浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



赤貝とまぐろぶつ

dancyotei2009-04-30



4月25日(土)昼


さて。


土曜日。


昼前、どうしたわけか、小柱、が食いたくなった。
それも、わりに、ピンポイント、なのだが、
池の端藪の、はしらわさび、の、ようなもの、、、。


あれは、ほんとうに、乙、な、つまみ、で、ある。


小柱も、鮨やでは、最近は、大きな北海道のものが多い。


鶴八などでも、軍艦巻、で、あり、伝統のもの、なのかとは思うが、
なぜだか、にぎりとしては、あまり食べたいと思わない。


やはり、池の端藪のような小鉢にちょいとのっているのを
つまむ、のがよい、と、思うのである。
(むろん、天ぷらのかき揚げは、小柱の食い方としては、
最高のものではあると思うのだが。)


ちょっと、買いにいこう、と、思い立ち、自転車で出る。
いく先は、吉池、で、ある。今日は、肌寒い。


きてみると、冷蔵ケースに小柱は
あるにはあるのだが、高い。
白い網のプレートにのせられ、量はけっこうあるし
一粒の大きさも大きいのだが、一枚、3000円弱。


北海道のもので、鮨種用、と、同様のもの、で、あろう。


しかし、3000円はいくらなんでも、高いであろう。
ちょいとつまみたいのに、これだけは出せない。
(これであれば、素直に池の端藪へいった方が、よいだろう。)


なんでこんなに、高い、のであろうか。


小柱は、青柳の貝柱。
青柳は、この前も、買ってきて食べた。
けっこうな量があって、300円。


この時にも書いているが、江戸前の貝としては
量もよく獲れ、とてもあたり前、のもの、で、あり、
値段も庶民的なものであったであろう。


先のものも江戸前で、今でも、船橋、木更津、富津、などでは
よく獲れているとも聞くが、北海道の大きなものが値段も高いが、
人気があり、今日はこれしか、置いていなかった。
江戸前の小柱も、もっと流通しないものであろうか。
北海道のものは、正確にはエゾバカガイで多少種類が
違う、とも聞く。)


と、いうことで、どうしようか、、?
で、ある。


売り場をうろうろし、考える。


うろうろしていると、まぐろぶつ、安いのがあった。
300円くらい。これ、買おうか、、。


吉池には、ショーケースではなく、対面販売で、
貝を売っているコーナーも、ある。
ここに小柱がないか、と、思って見てみるが、
やっぱり、ない。


すると、赤貝が、むき身で、売っている。
これはいつもあるように思うが、
一つ、ヒモもついて、250円。


これでいこうか。
小柱から、変更。


赤貝も好きなのだが、鮨や、などでは、小柱などよりも
昔から高価なねた、の一つで、あろう。
それで、私などは、鮨やで自ら頼むことは、ほとんどない。
結局、そこまで出して、食べたいですか?
ということになるのだが、私は、そこまでは出すほどではない
のである。(だが、好きであることは、間違いない。)


赤貝も、先の小柱も同じことがいえるのだろう。


少し前に、鮨の考察をしたが、鮨の持つプレミアム性、と
いうこと、になるのだろう。
昔は、相対的には、今よりも安かったものが、
江戸前が少なくなり、希少性が加わり、またあるいは、
江戸前よりも、よりうまい産地を探し、
実際の味(?)の価値、以上に値が上がっていった。


(これがよいことなのか、という議論はこの前した。
結局、どこに価値を見出すのか、ということにもなるのだが、
最低でも、実際の味、ではなく、ブランドだけ独り歩きして、
値が上がる、ということだけは、避けなければいけない、と
消費者として、食う人間として、思うのである。
つまり、盲目的に、有名産地ブランドだけを崇拝する、
というのは、やめよう、ということ、で、ある。
(グルメマスコミなどが典型例、で、あろう。
彼らに、踊らされていないけない、のである。)
また、世の中には、味ではなく、値が高い、ということそのものを
ありがたがる人、が、少なからずいて、そういう人々が
鮨のプレミアム性に魅かれ、また、支えているのも
事実ではある。)



ともあれ。



むいた赤貝三つと、まぐろぶつを買って、帰宅。


さて、赤貝。





こんな状態、で、ある。


血、なのかどうか、よくわからぬが、真赤、で、ある。
よく洗い、肝やら、を取り、ヒモと本体、貝柱に分ける。


ここから本体部分は、包丁を入れ開く。
これで、鮨やで握る、蝶のような形になる。


開くと、中にさらに肝のような茶色の部分があり、
これも、包丁で切り取る。


あとは、ヒモとともに、よく洗い、ぬめりを取る。
(このぬめりは、意外になかなか、取れない。)
ぬめりを取ったら、水気を切って、ペーパータオルでよく拭く。


皿にのせ、まぐろぶつとともに。





やっぱり、赤貝は、うまい、もの、で、ある。
ふっくらと厚みもあり、なかなかよいもの、ではなかろうか。


ヒモもまた、うまい。


まぐろぶつは、むろん解凍もの、で、あろうが、
味は、なかなかわるくない。



さて、まぐろぶつ。
半分ほど食べたのだが、残った半分。


夜中、ヅケにして、みた。


作り方は、酒にしょうゆと、煮詰まるのを考慮して、
気持ち、水を加え、一度に煮立てる。
(これが、ニキリ、などといわれるもの。)


これを冷まし、まぐろぶつを、入れる。


加減が難しいのだが、漬けすぎると色がわるくなったり
味が濃すぎたりする。


食べる時刻に合わせて、濃さと、漬ける時間を
調節しなければならない。


鮨やでは、サクの表面を霜降りにしてから、漬ける、
ということもするし、また、即席ににぎり用に切った
赤身を、ニキリに数分漬けるようなこともする。


色が少しかわってきたら、食べ頃か。
盛り付け。





なかなか、うまい、まぐろぶつのヅケ、が、できた。


内儀(かみ)さんが生意気にも、ヅケはあまみがないと、
などといっているが、できは、まあまあで、あろう


赤身もまた、こうすると、違う味が楽しめる、
のである。


うまかった。