浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



サーモンちらし鮨

4378号

7月23日(日)夜

サーモンが食いたくなった。

サーモン!?。
回転ずしの売り上げNO.1であったか。

江戸前鮨を金看板にする、私の行く浅草
[弁天山美家古寿司]にはもちろんない。

生の鮭、サーモンを食べる習慣は日本では
一般には、なかった。
一部北海道で、ルイベといって、凍ったものを
食べるということはあったが。

私の子供の頃は東京の鮨やはもちろん、
魚やにも、生で食べられる鮭、サーモンの類は
なかったはずである。

いつ頃からなのであろうか。
平成に入った頃か。
憶えていないが。

私自身、回転ずしにはほぼ行かないことに
していたので、サーモンが出てきたのも
よく知らず、鮨としては、邪道というイメージも
あって、どこかで見かけても食べることは、
ほとんどなかった。

だが、30年間まったく食べないというわけにもいかない。
食べてみると、意外に、これが、うまい。
江戸前にぎり鮨としては、邪道ではあるが、
うまいものは、うまい。

今は、色々なものが出回ってきたが、当初は
ノルウェー産アトランティックサーモンのみ
であったのであろう。

欧米では、サーモンは燻製で昔から食べていた。
これはホテルなど、高級な洋食として日本へも
入ってきていた。
このあたりに普及する下地があったのであろう。

アトランティックサーモンは、日本名は大西洋鮭
という。
サーモンというとハイカラ(?)だが、まあ、鮭である。

ノルウェー産は養殖もの。
ノルウェーの大西洋鮭の養殖は産業として古くから
確立されており、それが日本に入ってきた。

その後、南米チリなどで日本の商社により養殖された
ニジマスが、サーモントラウトという名前で
やはり生食用として出回り始めた。
また、国内でもギンザケ、サクラマスニジマス
あるいは改良された種を生食用に養殖生産され、出回り
始めていると聞く。
ざっくり、今の日本の生食用の鮭鱒類はこんな感じで
当たっていようか。

うまいものだから、いろんな選択肢が出てくるのは
よいことであろう。

元来、鮭といえば、塩漬けの荒巻鮭で切り身は
100円を切る安いものであった。
それが、生食できるものであれば、高価格で売れる。
生産者にとってもわるいことではない。

さて、どうやって食べようか。

先日の鉄火丼と同様、酢飯にのっけて、ちらし
でよいか。
まぐろは鉄火丼だが、その他の種だと、東京では
ちらし寿司と言っていた。
全国的には、細かい具材を混ぜ込んだものだが。

吉池へ。

複数種類あるかと思ったが、
サーモンは、例のもの一種類しかなかった。
こんなものか。

一番安いのを。

ノルウェー産アトランティックサーモン。
619円也。
まぐろ赤身よりは高く、中トロ程度か。

今日は生わさびは買おうか。
吉池の地下にもある。値段はどっこいだが、
経験的には松坂屋の方がものがよさそう。
1000円ほどのもの。

帰宅、作る。

前回同様、飯を炊き、赤酢の酢飯を作る。

わさびの皮をむいて、おろす。

丼に酢飯を盛り、もみ海苔を敷き、切ったサーモンを
のせる。
上から、細く切った海苔を散らす。
鉄火丼とまったく一緒。

出来上がり。

ビールを開ける。

わさびを溶いて、食べる。

なかなか、うまい。
前に、赤酢の酢飯でサーモンのにぎりを
やったこともあるが、赤酢にもよく合う。
わさびじょうゆ、赤酢の酢飯、海苔の組み合わせは
まぐろ同様、絶妙であろう。

先に書いたように、正統江戸前鮨にサーモンは
ないが、十二分に成立している。
回転ずしでNO1.というのはさもありなん。

今日も、ノルウェー産しかなかったが、
国内で養殖されたものは、実際には、まだまだ
東京の小売りまではまわってこない。
国内の養殖をされている方が、言っていたが、
どう考えても、輸入物は、鮮度に劣る。
国内のものはそこも売り、と。

ノルウェー産はサーモンの鮨を広めた功績は
あるのだろうが、鮨種としての、サーモン、
鮭類は、まだまだ品質向上、うまくなるはず。
開拓の余地はある。

考えてみれば、〆た(熟(な)れた?)ものだが、
富山の鱒のすしも伝統的にはあった。

江戸前の正統ではないかもしれぬが、鮨としては邪道ではない、
サーモン・鮭鱒の鮨。まだまだこれからであろう。

 

 

 

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