浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



上野藪蕎麦

12月9日(金)夜



18:30。


新幹線で郡山から上野まで帰ってきた。


福島県の郡山といっても、晴れており、
寒いことは寒いが、そうびっくりするほどではなかった。


震災後、実のところ、福島県に入るのは初めて。
あまりここに詳しくは書けないが、今の私の担当する仕事も
福島県、震災、原発被害とそうとうに関係が深い。
だが、東京で毎日をすごしていると、やはり、
段々に、記憶は遠くにかすみ始めているのも事実である。
(企業であれば、速やかな復旧復興は至上命令である。)


しかし、福島県には今でも、いや、いつになったら
帰れるのまったくかわからない地域が存在し、
そこに住んでいた方々がいる。
また、そうでなくとも、福島県に住んでおられる
皆さんはむろんたくさんおり、福島、というだけで、
なんとなく敬遠される、風評被害に悩まされてもいよう。


当地は、当地の人々にほぼ責任がなく、
かけがえのない故郷を汚された。
こんなことが許されていいはずがない。


郡山駅のホームを降り立ってからずっと、
例の、猪苗代湖ズの『I love you & I need you ふくしま』が
頭の中に繰り返しリフレインされていた。


郡山の西の小高い丘の上に上がると、向こう側には
阿武隈山地の柔らかで美しい山並みが見えた。


アイラブユーベイビ・ふくしま、アイニージューベイビ・ふくしま、


アイウォンチュウベイビ・ふくしま〜〜


ふくしまがすき〜。



まだまだ、震災被害は、終わっていない。
私達は、忘れない。


忘れてはいけない。


決して。



・・・、考えつつ、上野駅



考えつつも、寒いし、温かいものが食べたい。


蕎麦や、、かな、、。
上野藪へいこうか。


池の端藪は夜、よくいくが、
ウイークデーの夜にここへいくのは、初めて
かもしれない。


寒いので地下通路を経由して、丸井に入り、
上へ上がり、丸井の1F店内を通って、一番奥までくる。
この出口を出ると、上野藪の目の前。


入ると、やはりウイークデーの夜はそう人は多くはないのか。
奥の四人掛けのテーブルに一人で座る。


お酒をお燗でもらう。


温かいもの、といえば、天ぬき、だ。


ここで天ぬきは初めて、である。
品書きを見ても書いていない。


できるか、と、お兄さんに聞いてみる。


あ。もちろん、です、とのこと。


頼む。


と、お酒もきて、呑み始める。





すいている、と、思っていたら、
お客は段々と入り、席が埋まってくる。


呑んでいると、きたきた、天ぬき。





丼にふた付きで出てきた。
なにか外に出ている。


開けると、大きな海老天二本。






池の端

並木の両藪とも、芝海老かき揚げ。


同じ藪だが、違うもの、で、ある。


よく考えると、この藪二店以外、私がよく行く
蕎麦や、神田まつや、浅草尾張屋、も、海老天二本で
あった。


いや、かと思うと、日本橋藪久かき揚げであった。


天ぬき、というのは、むろん天ぷらそばのそば抜き、
で、ある。


海老天とかき揚げとどちらが多いのであろうか。


こと、天ぬきの場合、かき揚げの方が、よい。


天ぬきはなにがうまいのかといえば、
あの、つゆで柔らかくなった、衣がうまい、のである。
そういう意味で、衣の比率が多い、かき揚げの方が、
天ぬきには、合っている。


が、むろん、それはそれ。
大きな海老天でも、天ぬきは天ぬき。
うまいものは、うまい。


うまいので、お酒をもう一本。


ゆっくりと呑んで、蕎麦はノーマルなせいろ。






うまい。



あたたまった。



春日通りまで出て、バスで帰宅。








ふくしまが〜、す〜き〜。







台東区上野6-9-16
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