浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



池の端藪蕎麦

dancyotei2010-04-15


4月11日(日)昼


昼前、内儀(かみ)さんは外出。
私も、銀座に出掛けることにする。
目的は二つ。


一つは着物を着た時に持つ、バッグ、鞄を探しに。
もう一つは、昨夜「チューボーですよ!」でやっていた
天丼が気になり、天國へ。


着物を着たときに男が持つもの、というのは、
一般には、巾着、信玄袋。これらは、いわゆる袋物で
男持ちのものはある。


少し、大きいものを入れたい。
こういう場合は、風呂敷、なのであろうか。
まあ、風呂敷もわるくはないが、風呂敷とは基本的には、
実用的なもの、といってよかろう。お使い物などを包むもの
という用途ならよいかもしれぬが、自分の手荷物を入れ、
そこそこきれいなよそ行きの格好をして、
風呂敷というのも気が利かぬような気がする。


調べてみると、最近は、鞄のようなものでも
男持ちで、着物に合わせたものも売られているようである。


ちょいと、そんなものを探したいと思ったのである。


銀座にある、男着物専門の店をのぞいてみる。


巾着もあれば、
確かに鞄もある。


鞄は、ファスナーのような金属はできるだけ見えない
ところに配置し、シンプルで、色も黒などの地味なもの。
なるほど、これならば、着物に持っても多少お洒落な
感じはする。


しかし、本皮のため、5万を越えている。
この値段であれば、私などが買う、古着の着物が
一枚買えてしまう。


これは高かろう。
鞄の類を買うのであれば、やはり、御徒町界隈の方が
安かろうし、いろんなものがある。
似たようなシンプルなものを探してみよう。


店を出て、八丁目の天國に向かう。


今日は、天気もよく中央通りも随分と人が出ている。
てくてく歩くと、汗が出てくるほど。


天國にきてみると、誰しも考えることは同じか?
昼時は少しすぎているが、中には椅子に座って、待っている列。


普段であれば、ここまでのことはなかろう。
またの機会にしようか。


しかし、腹が減った。
ここで、昼飯にありつけないとすると、、、、
なんであろうか。


なんとなく、天丼の頭になってはいたが、、。


鞄のこともある。
御徒町に戻ろう。
少し久しぶりかも知れぬ、池の端藪で蕎麦を食おう。


天國からは、目と鼻の先の銀座線新橋駅から乗り、
上野広小路まで戻る。


上がって、日曜日のこの時間はさほど多くもない
人通りの、天神下の猥雑な路地を抜けて、仲通りの藪蕎麦まで。


こんな時間でも“さる業態”は、呼び込みをしているのが
不思議なほど。
(そういえば、都条例で禁止のはず。ここはちっとも
かわらない。)


池の端藪蕎麦に入ると、ほぼ満席。


ちょうど私が入ると、出る人がおり座る。


今日は、まだ買い物があるので、酒はやめて、
蕎麦。


天國のかき揚げ天丼、という頭もあったのだが、
どうせなら、自作をしようか、というアイデア
沸きつつあった。


そこで、しばらく食べていなかったが、
鴨せいろ(この店では鴨ざる)にしてみる。


むろん、鴨せいろは、今でも好きだが、
この日記を書き始めた頃、、2000年頃か、
この世の終わりになにが食べたいか、と聞かれれば、
鴨せいろ!、と答えよう、というほど、妙に凝っていた。


甘辛の濃いしょうゆ味と鴨の脂の相性というものは、
まさに堪えられないもの、といってよかろう。


きた。





以前に食べていたものとむろん、かわらない。


ここの鴨せいろは、やはり、都内でもぴか一ではなかろうか。
つけ汁に入っているのは、表面を炙って、中はレアな
鴨肉のスライスと、鴨肉のつくね。


ポイントは、スライス肉は煮込んでいないこと。
鴨肉ほど、火を通せば通すほど、小っちゃく縮んでしまう
肉は少なかろう。肉の味をたのしむのであれば、
レアでなければならない。これに対して、鴨肉のもう一つの
たのしみは、脂。ひょっとすると、肉よりも私などは、
脂があればよい、かもしれない。
ここのつけ汁には、脂を出すために、肉とは別に
脂身を入れて、つゆで煮出してある。
うまいものを作るためには、こういう細かい配慮、が、
あたりまえのこと、であるが、大切なことなのである。


入っているねぎも焦げ目を付けて、焼いてある。


鴨肉二〜三枚、つくね二個ほど、焼ねぎが三〜四本。
それに煮出した脂身。


どこかの趣味蕎麦であったか、この鴨せいろのつけ汁に、
ねぎに加え、三つ葉やら椎茸やら、妙に具沢山のものがあった。


雑味が出てしまうという味のこと、もあるが、
スタイルとして、鴨せいろのつゆというようなものは、
けんちん汁ではない。
なんでもたくさん入れればいい、というものではなかろう。


このくらいがちょうどいい。
これが、江戸前の姿、で、ある。


ともあれ。
食べて、今度は、多慶屋前に戻り、
いつもきている鞄やをのぞく。


先ほど見たものは皮だが、これはキャンバスもどき。
シンプル、いや、ファスナーやらポケットやら、
なにもついていない、というもの。黒で、3000円。
こんなものでもよいのかしら?。


多少、不安はあるが、安いので買ってみる。
(これ、内儀さんに見せると、1500円?
と聞かれてしまった。
そんなに安っぽそうか?!困ったもの、で、ある。)


それから、、
例の天丼自作、、、吉池を回ってみる。


小柱だが、天國でも大粒の北海道産のものを
使っていた。
これは、まあ、知ってはいたが、一枚が
3000円弱。そうとうなもの、で、ある。
江戸前の小さいもの(これは、一枚、数百円だが)は
今日は置いていない。
やはり、これは高かろう。


かき揚げ丼自作は、またにしよう。


鴨せいろを食べ、腹も一杯だからか、
無理してまで買う気にはならない。


せっかくであるから、アメ横の方もまわってみるか。


鰯が300円、安いので購入。


ぶらぶらと、元浅草まで帰宅。







池の端藪蕎麦