浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



東日本橋・あひ鴨一品・鳥安 その1

4462号

12月2日(土)夜

さあ、また鍋!。
どうせなら、かためて行っちゃえ?!。

予約をしていたのはこちらの方が先。
なのだが、なかなか、予約が取れない、ので、ある。

日本橋、あひ鴨一品、鴨すき焼きの[鳥安]。

創業明治5年(1872年)。
まだまだ、戊辰戦争後の治安も落ち着かぬ明治0年代。
江戸から東京と名を変えた、東京。
日本橋区米澤町三丁目に店を開いた。(正確には日本橋区
明治11年から。)
ちょうど、この年の12月3日が、明治6年の1月1日とされた。
太陰暦、旧暦から西欧同様の太陽暦への改暦。

今、なんでこんなところに、と思えるような、隅田川っ縁の
地下鉄の駅からも遠い辺鄙な場所に思われるかもしれぬ。
コンビニもそばにない。
マンション街という感じであろうか。
夜になると、道も薄暗い。人通りも少ない。

歴史を振り返らなければいけない。

ここは、両国橋の西詰。以前はもう少し南、つまり
こちら側に掛かっていた。
江戸期、この橋の東西の袂(たもと)は、広小路と
いって、広場、火避け地として開けてあった。

そして、この広場は同時に、盛り場でもあった。
常設のものはいけないが、仮設であれば、芝居小屋
も作れた。その他、見世物小屋、床店(とこみせ)などと
いったが、まあ、様々な屋台の類。(寅さんのテキヤ
テリトリーである。)
つまり、年がら年中お祭り、縁日をやっているような場所。
ほんとうは、両国橋のこちら、西側が両国と呼ばれ、
川向うを呼ぶ場合は、東を付けて東両国と言っていた。

そして、広場の周りの町も当然客商売で、水茶屋=
いわゆる茶店。だが、高級で、見栄えのよい、
女の子を揃えて接待をさせる商売。まあ、茶店
いうよりは、今の感覚ではキャバクラ?、いや、
もっと高級?。女の子は当時の美人画にも描かれる
ほどの超人気者!アイドルであった。

ともかく、江戸期はそんなところ。
だが、明治に入ると、新政府から風紀上よろしくないと
広小路の広場のウゾウムゾウは取り払いを命じられ、
一応のところなくなった。
だが、まだ、余韻はあったのであろう。
正しく、私も時代考証はできていないが、
圓生師の「両国八景」という枕のような噺がある。
いつの時代かは明確ではないが、おそらく明治、
ひょっとすると大正あたり、両国界隈の様々な
屋台店の様子を話している。

で、両国広小路に接していたここ米澤町には
明治初期にもそのまま、茶屋や料理やがあったわけで、
その一角にこの店は暖簾をあげたということになると
考えられる。
そして、150年の時を経て、町の様相はまったく
変わってしまった。広場は普通の町になり、むしろ、
この店だけよくここに残ったものであると
思った方がよいだろう。

18時の予約。
ここも、拙亭のある元浅草からそう遠くはない。

入口。

玄関。

入って、ここは靴は脱がない。

お姐さん(女将さん?)に名乗って、奥へ。
エレベエーターでお二階へ、と。

基本、ここは個室で、テーブルか掘り炬燵式の席。
二階は個室のテーブル。

オリジナルの鳥安デザインのコースターがかわいい。

ビールをもらう。

エビスのオランジャというのがあったので
もらってみた。ちょっとオレンジの香り。
鴨とオレンジはフレンチなどでは縁がある。

鴨すき焼きのコース、12000円也、一つ。

前菜。

左上、五目豆。中央、鮭(塩麹漬け?)。右上、
あひ鴨味噌漬け。左下、粟麩田楽。右下、むかご真薯。

乙、であり、うまい。

割り箸の紙留めも、小さな鳥安デザイン。

こういうところがお洒落、なので、ある。

焜炉(こんろ)がきた。

もちろん炭火で、使い込んだ鉄鍋。

小さな土鍋がくる。

このデザインもおもしろい。開けると、吸い物。

三つ葉が入り、白いのが鶏ささ身、茶色いのはなめこ
よい出汁。

もう一皿。

左、鶏ささみの蒸し鶏がメインで、エリンギ、里芋、
生麩の紅葉、銀杏。

これは鍋の取り皿だが、こんもりと丸くおろし。
少し、しょうゆ。
ここの鴨鍋は、しょうゆおろしで食べる。
これが江戸前の味であろう。

鍋の野菜と肉がきた。

春菊、ねぎ、ピーマン、椎茸。
鴨肉は、脂身、胸、もも、ハツ、レバー、
つくね用の挽肉。

焼き始めるが、

ここもすべてお姐さんが焼いてくれる。


つづく


鳥安


03-3862-4008
中央区日本橋2-11-7

 

 

 

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