浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

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須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その18

引き続き、円朝師「牡丹灯籠」速記のこと。 明治17年に「牡丹灯籠」の速記が落語として初めて文字になり発売され高価であるにも関わらず、売れた。ちょっと速記について書いている。 速記というと国会などが思い浮かぶ。今は国会では本会議、予算委員会など…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その17

これで円朝師「真景累ヶ淵」と「怪談牡丹灯籠」のあらすじすべてを書き終わった。 二作のテキストに基づいた詳細な検討、考察はちょっと後に回すとするが、先に私の感想のようなものを書いてみたい。 「累ヶ淵」のところでも書いたが、こんなことでもないと…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その16

引き続き三遊亭円朝作「怪談牡丹灯籠」その2「お札はがし」。 新三郎が死んで葬られた。 こういう話はすぐに広まるもので、気味がわるいので近所の者もいなくなり、白翁堂勇斎(はくおうどうゆうさい)も神田の方に越していく。 伴蔵とおみね。ほとぼりも冷…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その15

引き続き「怪談牡丹灯籠」「お露と新三郎」。やはり、抜群の名作で傑作。詳細に書いている。 新三郎の家。お盆の13日。「夜もよほどふけまして」カラーン、コローンと下駄の音がする。 二人の女が歩いている。先に歩いているのは牡丹の灯篭を下げた30ぐらい…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その14

引き続き、円朝作「怪談牡丹灯籠」。 二つのお話がパラレルに進行する構成だが、そのうちの飯島平左衛門家に奉公をした孝助のストーリーを追っている。 登場人物を整理しよう。・飯島平左衛門…旗本、孝助の親の仇(かたき)。心ひそかに孝助に 討たれてやろ…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その13

三遊亭円朝作「真景累ヶ淵」。 いよいよ、大詰。 尼になっていたお熊の懺悔。この部分だけ、歌丸師のDVD、CDが出ている。 この尼さんは実に、新吉の母が患っていた時に深川から深見新左衛門家へ手伝いにきていたお熊であった。新左衛門の手がついて生ま…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その12

引き続き、円朝作「真景累ヶ淵」。 昨日は「豊志賀の死」まで。なかなかよくできている。怖い、がおもしろい。ストーリーテラーの円朝の面目躍如であろう。 その4「お久殺し」豊志賀の死後、新吉はお久と下総へ駆け落ちする。下総の羽生村。今の常総市羽生…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その11

さて、一週お休みをいただいたが、円朝師。 いよいよ佳境、本題、で、ある。 円朝師の代表作「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)」と「怪談牡丹灯籠(かいだんぼたんどうろう)」についてテキストに沿ってみていこう。やはり円朝といえばこの二作品に触れ…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その10

円朝師。 明治新政府の意向、寄席管理、民衆啓蒙、に沿って、教導職になり、出世美談「塩原多助一代記」を作り、歌舞伎にもなり、明治天皇の前で口演、修身の教科書にも載る。 自ら落語家は“賤業”などともいい、明治初年には“猥褻”などともいわれていた落語…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その9

ご一新になり、明治初期の新政府の寄席規制。これに伴う、円朝師の素噺への転向などについて書いてきた。 江戸期の寄席や噺そのものが一体どんなものであったのか。“薄暗い”、“猥褻”なんというのがキーワードとして出てくるが、実際の史料は須田先生の研究か…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その8

さて、円朝師の個人史。 明治元年(1868年)となった。「ご一新」。明治維新、で、ある。 ただ、そうはいっても庶民の生活は続き、寄席は毎日幕を開け、円朝も高座に出演続けている。 また引越し。ところは、浅草旅籠町一丁目代地。今も代地町会があるが、柳…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その7

円朝師の個人史を続ける。 師匠の二代目三遊亭円生との確執を越えて芝居噺でさらに売れた。 文久元年(1861年)円朝23歳。浅草の表店(おもてだな)に転居。翌年、寝込んでいた師円生はついに他界。同年、慕っていた兄の玄正(永泉)も亡くなる。 いよいよ、…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その6

円朝師の人生を須田先生のテキストに沿って振り返っている。 おもしろいし、幕末期の江戸庶民の状況が生に近い形で伝わると思うので、細かく書かせていただいている。 円朝師のティーンエイジ、噺家修行中。17歳、安政2年(1855年)の頃。 円朝師の伝記類に…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その5

テキストからは少し離れているが、 一つの噺の完成は、いつなのかという話。 その例として「芝浜」のお仕舞の部分のこと。 以前までは小利口なしっかり者の内儀(かみ)さんとして描くのが一般的であった。(よく言えば内助の功か。) これは後味がわるいと…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その3

引き続き「三遊亭円朝と民衆世界」。 (さらに先生の一つ前の成果「悪党の十九世紀」(青木書店) もテキストである。) まず前提として、幕末から明治0年代というのは、日本全国、そうとうに治安が悪かったということである。具体的には、物取り、殺人、放…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その2

引き続き、須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」。 まあ、バラバラとしているようだが、自分としては一貫性というのかある程度の筋はある。私の父方は東京大井町の出で、明治の初め曾祖父までさかのぼるとあのあたりの百姓で、江戸の頃から苗字を持って田畑もそ…

