浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



断腸亭の夏休み2023 慶良間~八重山 その15

4425号

引き続き、竹富島の[星のや]。

ここの客室は、皆、一戸建てで、それも沖縄の
伝統的家屋になっている。
これだけでも、ここへ来る価値はあるだろう。
特に私は、大学時代日本民俗学を学んだので、
とても興味深い。

昨日出した正面の写真をもう一度。

表の石垣の塀があって、家の前にもう一つ、石垣。
これがポイントなのである。
まあ、外からの目隠し、ということにはなる。

この目隠しはヒンプンと呼ばれ、漢字は屏風が
当てられているよう。

この壁の左右から家に入るのだが、右と左で意味が
異なっているという。

向かって左が、通常の通路。
右はお客や、神様の通る通路。
(神様というのは、沖縄の場合は先祖の霊と
言い換えてよいのか。)

つまりハレとケという位置付けが決まっているよう。

沖縄の伝統的家屋すべてに設けられている装置。
おもしろいものである。

中に入り、向かって右側からパノラマの写真を
撮ってみた。

こんな感じ。

天気がよいので、限りなく青い空。
緑の濃い庭木、屋敷林。
そして、赤瓦の屋根。ごつごつした石垣。

屋根の上、正面に一体のシーサー。

近年は日本の神社の狛犬にのように玄関に左右一対、
阿吽のシーサーを置くような習慣も出てきているようだが、
本来はこの屋根正面に一体だけ置くのがスタイルだったよう。
シーサーは、日本語の獅子(しし)でよいよう。
むろん意味は魔除け。

シーサーは、屋根を葺いた瓦職人が作るという。
それで、皆、違う、と。

部屋にあった沖縄出身の建築家伊礼智氏の「オキナワの家」
から沖縄の伝統的家屋の模式図を筆者が描き起こした。

基本、南向き、とのこと。

お客はヒンブンの右側、ハレの入口から入る。
南東の一番端が「一番座」で客間。
その隣が「二番座」で、トトーメと呼ばれる仏壇がある。

仏壇というが、沖縄は歴史的に一般には日本のような
旦那寺があり檀家がある、宗教としての仏教はない
といってよいのだろう。ただ位牌はあり、先祖を祀る場所。

その隣が家族の集まる茶の間。
子供の部屋などは、クチャ(裏座)といって北側にある。
一番西側が、竃のある台所。

基本的こういう構造になっているよう。

日本も地域地域で、家の構造、部屋の配置は決まっており
家族それぞれの居場所が決まっている事は多いが、同じような
ことだろう。

ともあれ。
南向きだが、雨端と呼ばれる軒が広く張り出し、
日陰を作る。

防風林、屋敷林、庭木として植えられている植物も
大方決まっているよう。
ここの部屋・家もそれに倣って同じ木々が植えられているよう。
それで、外からの見た目も、中から外を見た雰囲気も
完全に沖縄の家に感じられる。

日差しが強く、肉厚な葉っぱを持つうっそうと茂る木々。

自然の林にもよく見かけたが、

一見里芋の類かと思うと、食べられない
インドクワズイモという植物のよう。

この家のヒンブンの真後ろに植えられていた

ハイビスカス。
沖縄では庭木としてそこここに植えられている。

そして、

ご存知、ブーゲンビリア。これも沖縄どこにでもあるが、
深い緑と、赤瓦と底抜けに青い空に映える。

ハイビスカス、ブーゲンビリアともに沖縄在来の植物
ではなく、時代はよくわからぬが移入されたものと
思われる。

そして、これ。
屋敷林としてよく見る。定番のよう。

福木(フクギ)でよいのか。

正面のガラスにバッタが止まっていた。

模様がちょっと見慣れないので、調べてみると、
イシガキモリバッタという、石垣、竹富、宮古だけに
いるバッタ、、かもしれない。

こんな、ところ。

昼間、この天気なのだ、外へ出るとものすごく
暑いのだが、この環境でこの家、なにもしなくとも、
よい時間がすごせるというもの。贅沢、で、ある。

閑話休題

昼前、竹富島の集落へ昼飯を食いに出る。

竹富島の集落は島の中央部に集まっている。

[星のや]から30分に一本程度の割合で巡回の
車が出ている。
これに乗って、集落の最寄まで。

 


つづく

 

星のや・竹富島

 

 

 

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