10月15日(水)夜
水曜日。
市谷のオフィスから帰宅。
今日はなにを食べようか。
だいぶ肌寒くなってきた。
またまた、ではあるが、鴨せいろが、思い浮かんだ。
やはりかためて食べるのが、性癖のようである。
私には、先日食べそこねた、池之端の[藪蕎麦]が
ナンバーワンである。
しかし、残念ながらあそこは水曜休み。
会社の近所、牛込神楽坂あたりの蕎麦や、
とも思ったが、今日は自作を思い立った。
近所のハナマサにはいつも冷凍の鴨肉はある。
大江戸線新御徒町を降りて、ハナマサへ。
合鴨のもも肉と、胸肉が両方あるが、胸肉にしてみようか。
道々考えてきたのだが、鴨の汁、つまり“鴨ぬき”で酒を呑んで
ざる蕎麦にしようか、と。
店で鴨の汁、鴨ぬきというと、鴨せいろの文字通りつゆ、なので、
焼いた鴨肉、鴨肉のつくね、焼きねぎあたりが入る。
これでざる蕎麦を食うにはちょうどよい。
いや、これ以上入ると、前にも書いたが、
ざるそばのつゆとすれば、野暮ったい。
だが、これをだけで酒の肴にするにはもう少し
具がほしい。
三つ葉も入れよう。
それから、家の冷蔵庫に油揚げがあるので、
あれも切って入れようか。
お!。
そうだ、そうだ。乾麺の蕎麦でもよいかと思っていたが、
ここには生蕎麦も売っているのでそれも。
帰宅。
合鴨胸肉。
レンジで軽く解凍。
出刃包丁で切れる程度であればよいであろう。
脂身がいいではないか。
むろん使うのは一部分。
1/5ほど、出刃包丁で切る。
焼いて入れる肉と、出汁(だし)を出すために、
つくねも作ろう。
切り分けて、脂身も多いので、これは先に細かく切って、
水を張った鍋に入れ、先に煮出し始める。
赤身の肉と脂身を叩いて小さな団子にし、
これも鍋に入れて、弱火。
団子は小さいので入れると散るものもあるのだが
意図は出汁なので、かまうまい。
同時進行で、長ねぎと脂身のついた大きめの肉を
ガスのグリルで焼く。
鴨肉は焦げ目をつけながら、中は半生を目指す。
鴨肉というのは、絶対に火を通しすぎてはいけない。
硬く、小さくなってしまう。
それで、焼け具合は頻繁にみる。
汁の方。
ここには、いつもの桃屋のつゆ。
味をみながら、気持ちしょうゆを足す。
だが、先に鴨ぬきとして飲むことを考えて、
飲めるくらいの少し薄めを意識する。
つゆには、長さ5cm半割りにした煮込み用のねぎも。
油揚げ。一枚を細い短冊に切り、入れ、煮込んでおく。
グリルの方、鴨も焼けてきた。
脂身に焦げ目がついてきた。
OK。
出して、切る。
中の方はよい感じにピンク色。
三つ葉も洗って切る。
小さ目の丼に、焼いた鴨肉を切ったもの、焼きねぎ、
薬味としてきざんだねぎ、三つ葉を入れ、
ここにつくね、油揚げを煮込んだつゆを足す。
鴨ぬきの出来上がり。
鴨ぬきで呑むといえば、菊正宗のぬる燗、と思っていたのだが、
買い出しをして、作っているうちに薄汗がにじむくらい。
やはりビールにしよう。
焼いた鴨肉は、ちょうどよい。
また、つくねは成功。
鴨のよい味が出ている。
問題は、ねぎ。
煮込んだ方はまだしも、焼いた方がいけない。
ねぎというのは、以前はあまり気にしていなかったのだが、
鮮度、というものが大切であことに最近気が付いた。
薬味として生で食べる場合や、こうして
焼いたりする場合、古いものはちょっといけない。
どろくさみのようなものが出てきてしまうのである。
油揚げやら三つ葉やら、具だくさんなので、
酒の肴としては、やはり、このくらいでちょうどよい。
焼いた鴨肉もまだあったので、具だけお替り。
ビール中瓶から、菊正宗の冷(ひや)を一合。
呑み終わり、蕎麦も茹でる。
つゆはほんの少し濃くし、三つ葉だけ足したもの。
焼きねぎの減点はあったが、十二分に満足。
うまかった。