2月13日(月)夜
山形出張。
天気は心配をしたが、寒いが時折晴れ間も見えるほど。
薬味が五種類ある、そばが五段の割子そば。
薬味といっているのは、ねぎ、わさび(練り)に
なめこおろし、山菜、挽き割納豆、とろろ。
蕎麦の色は薄めではなかろうか。
また、味も薄めのように感じたが、気のせいか。
量は五段あるのでそこそこの量。
つゆは、私の慣れている東京下町のものと比べると、
しょうゆは同程度だが、甘め。
このくらいが、ここの標準か。
これで1,700円。よい値段である。
仕事が終わって、19時頃、上野に戻ってきた。
口直し、ということでもないのだが、
上野の[藪蕎麦]に寄ることにした。
中央改札を出てひたすら真っ直ぐくると、上野藪蕎麦に
たどり着く。
入って、あいていたカウンター席に掛ける。
なにをもらおうか。
道々考えてきたのだが、天ぬきで一杯やろう、
というのが今日の結論。
お酒お燗と、天ぬき。
毎度の通り、ここは「熱燗ですか?」と聞いてくる。
熱くしないで、ぬるくもしない、普通で、と、頼む。
まあ、それだけ燗酒といえば、熱燗、という人が
多いということなのであろう。
気持ちぬるめ、か。
ややあって、天ぬき。
ここの天ぬきは初めてであったか。
海老天二本の尻尾のはみ出たふた付き。
開けると、
長い海老天が二本。
いわゆる[藪]ご三家、浅草並木、池之端、神田は、
芝海老かき揚げである。
[藪]本家に近い三軒はかき揚げと決まっているのかもしれぬ。
ついでだが、日本橋の[やぶ久]もかき揚げであった。
同じ藪でも上野は長い海老天であったか。
そういえば、それ以外、神田[まつや]なども、長い海老天であったし、
浅草の尾張屋もそうであった。
要は、天ぷらそばのそばヌキ、なので、天ぷらそばが
かき揚げのところの方が、少ないということか。
(室町[砂場]がちょっと変則のかき揚げの天ぬきであった。
あそこは、ざるそばのつけ汁に小さめの芝海老かき揚げを入れたものを
天ぷらそばと呼んでおり、これが天ぬきというと出てくる。)
天ぬきの場合、やはり、かき揚げの方がうまいだろう。
結局、天ぬきというのは、海老もさることながら、
つゆにふやけた衣がうまい、のである。
そうすると、長い海老天ではなく、衣の多いかき揚げの方に
適正があるということになる。
天ぷらそばの、芝海老かき揚げと長い海老天とでは、おそらく
芝海老かき揚げの方が、先に生まれたのだと思われる。
そういう意味では、藪ご三家というのは、古い天ぷらそばの形を
残している、ということだと思われる。
長い海老天というのは、芝海老かき揚げの差別化商品というのか、
より見栄えよく、グレードアップ感あるものとして生まれたのでは
なかろうか。(きっと明治以降。)
そういう意味で、天ぬきというメニューが生まれたのは
初期のかき揚げ天の頃と考えてよいことになる。
ともあれ。
天ぬきで一合を呑んで。
そばは、冷たいとろろを頼んだ。
味が付いていないとろろでつゆは別。
これは、並木もこの形であったか。
池の端は、つゆを合わせた味付きのものであったと思う。
私の好みとすれば、混ぜて塩梅よく調整してもらったものの方が
うれしい。
濃いのがよいので、つゆを全部入れてよく混ぜてしまう。
まあ、これでも十二分にうまい。
たぐりおわり、とろろの残ったつゆもそば湯を足して、
全部飲み干す。
うまかった。
ご馳走様でした。
勘定をして出る。
今日は二食、そばやで、そばであったが、
随分と違うもの、で、ある。
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