浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



上野・洋食・ぽん多本家

dancyotei2017-11-30



11月29日(水)夜


五反田のオフィスからの帰り道。


上野の洋食や[ぽん多本家]に寄ろうと思いついた。
洋食が食べたいというのが、動機なのだが、
帰り道にちょいと寄れるところ、というと、
他には、なぜか人形町[そよいち]あるいは、

[小春軒]が頭をよぎる。


いつも五反田への通勤は山手線を使っているが、
都営浅草線も使える。
それで途中下車だが、人形町という選択肢が
出てくる。


この人形町の二軒はどちらも気軽に入れて、
居心地もよい。そして、もちろん、うまい。
これが理由。


だがやはり御徒町の[ぽん多本家]が最も便利。
そして、このところ、こようと思ってなん回かふられている
というのもある。


それで[ぽん多本家]。


なにを食べようか、道々考える。
いつもそうなのだが、ここは、どれもうまいが、
かつれつ、でなければ、是非ともこれ、
というものが思い浮かばない。
店についてから、品書きを見て、になる。


御徒町駅秋葉原寄りの改札から出て、
パンダ広場、左に曲がって右。
中央通りに出る手前、右側。


右隣がそばや、左隣がカレーや。


重い木製の扉を開けて入る。


入ったところのカウンターに男性の一人客が二組。


一人、というと、あいていた右手壁際の席を案内される。


座って、とりあえず瓶ビールを頼む。
その間に、品書きを見る。


タンシチュー、ビーフシチューは切れている。
蛤バタヤキ。
『時価』で、一度は食べてみたい
目が飛び出る値段のあわびバタヤキ。


エビのコロッケ。
これは、クリームで大きくぷりぷりの海老


イカフライ、これも絶品。
それから穴子フライ。


お!


季節もの、かきフライがあるではないか。


これは食べなければなるまい。


確か、先シーズン食べた。
ここのは特大。


迷うわず頼もう。


ビールがきて、


お通しは例によって、まるで鮨やのような、
穴子


かきフライを頼む。
ご飯とみそ汁は、なし。


キリンのクラシックラガーをゆっくり呑みながら、
穴子をつまむ。


この煮穴子も、まったくうまいもんである。
洋食やとはとても思えない。
こういうところがこの店の懐(ふところ)の深いところ。


そうである。
改めて気がついたが、この店はなぜか、
女っけがまったくない。
料理人もそうだし、料理を出すのも男性。
お客までそうである。
二階は男女二人のカップルが多いが、
カウンターで女性一人というのはまったく見たことがない。
男の店、なのか、不思議といえば不思議である。


きた、かきフライ。


やはり、特大。




五つ。


ソースはキャベツだけにかけて、かきフライの方には
塩をふる。


パン粉や衣はかつれつと同じなのであろうか。


パン粉は大きめの粒でふんわり。
揚げ色はかつれつなど、他の揚げ物同様、薄い。
しかし、中は意外にしっかりめに揚がっているのでは
なかろうか。
大きいので、箸でつまんでもずっしり。
まったく、食べでがある。


海の滋味をまるごと食べているよう。


最後の一つだけをソースで食べてみる。
ここのソースは粘度は比較的ゆるめ、甘みをおさえた
スパーシーなもの。
かきフライにもよく合ってうまいのだが、
やはり、もったいないか。


ご馳走さまでした、うまかった。


立って奥の帳場へ行って勘定。


毎度ありがとうございますう〜、の男性の声に送られて
店を出る。


毎度書いているように思うのだが、ここは食べ終わって
店を出ると、とっても上質なものを食べた、という
実感がわいてくる。


満足、満足。幸せ、で、ある。






台東区上野3-23-3
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