浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



水害のこと。

dancyotei2015-09-14

台風の大雨。


鬼怒川の決壊。


土曜日の地震



落ち着かぬ日々が続いている。


2011年の大震災もそうだが、天災というのは避けがたいもの。


治水などの防災対策を政府をはじめ、行政が行っているのだが
「想定外」のことが起こり、大きな被害になっている。


歴史をさかのぼれば、大きな河川の周辺では大水が
常に想定されていたのだと思われる。
東京の江戸川、中川などに囲まれた葛飾などの農家では
屋根裏に舟を用意し、浸水をしても手が打てるように
していた。


あるいは、愛知県などの木曽川揖斐川長良川
大河川三つが流れる地域には、輪中(わじゅう)といって
丸く石垣を築き、周辺より一段高いところに集落を作っていた。
皆様も地理で習ったご記憶があるのではなかろうか。


むろん、これらとて想定外のものには耐えられなかったことも
あるとは思うのだが、住民自身が自助努力として、様々なことを
して備えていたのである。


ともすると現代人は防災ということを、行政に任せきりに
なっていはしないか、と、危惧をするのである。


まさかの時には自分や家族の身は自分たちで守る、
という心構えはやはり必要なのではないかと思うのである。


自治体はハザードマップというのを公表している。
浸水するとすれば最悪どのあたりまで水がくるのか、などである。
その時のためにどんな用意をしたらよいのか、起こったら
どこへ逃げるのか、タイミングはいつなのか、といったこと。


自分の住んでいる地域をよく知るということ。
そこには歴史も含まれよう。
100年、200年。江戸時代あたりまでさかのぼり、
どんな災害が起きていたのか。
知っている必要があると思われる。


縁もゆかりもなかった新興住宅地に移り住み、
無関係、無関心で、いざという時に命を失ってからでは
取り返しがつかなかろう。


先日のNHKスペシャル「メガデザスター」で、タイムリーというのか
東京23区東部、荒川があふれた場合というのをやっていた。


江東、墨田、江戸川、葛飾など沿岸の区はすべて浸水。
逃げ場としては、区外に出るしかないという。
我々の子供の頃には、例えば江東区などは、海面より低い、
ゼロメートル地帯の代表のようにいわれていた。


近年は堤防が整備されるなど治水対策が進み、
あまりこういうことはいわれなくなっているのでは
なかろうか。


過去、江戸時代を含めて、隅田川両岸が大水になるのは多くが、
高潮に台風などの大雨が重なった時であることはわかっている。
(東京直下地震、例えば、幕末の安政江戸地震などでは、津波
被害はなかった模様で、東京の津波の心配は一先ずないものと
考えていいと私は思っている。)


高潮+台風(などの豪雨)をなめてはいけない。
先年の、フィリピンの津波のような10m近い大波による被害は
高潮+台風である。


TVでは荒川のことを取り上げていたが、
隅田川とて状況は同じで、私の住む台東区の元浅草付近も江戸以前は
沼地で、今でも海抜は1〜2mしかない。


隅田川の水位が上がり、なにかの想定の一つが狂えば、
高潮による浸水のリスクは決して低くないと考えるべきであろう。


大正時代まで、今の道具街、合羽橋通りは、江戸以来、新堀という
堀であった。明治43年これがあふれ、界隈は浸水している。
草本願寺の門前が水浸しになっている写真も残っている。








皆様も、ご自分の住まわれている、あるいは働いているところの
ハザードマップくらはいは一度見ておかれることをお勧めする。


最悪の場合、どんなことが起きるリスクがあるのか。
普段平穏な暮らしをしていると、まさか、そんなことは、と、
人間は思いがちである。


今回も「ここで生まれ育って50年以上になるが、こんなことは
初めて」というインタビューを聞く。


自分の経験などたかが知れている。
過去の歴史と、最新の情報、両方を心して見ておきたい。




さて、一方、もう一つ。


今回の台風の雨で、東京には目立った被害がなかったのには
少なからず、驚いた。


さんざんニュースに出ていたが、鬼怒川から真っ直ぐ南に
豪雨地域が続いており、その延長は東京都区部にかかっていた。


実際に水曜日にはかなりの強い雨が長時間降り、港区他、
いくつかの区で、避難指示(?)が出されていたようである。


しかし、目立った被害が報告されていないようである。
鬼怒川の有様に隠れて、報道されていないだけなのか。
実際、どうだったのであろうか。


少し前であれば、東京都区部では、神田川が落合などで
よくあふれて、それこそ風物詩のようになっていた。


あれはどうなったのであろうか。


最近神田川は水道橋その他複数のところで、地下に、
水を逃がす分水路が設けられている。
こういうことが結果を出してきているのか。


これらも、やはり鬼怒川の被害に隠れて報道されていないが、
どうだったのであろうか。


気になる。


もし、対策が成功しているようであれば、なによりのことである。


だが、このようなインフラを過信することなく、
今、自分たちが住んでいる地域の過去の歴史と、現状をよく知り、
想定される最悪のことを頭に置いて、もしもの場合
どうすればよいのか。
考えておくことが必要であろう。