浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)
断腸亭料理日記本店
 

断腸亭落語案内 その58 春風亭柳好 野ざらし

f:id:dancyotei:20190521083754g:plain

引き続き、三代目春風亭柳好師「野ざらし」。


清「いずこの方か知れないが、野へさらされて浮かばれまいと、
  そこであたしが回向をしてやったねー。」
八「えーこう、詰まらねえことやりゃあがったなー。」
清「いや、手向(たむ)けをしたんだよ。」
八「あー、狸がどうした。?」
清「なぜそう話しがわからないんだよ。
  野を肥やす 骨に形見の隅田川
  盛者必滅(じょうしゃひつめつ)、会者定離(えしゃじょうり)
  南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)、南無阿弥陀仏(なむむだぶつ)と
  腰に残った瓢(ふくべ)の酒、骨い(へ)掛けると気のせいか、
  骨がぽーっと赤くなったので、あー、よい功徳をしたと、
  家ぃ帰って、寝酒を呑んで、横になった真夜中。
  目が覚めたが、どーしても寝ることができない。
  
  するとねー。
  どこで打ち出す鐘か知れないが、陰に、」
八「おっと!。
  ちょっと待ってください、ちょいと。
  それ、こもったんでしょ。」
清「そうだよ。」
八「陰に、ってぇと、きっとこもらせてやがる。
  もう、こもる時分だと思ってたんだ。
  こもりそこなちゃっただろー。
  ざまー見やがれ。」
清「なーにぉ、下らねえこといって。」
八「ぼーん、ときましたか。」
清「うん。」
八「上野の鐘は、銀が入ってるから音がいいや。
  コ~~~ン。
  芝の鐘は海へしぶくから、さわりがつくね~、
  グワン、ワン、ワン、ワ~~~ン~~~~。
  大きな寺の鐘、割れたような音がすらぁ、
  ゴ~ワン、ゴ~ワン、ゴ~~~~~ワン。」
清「うるさいよ!。」
八「半鐘の鐘が、ジャンジャン~~~~
  鉄道馬車の鐘がカンカンカンカァン~~~~
  
  (唄)
  え~、ただぁ~~~~~~~~~~
  鐘がカーン、カーン、ポーン、ポーン、
  叩いて仏になるならば、時計やのまわりはあらかた仏にぃ
  なる~~~~~~~だろぅ~~~~~。
  ってな知ってるかぃ!。」
清「そ~んなこと知りゃぁしないよ。」
八「なんです?」
清「手前、向島からまいりました。
  結構な句をいただいて、浮かぶことができました。
  ご恩返しと。
  あたしの肩をもんでいたのは、ハっつあん、夕べのはこれだぁ~。」
  (両手を前に出して幽霊の恰好。)
八「幽ですかぁ~?」
清「なに~?」
八「テキかい?」
清「なにが?。」
八「幽テキかい?。」
清「ものを切れ切れにいう奴があるかー。」
八「きれいなテキですね~。
  あんななら、怖くないんです~。
  じゃー、向島行って、功徳しますかぁ~。
  なーんだ。あんな、女くるんなら早く知らしてくれりゃいいのに
  一人で、功徳してらぁ~。こすいよ~。ひっかくぞ~。」
清「なにをひっかくんだよ~。」
八「お安い御用だ。この釣り竿、、。」
清「こらこら。
  そう、つない(ぎ)竿、ガラガラやって。」
八「ケチケチすんなぃ。借りてくよ!。」

ってんで、釣り竿肩に、酒ゃへ行って、いくらかの酒を腰ぃぶる下げて
来てみると、土手下へ、こう、ず~っと釣り師が出ておりますんで。

八「いるね。
  今年ぁ、こりゃ、年寄が色気付きゃがったぃ。
  随分早くから、こりゃぁ、功徳に来てんね。
  驚いたな。油断も隙もできねえ。

  こんちはー!。
  んちは~!。

  なんだいそこは?
  新造かぁ~?、年増かぁ~?なんだ?。

  は~?へ~?、は、は、はぁ~~?」

  (土手の上と下のやり取りになる。下の釣り師は竿を構える。
   複数の演出。)
A「なんです?あれ。」
  (上を見上げて、隣を見る。)
B「え?」
A「あれ。」
B「なんです、あれ。」
A「わかりませんよー!。」

八「ごめんよ~~!あいだ行くよぉ~!
  (土手を降りてくる。)
  (唄)
  ちゃちゃ~ん、ちゃかちゃ、ちゃらちゃ。
  
  ちゃちゃちゃ、ちゃぁんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃぁんちゃ、

  どいつ(て)くれ、どいつくれ、どいつくれ~!。
  後からきて先ぃ釣っちゃうんだ。驚くなぁ~!。

  (八五郎、唄、とともに、竿を回しながら巻き付いた糸を
   外す仕草。)
  あたしゃぁ、年増がぁ、えぇえ、いんですぅ~、う~~~
  よ~~~~へぇ~へぇ~へぇ~~~~。」
A「たいへんな人がきちゃったぃ。
  釣りをしてんだか、湯へ入(へぇ)ってるんだかわかんねー。
  (八五郎、糸を川へ投げる仕草。)
八「え、っこしょ(どっこいしょ)っつくらぁ~。

  あ~~う~~、、、、」
A「唸ってるよ、おい。

  えさぁ付けないよ、あの人。

  あーた、どーでもいいですけど、えさーついてないですが。」
八「大きな、お世話だ。
  こうやっつぅ(て)るうちに、鐘がボンっつくらぁ~

  (唄、サイサイ節の節)
  鐘が ボンと鳴ぁ~ぁりゃ 上げ潮ぉ南さぁ~ぇ
  烏が ぱっと出ぇ~て こりゃさのさ えぇ~
  骨があ~~る さ~いさい

  ちゃちゃかちゃぁ~ん」
A「弱ったなぁ~!
  上げっ端でそんなにやって、、」
八「なにぉ?
  魚がどっか行っちまう?
  べらんめい、魚に耳?、耳がある?
  ほ~、見すつ(せて)くれ。
  初耳だ。魚の耳を見せろぃ!。

  (再び唄、サイサイ節)
  そのまた骨にとさぁ~ 酒をば掛けりゃさ~
  烏がパッと出ぇ~て こりゃさのさぁ~
  骨が べべぇ~着て こりゃさのさ えぇ~
  礼にくぅるさ~いさい
  
  ちゃ、ちゃか、ちゃん、ちゃん
  (構えた竿を上下し、前の水面をバシャバシャ叩く仕草。)
A「そー、かき回っしちゃちゃ。」
八「かき回しちゃ、、?
  かき回すってなぁ、こうやるんだ。」
  (竿を逆手に持って、文字通りぐるぐるとかき回す。)

つづく