須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」その1

表題の須田努著「三遊亭円朝と民衆世界」(有志舎)という本を読んだ。 この本、ご存知の方は、ほぼいなかろう。 不勉強ながら私も知らなかった。 17年8月の出版。さほど前ではない。 日本近世から近代史の専門書といってよい。著者の須田努氏は1959年(昭和…

五街道雲助 蔵出し・浅草見番 その3

三回目になってしまったが『山崎屋』の 『よかちょろ』まできた。『山崎屋』の本編。昨日も書いたが、この噺、なかなかおもしろい。お。そうであった、本編の前に、雲助師は演っていなかったが、 大旦那と若旦那の会話でおもしろいところがある。 (談志家元…

五街道雲助蔵出し・浅草見番 その2

引き続き、雲助師匠の 蔵出し・浅草見番。『品川心中』であった。この噺のポイントを書いている。海へ出る場面があって、桟橋。 本やの金蔵はお定まりに、先に飛び込み、 お染は心中の原因になった金の工面がついて、 「失礼」といって、女郎屋へ戻ってしま…

五街道雲助 蔵出し・浅草見番 その1

3月30日(土) さて。 土曜日。 今日は珍しく、友人に誘われて、落語会へ行く。 五街道雲助師匠。 場所は浅草見番。 落語がホームグランドだ、と言っていながら、 寄席はもとより、落語会、独演会にも まったく行っていない。 むろん、以前は習っていたくら…

怪談噺・乳房榎 その2

さて。 赤坂大歌舞伎『乳房榎』から、その原作である 三遊亭圓朝作、落語としての怪談噺『乳房榎』について、 書いている。 この噺のテーマはなんであろうか。 この問いをもう一度考えてみたい。 前回、テーマはない、と、書いた。 これは、芝居を観ての偽ら…

怪談噺・乳房榎 その2

さて。 赤坂大歌舞伎『乳房榎』から、その原作である 三遊亭圓朝作、落語としての怪談噺『乳房榎』について、 書いている。 この噺のテーマはなんであろうか。 この問いをもう一度考えてみたい。 前回、テーマはない、と、書いた。 これは、芝居を観ての偽ら…

怪談噺・乳房榎 その1

さて。 赤坂大歌舞伎『乳房榎』に引き続いて、 三遊亭圓朝作、落語としての怪談噺『乳房榎』について、書いてみたい。 以下、お話そのものを書いてしまい、いわゆるネタばれになる 部分もあるので、今後この芝居を観たいと思われる方は、 ご注意いただきたい…

江戸期の落語 その1

12月8日(土)深夜さて。土曜日。 今日は一日、調べもの。内容は落語、それも初期の。落語というのは、寛政10年(1798年)下谷稲荷で 初代可楽(当時山生亭花楽)らが寄席を初めて開いた。 一応のところ、これが現代に続く落語のスタート といってよいのだと…

落語・講談・歌舞伎

さて。 今日は、ちょっと考えたこと。 この、9、10、11月と 三月続けて、国立劇場に歌舞伎を観にいっているし、 ここ数年でも初芝居を決めて観たり、 できるだけ歌舞伎を観るようにしてきた。 また、黙阿弥ものが気に入り、関連する書籍など 読んだりも…

快楽亭ブラック著『立川談志の正体』 その2

引続き、快楽亭ブラック著『立川談志の正体』。 まあ、本の紹介なんぞ、おもしろいから、 読んでみて、が趣旨。 ぐずぐず書くことはないのではある。 が、やはり、この本を薦めるのは、快楽亭ブラックという 落語家が好きで、それを書きたかったということな…

快楽亭ブラック著『立川談志の正体』 その1

今日は、少し、落語の話。 それも、ちょっとマニアックな話、かも知れない。 先頃出版された、表題の快楽亭ブラック著『立川談志の正体』 で、ある。 結論からいうと、随分とおもしろかった。 おもしろかったのだが、内儀(かみ)さんに話したら そうとうマ…

談志がシンダ。10 〜落語とはなにか? 了

さて。 【談志がシンダ】シリーズから、落語とはなにかを 考えてきた。 いろいろ、横道にそれてしまったが、 落語は江戸後期、文化文政時代に生まれたもので そこに流れる、人生観はそうとうに成熟しているものである、 ということ。 これは、談志家元が亡く…

談志がシンダ。9 〜落語とはなにか?「坂の上の雲から」

さて。 もう少し早く終わるつもりであったのだが、 書き始めると、書くべきことが随分と出てきて、 長くなっている。 やはり、私が長年考えていることなので、 どうしても、長くなる。 (書きながら考えている、というのもあるのだが。) お許しを。 と、言…

談志がシンダ。8 〜落語とはなにか?明治以降の落語

引き続き、落語とはなにか?を考えている。 前回、明治以降の落語、あるいは、 歌舞伎などを含めてもよいと思われるが、 時代が変わっても、滅びたわけではなかったということを書いた。 これは、文化文政期を中心とする江戸時代後期の江戸町民文化、 =江戸…