浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



東日本橋・あひ鴨一品・鳥安 その2

4463号

引き続き、鴨すき焼きの東日本橋[鳥安]。

前菜やお吸い物が一通り終わって、鴨鍋へ。

お姐さんが焼き始める。

脂身から先に脂を出し、つくねと胸肉、ねぎ。

テーブルでフルサービスの店は、
先日の人形町[今半]もそうであったが、
お姐さんは大切な料理人である。
まさに、プロの仕事。

鉄鍋上で、書いている通り、ここは味付けなしで焼く。
鴨鍋というと、文字通りすき焼きのように甘辛の
味付けをする形もある。
だが私は鴨の食べ方としてはこちらの方がうまいと
思っている。

つくねは小さなハンバーグのように小判型にし、鉄鍋に
押し付けて焼いている。

一皿目、焼けた。

先に出されていた丸い大根おろしの小皿に
しょうゆを入れたところに、お姐さんが
入れてくれる。
手前によい塩梅に焦げ目の入ったねぎと胸肉。

鴨は、やはり、シンプルにしょうゆのみというのが
最もうまいと思うのである。
鴨脂と甘くするよりも濃口しょうゆだけの相性のよさ、
で、あろうか。

そして、見てほしいのは、このねぎ。
太さ、で、ある。
明らかに、スーパーで売っているものとは違っている。
そして昨日の[いせ源]も同様であったが、
この太さにぴしっと揃っている。
確認したわけではないが、これも浅草 [葱善

の千住葱ではなかろうか。
[葱善]のねぎは藁縄できれいな白いねぎを
大きな束にして店に入れている。
森下の桜鍋[みの家]の板場でこの束を見たことがある。
そばやはむろんのこと、東京の伝統的老舗料理には
白い長ねぎは必須である。
京料理には京野菜であろうが、江戸料理には江戸野菜。
数は多くはないが、必要欠くべからざる大切なもの
である。

二皿目。

手前が椎茸。上左がもも肉、そして右がつくね。
一口のつくねには、しっかり焦げ目。

この椎茸もよい。
通常のものを半分に切ったもの。肉厚。
十分に鴨の脂を吸っている。

これらをおろしじょうゆのみで食べる。
シンプル、素朴といってもよいだろう。

鴨肉も然りであるが、このしょうゆのみや
しょうゆの甘辛以外にも様々な味付けはできる。
だが、創業以来150年の歴史を越えて、この味に
なっているのは明らかに意味があろう。
もちろん、伝統もあろうが、これが、最もうまい、
ので、ある。
店が選び、客が選んできた味。

三皿目。

また、胸肉と、ねぎ。

四皿目。

私はおろしはまだあるのだが、内儀(かみ)さんは
こういうものもバクバク食べてしまう。
時を移さず、お姐さんが新しいものを足してくれた。
これもきれいに半球に盛っている。

手前、ピーマン、つくねと、右レバー。
野菜を手前に置くのは決まっているよう。

ピーマンもペラペラではなく、しっかりと肉厚。
ピーマンはご存知の通り、油(脂)との相性が
とてもよいのだが、明らかに江戸からの野菜ではない。
農水省のページによれば、

日本に入ってきたのは、明治だが、一般に今の
大きさのものが普及したのは、戦後とのこと。
ここの鍋に入ったのはいつなのかわからぬが、
まあ、戦後も70年たっているので、十二分に
定着しているのであろう。

そろそろ終盤。
五皿目。

ねぎ、肉、つくね、椎茸。

六皿目。
これが、最後のよう。

すぐに火の通る春菊が最後。
そして、右が、最初に脂を出すのに入れた
脂身。
脂身は脂は抜けて、カリカリ。
これも、決まり、で、ある。

だが、春菊以外は食べない。

で、ご飯。
そぼろか、焼き飯も選べるはずが、今日は
どちらもできない、とのこと。
残念。

ご飯と赤だし、お新香。

赤だしは三つ葉と木綿豆腐。味は濃厚。
鴨の強い脂を食べてきたので、こうなるのであろう。

そして、おろしは、ご飯のために残して置いたのである。
これ、意外に大事。
おかずなしで、ご飯を食べなければいけない。
いつも、後悔する、ので、ある。

ご飯におろしをぶっかけてもよい。

デザート。

これもいつも決まっているが、
黒ごまのプリン。のっているのは黒豆。

ここまで。

会計は飲み物込みで、二人で34,800円。

うまかった。まさに[鳥安]堪能。
ご馳走様でした。


鳥安


03-3862-4008
中央区日本橋2-11-7

 

 

 

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