浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



おでん・日本橋・お多幸本店

dancyotei2012-11-25


11月21日(水)夜


皆さんもお感じのことと思うが、
まだ、11月というのに、この寒さはどういうことであろうか。


相変わらず、今週も月曜に富山と、出張続きだが、
それに加えたこの気温の変化に身体がなかなか付いていけない。


今日はくしゃみと鼻水、アレルギー性鼻炎がひどい。


こんな日は、燗酒とおでん!。


おでんといえば、この前は、池之端多古久へいったが、
しょうゆの濃い、東京のおでん、と、いえば、


もう一軒、お多幸を忘れてはいけない。


おでんといえば、皆さんはどんなつゆを
思い浮かべようか。


澄んだもの?


コンビニのものも含めて、有名店といわれる
ところも含めて、東京でもおでんといえば、
今は、澄んだつゆ、で、あろう。


つゆで煮込んだおでんというのは、落語、替り目などにも出てくるが
主として担い売りで、幕末から明治初め頃、東京で生まれた、
思われる。


これが大阪など関西へ伝わり、澄んだつゆになり、
関東炊き、とも呼ばれるようになった。


それが、大正期に関西風の割烹料理が東京へ
流入するのに合わせて、澄んだ関西風のおでんも
逆輸入され定着していった。


本来、東京のおでんというのは、
他の煮ものと同じように、しょうゆで味も色も濃く
煮込んだもので、これがお多幸や、池之端の多古久
の味に残っている。


お多幸の暖簾を掲げる店は他にもあるが、
その中で、本店を名乗るのが、日本橋


この店は、以前は銀座、ソニービルの裏にあった店で、
あの界隈の再開発の波にのまれた恰好なのか、


2002年に今の日本橋へ移転している。


このソニービル裏の店を覚えておられる方も
少なからずあると思う。
あそこは戦後すぐの1948年開店だったそうな。
木造二階建ての狭い店に鈴なりに客が入り、
その雰囲気がまた、実に味があった。


カウンターの前にいくつものおでん鍋が並び、
注文を通す「ガン(がんもどき)、ツミ(つみれ)、
コン(こんにゃく)」なんという声も、また、よかった。


店は日本橋の交差点から中央通りを京橋方向へいき、
一本目、右、呉服橋方向へ曲がった路地にある。


日本橋までは東西線
地上へあがって、数分。


自動ドアを入り、一人、と、いうと、
カウンターが運よくあいており、すぐに座れる。
寒い日には、並ぶことも珍しくない。
今日は、6時半すぎ。やはりこういう店は早い時間
にこなければだめ、で、ある。


座ったら、迷うことなく、


「お酒、お燗で、一合!」


すると、


「熱燗ですか?」


中国系と思われるお姐さん。
(あ、やばい、、、。)


「いや、熱くしなくっていいです。」


「ぬる燗ですか?」


「いや、ぬるくもなく、普通で」


と、応えると、今一つ、お姐さんには理解されていない様子だが、、、


注文をカウンターへ伝えるのを聞いていると、、


「熱燗、ぬるめで」


は〜、考えた、のか、、。


だが、苦笑、で、ある。


今、燗酒のことを熱燗、と注文する人の方がほとんど、
と、いうこと、なのであろう。


熱くもなく、ぬるくもない、普通、というのは
存在しないのであろうか。


好みの問題なので熱燗が本当に好きな方を否定するつもりは
さらさらないが、私は燗酒は普通の温度、上燗がうまいと
思っている。


燗酒といえば、自動的に熱燗、と、いうのは
勘弁してほしい。


本来燗酒といえば、熱くもなくぬるくもないもので
あったはずだし、こんな質問をせずに、黙って
上燗を出してくれるところも、今の東京でもむろん少なからずある。


ともあれ。


お燗をつけてくれるお兄さんはわかっているのであろう、
上燗のお酒がきて、おでんだ。


つみれ、すじ、ちくわぶ、それから、大根。


と、つみれが切れている、と。


じゃあ、代わりに、がんも。




どれもうまいが、大根がよく味が染みて、よい。
がんもも、手作りなのか、しっかりした噛み応えで、
うまい。


次は?


ここは、芋、里芋が、ある。
里芋がおでんに入るのは、味噌を付けて食べていた
あの田楽、からの名残、で、あろうか。


落語・替り目でも芋を頼んでいる。


それから、玉子とさつま揚げ。





それから、お酒をもう一本。
(もう、温度をぐずぐずいうのが、面倒くさくなっている。
なんでもいいです。)


里芋は海老芋であろうか。
濃厚なうまみ。


さて、仕上げ。


半豆飯(はんとうめし)。


メニューにも載っているが、半分の豆腐を
茶飯にのせたもの。





そうとうに、B級であるが、これをかき混ぜて、
食べる。


なぜだか、昔から東京のおでんやのご飯は、ちょうゆの色が
ちょいとついた茶飯。
これに、ここのおでんのつゆが染みた豆腐の味が行き渡り、
ばかうま。





腹一杯。


ご馳走様。





なんだかんだいっても、やっぱり、東京の冬は
お多幸のおでんが欠かせない。






中央区日本橋2-2-3 お多幸ビル
03-3243-8282