浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草・弁天山美家古寿司 その2

4469号

引き続き、浅草[弁天山美家古寿司]。

にぎりに入って、おぼろをはさんでくれた
平貝

今日、ケースの中の平貝をよくよく見て
気が付いたのだが、これも生ではない。
酢に漬けているよう。

若親方は、内儀さんの好きなおぼろを
たっぷり挟んでくれた。

平貝は、サクサク。

おぼろというのは、毎度書いているが内儀さんは
なぜか好んでいる。
芝海老や白身をほぐして甘く味付けをしたもの。

子供の頃に弁当などの定番で、どの家庭にもあった、
でんぶに近いが、あそこまでは甘くない。

本寸法の江戸前鮨を標榜する鮨やでは今も
作っているところも多くはなかろうがあることは
ある。
海苔巻に入れたり、小肌などの酢〆のものに
はさんで握ったりする。

やはり、平貝も酢に漬けてあるのでおぼろが
登場する、というわけであろう。

ただ、平貝から酢を感じるのはほんのり。

今日は、なんだかあるねた食べ尽くし。

次は、これ。

煮いか。
先の、塩辛になったするめいか。
生のいかをにぎり鮨で食べるようになったのは
意外に新しく、明治になってからと聞く。
おそらく江戸前のすみいかであったのだろう。
火を通した煮いかはやはり古い形といってよいのだろう。
派手でもなく、置いている鮨やも多くはない。
通常、この甘いたれを塗る。

そして、ぶり。

これは、生であろう。
江戸前正統を看板にするこの店でぶりは正しいのか?。

ぶり、というのは、基本は西日本の魚であった。
民俗学では正月の儀礼魚。東日本の鮭、西日本のぶり。
お歳暮に送られていた。
東西の境界はこの場合は、糸魚川構造線。

今は温暖化で北海道函館などで大量にあがっているが
以前でも東京湾、房総あたりでも獲れないことはなかった
と思われる。
まあ、東京でにぎりの鮨にすることもあった、のであろう。

内儀さんの絶大なる希望で海老。

これはゆでて甘酢に漬けてあり、やっぱり
おぼろをはさんでよいたね。

ゆで置きして時間が経つと、パサパサになる。
この状態で流通をもしているので、気を付けないと
いけない。
甘酢に漬けるとしっとり、ぷりぷりが長持ちする
ということか。
完全にゆで立てで粗熱が取れたらにぎるところも
あるのだが、それが最もよいのかもしれぬ。

そして、これ。

なんであるか、おわかりになろうか。煮はま。

煮蛤。
煮はまはやはりこのくらい大きくないとにぎりには
ならない。ご承知のようにかなり値が張る。

今日は、塗った甘いたれがかなりうまい。
思わず、若親方に聞いてしまった。出来立て?。
その通り、とのこと。香りが違う。

まぐろ。中とろ。

見た目、赤身かと思ったら中とろとのこと。
柔らかく、あまく、極上。

そして、づけまぐろ。

おお。
これも、中とろ。
あまく、溶けるような脂。

ここでもそうだが、最近づけは中とろのものを
用意しているところも増えているよう。
本来、づけというのは、赤身をしょうゆ漬けに
するものであった。元来は足の速いまぐろの
日持ちをよくするため、幕末、馬喰町あたりの
鮨やが始めたと聞く。
冷蔵設備が普及し、次第にづけは見なくなった。
だが、再度、今度は、日持ちではなく、
うまいからづけにされるようになった。
しょうゆのアミノ酸が加わり赤身がねっとりと
あまくなるのである。

そして、拵え方のよる優劣もあろうが、もったいない
ようだが、さらに中とろの方が、確実にうまい。

さて、終盤。

海苔巻。

干瓢巻。これにも毎度のこと、
おぼろを入れ、右のものには、先ほどの
出来立ての甘いたれを塗ってくれた。

そして、これも内儀さんの希望の玉子焼き。

もちろん、これにもおぼろ。

なんだかおぼろばかり食べにきたよう。
こんなにおぼろの好きな客というのは、
この店でも、なかなかいなかろう。

玉子焼きは、もちろん江戸前鮨の玉子焼き。
鶏卵が貴重だった頃、嵩(かさ)増しのため
海老やら白身をほぐしたもの(味を付けていない
おぼろの繊維をさらにほぐしたもの。)を
混ぜて焼いた。
味は、お節の伊達巻が近かろう。
むろん、今はご存知の嵩増ししない厚焼き
玉子焼きが主流。

以上。
まさしく[美家古寿司]堪能。

勘定は26,620円也。
ご馳走様でした。
今年は、最後かな。よいお年を。

 

弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

 

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