2019-01-01から1年間の記事一覧
引き続き「野ざらし」。 私は身の程知らずにも「野ざらし」を談志家元のもので覚えてしまったのである。もちろん、これは大間違い。さらに、唄うような柳好版でも間違い。 正解は、比較的ノーマルな柳枝版だったのであろう。 ただ、それでも、この噺、素人に…
引き続き、三代目春風亭柳好師「野ざらし」。 明治の三代目円遊師の速記の、土手に着いて、土手下の釣師とのやり取りの場面がポイントである。 八 「<前略> (鼻歌)ポンと突き出す鐘の音は陰に籠って上げ汐南(あげしお みなみ)物凄(ものすご)く烏が飛び…
引き続き、三代目春風亭柳好師「野ざらし」。 八 なんでもいいから、早く出てこい!。 出てきたら酒を掛けるよ~。 俺んとこは、浅草門跡裏、角(かど)に酒やあっから、 そこ入ってくっと三軒目。 腰障子に丸八(まるはち)としてあら~。 てなこと言うと、…
引き続き、三代目春風亭柳好師「野ざらし」。 清「いずこの方か知れないが、野へさらされて浮かばれまいと、 そこであたしが回向をしてやったねー。」八「えーこう、詰まらねえことやりゃあがったなー。」清「いや、手向(たむ)けをしたんだよ。」八「あー…
落語案内。回を重ねて、57回目。 円生、志ん生、文楽に加えて、金馬まで書いてきた。 基本、音がある、今でも比較的簡単に聞くことができるものを挙げてきた。やはり、音が多いのである。昭和というのは、落語のやはり黄金期といってよかった。この四人以外…
引き続き、三代目三遊亭金馬師「居酒屋」。 伝わったであったろうか。これも、ほぼ金馬師の話術で成立している噺。 「できますものは、つゆはしらたらこぶあんこうのようなものぶりにおいもにすだこでございます。へェい~~~~。」 この噺は小僧のこの口上…
引き続き、三代目金馬師「居酒屋」。 ~~~~~ 小「いの字は打てないんです~。」客「そんなこと言わないで打ってくれよ~。 試しに打ってみろよ~。」小「打てませんよ~。」客「じゃ、その次のろの字は?。」小「ろへ打ちますと、、 〇▽※~~~。」 客「…
引き続き、三代目金馬師「居酒屋」。 ~~~~~ (ぐいっと呑む。) なんだこの酒、酸っぺぇなぁ。 相手が居酒屋だぁ。飛び切り上等の酒ぁありっこねえと覚悟はしてた けど、今まで、甘口だの辛口だの、随分呑んだがなぁ。 酸(す)ぱ口ってなぁ初めてだ。 …
8月になりました。梅雨もあけて、いきなりの猛暑。暑中お見舞い申し上げます。しばらくは、この暑さが続くよう。皆様、お身体、ご自愛いただきますよう、お願いいたします。断腸亭 ~~~~~~~~~~~~~~ 三代目三遊亭金馬師。 「居酒屋」。やはり、…
引き続き、三代目金馬師「小言念仏」。 ~~~ ナァムアミダブ ナァムアミダブ ナァムアミダブ ナァムアミダブ 鉄瓶の湯ぅ掛けてボロっ布(きれ)で拭くんだよ。 畳の目形(めなり)に拭くんだよ。 ナァムアミダブ ナァムアミダブ ナァムアミダブ ナァムアミ…
引き続き、三代目金馬師。 「小言念仏」に行ってみよう。 噺は短いので、長めの枕を振る。 ~~~念仏でも唱えようという年頃になりますってぇと、家のことが気になってしょうがありません。 家の者に、小言を言いながら念仏を唱えている、なんというのがた…
引き続き、三代目三遊亭金馬「藪入り」。 藪入りで買ってきた子供の財布に十五円入っていた。 前にも書いたが、一円は現代の7~8000円から1万円のイメージでよろしかろう。十五円はやはりいかにも大金である。 父「手前(てめえ)の銭入れ開けてみるってぇと…
引き続き、金馬師「藪入り」。 父「ん? (涙を拭く仕草) ありがてえ。 (母に) おっ母ぁ、奉公はありがてえなぁ。 三年前(めい)まで寝床ん中で芋を食わなけりゃ起きなかったんだよ。 三年たつかたたねえ内に、少しばかりの小遣いの中から二人で食べてく…
引き続き、金馬師「藪入り」。 子供が藪入りで帰ってきた。 母「お前さん、なんか言っておやんなさいよ!」父「待っつくれ、声が出ねぇんだ。馬鹿野郎。 どうも、ご親切にありがとうございました。 今日(こんち)はまた、ご遠方んとこ、ご苦労様でございま…
引き続き、三代目金馬師の「藪入り」。 母「うるさいねー、この人はぁー。おっ母売りに来たようだね~。 なーおっ母ぁ、なーおっ母ぁ、って。 なんだよー?。」父「なん時だよ?」母「今、時間聞いたばかりだよ。 三時少し回ったよ。」父「どうも、剣のまわ…
