引き続き、日曜。
新ばし[しみづ]。
昨日は、にぎりに入って
一つめの、きすまで。
次は、鯖。
ここの鯖の〆具合は浅め、であろう。
最近、自分で〆た鯖がいまいちなことが多かった。
ものもよいのだろうし、
あたりまえのことだが、さすがにプロ。
みずみずしく、ほどよい脂と
鯖らしいうまみ、である。
鯖とくれば、小肌。
毎度書いているような気がするが、小肌というのは
にぎり鮨の中でも、最も「江戸前」を名乗るのに
適した種、であろう。
なにしろ姿がいい。
小肌というのは、ほかの光物と違って、皮をむかない。
銀色に光り、黒い斑点が規則的にちらばり、
地の銀色の部分は、段々に黒光りに変わっていく。
スッと飾り包丁が入って、身の赤い部分がちらっと、
見えている。
他のどのにぎり鮨よりも、美しい。
そして、むろん、うまい。
小肌を抜きに、江戸前鮨は考えられなかろう。
次は、まぐろ。
赤身と中とろ。
東京の一流鮨店では、やはり看板、であろう。
おそらく、最も値が張り、客も最も楽しみにしている。
近海の生、なのか。
まぐろがなければ、もしかするともう少し安い値段になるのかも
しれない。
なにもいうことがない。
次は海老。
にぎりに入った頃から、目の前の若い衆が茹で、茹で上がったものを
鍋のふたの上にのせて保温し、スタンバっていた。
皮をむき、握られる。
茹でたてでは熱すぎるが、粗熱が取れたくらいなのであろうか。
このくらいの海老が最もあまく、みずみずしい。
いつ茹でたのかわからない、回っている鮨やなんぞで、食べてはいけない。
まったく別の食い物、で、ある。
そろそろ終盤。
赤貝、煮蛤。
他になにか食べたいものがありますか?、という。
いか!。
おそらく、親方は忘れていたと思われる。
いかを出さないなんて、ありえない。
いかといえばむろん、すみいか。
先の小肌が、江戸前の鮨を代表する種とすれば、
江戸前でいかといえば、これ以外にはない。
産卵期の夏前のわずかな期間以外は、江戸前を標榜する東京の
鮨やでは、すみいか以外は使わない。
先月、新いかを自分でも食べたが、今日のもまだ小さい部類であろう。
やっぱ極上の食感とあまみ。そして香りがよい。
内儀(かみ)さんは、うにを。
そして、最後の巻物は、これも内儀さんのリクエストで
おぼろ巻き。
なぜだか内儀さんはおぼろに執心である。
おぼろ、と、いうのは、今、用意している東京の鮨やは、
やはり限られている。
今はもうまったく見なくなっているが、
私と同世代以上の方であれば、でんぶ、というものを
よく知っていると思われる。
魚から作った甘いそぼろで、弁当の白いご飯にのせてあったり、
ふりかけのようにして食べていた。多くはピンク色。
近いものだが、おぼろは、芝海老などをそぼろにしたもの。
海苔巻にもするが、小肌のにぎり、なぞに、はさんで
にぎったりもする。
ここにはいつもあって、ねたの木札に
ちゃんと書かれて、小肌やまぐろと並んで
親方の背後の壁に貼られている。
ご馳走様でした。
今日もたいへんおいしゅうございました。
お勘定は、一人1.7kほどであったか。
やっぱり、たまにはここにこないと。
“江戸前”の補給、で、ある。
新ばし・しみづ
03-3591-5763
港区新橋2-15-10