別。

いかもよかったが、今日の魚介の中では一番かもしれぬ。
うまみが濃厚。

脂がのっているのかもしれぬ。
煮るとわかるのだが、穴子も脂がのっている、
のっていないというのがちゃんとある。

魚介終了で野菜。

銀杏(ぎんなん)。


天然のものであろう。
ハウス栽培の、銀杏(いちょう)など、聞いたことがない。
(いや、不可能であろう。)

もうあるのか。

なす、アスパラ、蓮根。

最後は、天丼。


芝海老かき揚げ。

しじみの赤出汁に、香の物。

天丼もまた、江戸前天ぷらでは欠くことができぬもの。
天つゆに浸して食べる江戸前天ぷらとは違い、
濃い甘辛のたれをくぐらせているものである。

天つゆというのがいつ頃からあるのであろうか。
わからぬが、天丼はおそらく明治に入ってから。
この前の考察から、天丼が天つゆではなく、濃い味になっているのは、
うな丼の影響ではないか、と思っているのだが、、。

ともあれ。

腹一杯。

ご馳走様でした。

今日もおいしかったです。

 

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