三代目金馬師「藪入り」。 奉公に出ている子供が久方ぶりに家に帰ってくる噺。 “藪入り”というのは、商家などの奉公人が年に二回、正月15日の小正月と7月15日のお盆に家に帰るために休みを貰えるという習慣があった。 十歳程度で奉公に出され、年に二回しか…
引き続き、文楽師「つるつる」。 時代設定のことである。 現代に話されている落語の時代設定は明示されていないにしても江戸というのが大半で、明確に明治以降に設定されているのはそう多くはない。中でも文楽師は明治以降が多いといってよいだろう。今回取…
引き続き、文楽師「つるつる」。 いかがであったろうか。 ドラマは、他愛のない幇間のお喋りでつなげられている噺。多少端折ったが、ほぼ全編書き出すことになってしまった。 この作品は「口演速記明治大正落語集成」(講談社)(以下「集成」)に「思案の外…
引き続き、文楽師「つるつる」。 途中で注がれて、またいっぱいになっちゃう。(ここで切る録音も残っている。) 一八、もうベロベロ。 八「あー、もういい。 あたくしはねー、余興をご覧に入れる。 あたくしは、踊りを踊って、、旦「踊りを踊る、って、お前…
引き続き、文楽師「つるつる」。 旦「おい、だいじょぶかい?!。 嫌ならよせよ。 やるぞ!」八「へい。ありがとうぞんじます。 右まさに頂戴仕(ちょうだいつかまつ)りました。受け取りは 差し上げません。 今度(こんだ)ふーちゃん!。 あーたお酌。 え…
引き続き、文楽師「つるつる」。 旦「さあ。かまわずな、俺がここへ、出そう。」 (財布を一八の前の畳の上に置く。) (芸者に向かって)八「どうです!、ね。 大将てぇものは、こういう人なんです。 中座する、幇間の前へ、 お前は今夜、身祝いがあるから…
引き続き、文楽師「つるつる」。 (大声)八 「それなんです!。」旦 「なんだい?!、大きな声で。」八 「その、小梅なるものがね、あたくしの女房になる。 いーえ、ほんと。 あたくしはね、お恥ずかしい話ですがね、四年半岡惚れをしている。 この家に弟子…
引き続き、文楽師「つるつる」。 小梅が湯から帰ってきた。八「師匠はいないし。 一つ、ご機嫌をうかがってみるかな。 (小梅の部屋へ。) お梅ちゃん。 え、へ、へ、へ。 鏡台の前で、もろ肌脱いで。 おけいけい(化粧)ですか?。 いい肌ですね~。あなた…
引き続き、文楽師「心眼」。 円朝作品なので全集にもちろん入っている。異説のある作品が多いが、これは円朝作が定説のよう。 初出は明治24年(1891年)「八笑人」、書籍か。(「円朝全集」解題 角川書店)「文七元結」と同年である。前に見たように、この時…
引き続き、文楽師「心眼」。 盲人で按摩の梅喜(ばいき)。茅場町のお薬師様に願掛けをして、なんと目が開いた。大喜びで浅草のたまたま出会った、近所の上総屋の旦那と、自宅に帰るところ。芸者の乗る人力車に出くわし、上総屋の旦那に、お前の内儀さんのお…
引き続き、文楽師「心眼」。 茅場町のお薬師様。目を開けたいと、三、七、二十一日、満願の日。 梅喜、お賽銭を出して、祈る。 「へい。梅喜でございます。今日は満願の日ですよ。 お薬師様ぁ!」 だが、開かない。「お賽銭、毎日あげましたよ。 タダ取り、…
さて。文楽師「よかちょろ」なのだがもう一つ、せっかくなので若旦那について、ちょっと考えてみたい。 書いたように、落語の主要登場キャラクターの一つである。 ただ、若旦那でもよく見ると色々いる。 例えば「酢豆腐」の若旦那。これはキザで嫌味な奴とし…
引き続き、文楽師「よかちょろ」。 ~~~~ (手拍子) (唄) はぁ~~ 女ながらも まさかの時は は は よかちょろ 主(ぬし)に代わりてぇ たま襷 よかちょろ すい~のすい きてみて知っちょる 味ぉみて よかちょろ ひげちょろ ぱぁっぱっ これが、四十五…
引き続き、文楽師「よかちょろ」。 ~~~~旦「よーし!。この野郎。あー言えば、こー言うといってな。 なんでも親に口返答(くちへんとう=口答え)をしやがって。 よーし!。 今、お父っつあんが、ここで書き取ってやるから。 その代わり、なんだぞ。お父…
引き続き、八代目桂文楽師「よかちょろ」という噺である。 ~~~~~~若「それが、お前は素人だ、てんだ。 ナカの花魁から半年預かってるんだ。」番「なんだって、あーた、預かってるん?」若「俺は、預かりたく預かってるんじゃない、向こうが預けるんだ…