浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



小島町・うなぎ・やしま

dancyotei2010-05-27



5月22日(土)夜



昼下がり、牛ばら肉の煮込みで、ビールを呑んだのだが、
呑んでいるうちに、ご飯はよくなり、別のものが、
食べたくなった。


なにかというと、うなぎ。
むろん、蒲焼。
なぜ、うなぎの蒲焼なのかは、わからない。
わからないが、うなぎの蒲焼、で、ある。


内儀(かみ)さんに話し、ご近所、小島町の
やしま、へ、いくことにする。


ここは、拙亭から、最も近くにあるうなぎや、
で、ある。
近くにあるからといって、あそこにもある、ここにもある、
という、うなぎやではない。


ここのご主人は、雷門の老舗、初小川で、修行された方。


初小川は、1907(明治40)年の創業で、浅草でも
古い方ではあろう。


初小川の蒲焼の味には特筆すべきものがある。
一般には、下町の蒲焼のたれの味は、甘辛の濃いめ、
ではあるのだが、ここのものは、キリッとさっぱり。
浅草らしく、ベトベトしない粋な味、といういい方が
あっていようか、、。
だが、むろん濃い味好きの東京人の舌にも満足感は与えられる。
この小島町のやしまは、その味を伝えていると、いってよい。


ご近所でもあり、やしまのご主人は、リアルの私が、
この日記を書いていることもご存じで以前に2回ほどやった、
私の落語会にきていただいたり、このご主人のご紹介で、
東京の鰻蒲焼屋さん組合の春秋の行事である、
浅草の伝法院で行なわれる、放生会に列席させていただいたりもしている。


また、かなりのご近所なので、先週なども、店の前で
ばったり、お会いし、立ち話をしたり。


まあ、そんな関係を続けさせていただいている
ご主人ではある。


私など、もともと、この界隈で生まれ育ったわけもなく、
町内会などに入ってはいても、昼間はおらず、なんら地元には
貢献できていない。そういう意味では、私が顔を知っていて、
地元に根を生やしている方では唯一の存在かもしれない。


だがまあ、今のサラリーマンとしての仕事のある状態では、
この日記を書いたり、NHKの講座だったり、という断腸亭としての
活動ぐらいしか、ある意味地元と関われるところはない、
というのも正直なところではある。


ともあれ。


小島町の、うなぎや、やしま。


6時過ぎ、内儀さんとともに、出る。


春日通りと左衛門橋通りの交差点を渡って、
拙亭から、1分もかからなかろう。


ちょっと重い戸を開けて入ると、5時開店のはずだが、
テーブル席も、座敷も、もう相当に、にぎわっている。


調理場への暖簾に顔を突っ込み、
忙しく立ち働かれている、ご主人に、ご挨拶をし、
座敷に上がる。


エビスの瓶ビールをもらう。





お通しには、ここの定番、味噌豆が、くる。
毎度書いているが、味噌豆というのは、
落語(小噺)にもあるくらいで、昔は、東京では、
とても一般的なおかずであった。
味噌豆、といってるが、ようは、大豆、で、ある。
味噌を作るための、モト、なので、味噌豆といっている。


からしじょうゆに、青海苔


つまみには、焼鳥を頼む。





ここのもそうだが、うなぎやの焼鳥、というのは、
どうしてだか、焼鳥やのものとは、違っている。


肉を、大きめに刺しているように思うのである。
そして、焼き加減も、ふっくらと、焼いている。
うなぎや式、とでもいったらよいのか、
わからぬが、うまいもの、で、ある。


そして、うな重





お重を開けて、山椒をふって、食べる。
先に書いたように、初小川ゆずりの、うまい蒲焼。


なんの文句もない。


うまかった、うまかった。



食べ終わり、お勘定もし、
まだまだ忙しそうなご主人には、ご挨拶だけし、
内儀さんとともに、店を後にする。


毎度、ご馳走様でした。






やしま
TEL 03-3851-2108
東京都台東区小島2丁目18−19