4674号
11月5日(火)第一食
さて、連休も開けて火曜日。
[まぐろ人]で鮨でもつまもうかと出た。
雲はあるが日は出ている。
最高気温は19.6℃(11時14分)
秋らしい、という気候か。
元浅草の拙亭から雷門まではどういってもよいのだが、
もっとも距離が短いのは、真っ直ぐ東へ行って、
江戸通りを北上するルート。
江戸通りに出て左、バンダイ本社の前を通り、
信号を渡ると駒形[どぜう]。
あー、ここ、しばらくきていない。
(一年以上であった。)
どぜう鍋。
江戸の鍋の季節は本来は夏、なのだが、まあ、今は
寒くなり始めた、今頃でもよろしかろう。
ちなみに“どぜう”は泥鰌(どじょう)と読む。
旧仮名遣いかと思うと、そうでもない。旧仮名だと、
どぢやう、または、どじやう、が正しい。
ではなぜ、どぜう、かというと、初代の頃、三文字が
縁起がよい、と、どぜうとした、という。
以来、江戸ではどぜう表記が定着し、同業も皆、どぜう、と
書くようになったよう。
ともあれ。
14時ちょうど頃、到着。
藍色の暖簾を分けて格子を開ける。
下足のお兄さんがいて、一人、と、指を出す。
下足札をもらいあがる。
なるほど、ウイークデーのこの時刻、一階の広い
入れ込み座敷は空席も多い。
奥に向かって桜板が横にずらっと並び、板をはさんで
両側に座布団が敷かれ、葦簀が敷かれた板の間に
客は座る。冬でもここは葦簀の床、で、ある
案内された奥から二列目の最も縁側に近いところへ。
下足札は右の見せるところに置く。
これはルールである。
割り箸と小皿、右に割り下。
鍋が煮詰まったに入れる。
やっぱりお酒であろう。
ぬる燗。
ねぎ、薬味の木箱もくる。
ここの酒は、ふりそでというオリジナルブランド。
伏見の酒とのこと。
それから、どぜう鍋。
どじょうを開いていない丸のままなので、
丸鍋、などともいう。
そして、やっぱり、この時期だが、好物なので
鯉の洗いも。
お猪口。
真っ白に、将棋の駒、その中に「どぜう」。
これで、駒形どぜう。
まあ、判じ物。
これが江戸前の粋、というものであろう。
炭がカンカンに熾きた小さな七輪をお嬢さんが
運んできて、どぜう鍋もきた。
東京にどぜうやは今もなん軒かあるが、ここがやはり
一番うまいだろう。
基本、どの店でも生ではなく下拵えはしてあり、
温まれば食べられるが、ここは、江戸甘味噌などで
柔らかく煮ている。
これが、うまい、のである。
下味は味噌だが、鍋のつゆは、味噌ではなく
しょうゆの甘辛。
ねぎを山盛り。
細かい小口切りなので、すぐに煮える。
ねぎが煮え、どぜうが温まれば、食べられる。
鯉の洗いもきた。
真夏に涼を求めて食べるので、下には氷が敷かれている。
この季節でも。
比較的ゆるめの、酢味噌。
この塩梅もよし。意外に濃いめ。
これも、江戸甘ベースではなかろうか。
鯉の洗いはにおいや、くせもなく、コリコリした
歯応え。これが、うまい。
鍋は浅いのですぐに煮詰まってくる。
割り下を足しては、ねぎを足し、煮ては
また食べる。
どぜう、ねぎ。ねぎ、どぜう。
そのうち、ねぎを食べているのかどぜうを食べている
のか、わからなくなる。
それほど、ねぎがうまい、のである。
まさに、魔性のねぎ。
昔、ここはどぜうのある、飯やであったという。
目の前が、今は江戸通りという名前だが、古くは
江戸から北へ向かう、奥州街道の本道で、朝、江戸へ
野菜など物資を運ぶ荷車が行きかった。
昼、戻る頃、ここでどぜうで飯を食った。
それで、腹を満たすため、ねぎだけは、食べ放題
であった、とも聞く。
帰る頃には、身体中、ねぎの匂いに包まれる。
これが、駒形[どぜう]で、ある。
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