浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



親子丼

4379号

7月24日(月)第一食

さて、親子丼、で、ある。
ご存知。

結局、親子丼には入れなかったのだが、海苔と続いている。
鉄火丼と、サーモンのちらしに欠かせない、海苔。

ご近所で、毎度お世話になっている、元浅草[砂場]。
いつもは昼にかつ丼と盛りそばのセットだが、
切れている場合、親子丼になる。

で、以前から疑問だったのが、かつ丼には細切りの
海苔をまぶさないのだが、親子には海苔をまぶす。
いったいこの違いはなんであろうか、と。

ふと、これ、気が付いたのである。
むろん、聞いたわけでもないので、私の推論。
親子は、和食で、かつ丼は半分、洋食だから。

海苔というのは、江戸期、江戸湾で養殖が始まった。
江戸発祥であり、江戸名物の代表でも、あった。
そして、明治から大正の頃まで、庶民が毎日
食べられるものではなく、高級品であった。
また、軽いので、江戸・東京土産の代表でもあった。

東京のそばやでは、もりそばは海苔がのらないが、
海苔がのると、ざるそばと、名前を変えて、値があがる。
これなどは、海苔が高級品であった頃の名残
といってよいのではなかろうか。

つまり、今考える以上に海苔の地位が高く、
海苔をのせることに特別の意味があった、と。

親子丼に海苔をのせるということには、親子の
地位の高さを物語っていたのではなかろうか。
前後関係を考えると、そばやには、先に親子丼が
あった。これが明治期、中頃?。この時点で、
そばやの親子には海苔がのっていた。
その後、半分洋食のかつ丼がそばやの品書きに加わった。
これが大正期。半分洋食なので、価値ある海苔は
のせなかった。こういう区別だったのでは、なかろうか。
むろん、仮説だが。

と、まあ、考えたのは、こんなことなのだが、
私の親子丼は、そばやではなく、どちらかといえば
料理や、軍鶏鍋や系が、イメージゾーン。

それで、赤だしを付けたいのである。
(そういえば、そばやで、親子やかつ丼を単体で
頼むと、味噌汁は付いたっけ?。)

なめこの赤だし。三つ葉を入れる。
と、すると、三つ葉は親子にものせる。
で、海苔はいならくなった、のである。

なめこと、三つ葉、鶏肉を買ってくる。
鶏肉は一口に切ったもの。

ご飯は冷凍のものがある。

小鍋に湯をわかし、鰹削り節で出汁を濃いめに取る。

濾して、なめこ投入。

火を通し、味噌を溶き入れる。

味噌は、八丁味噌と信州味噌半々。

赤だしは、うまみの少ない豆味噌の赤味噌だけでなく、
うまみを補うために米味噌の信州味噌と合わせる。
ここまでで置いておく。

玉ねぎ1/4をスライス。

丼鍋を用意。
一口に切った鶏肉、つゆを入れる。
つゆは、いつもの桃屋に水を加える。

一応、ちょっとなめて、つゆの濃さの味はみておく。
親子丼を頻繁に作るわけでもないので、この丼鍋の
サイズで、濃縮のつゆと、水の比率に勘が働かない。
過去に、濃すぎたことも、薄かったこともある。
大切である。

点火し、ふた。

煮えた。

玉子を二個割りほぐす。

玉ねぎ、鶏肉に火が通ったら、溶いた玉子の
半分を入れる、、、と、思ったのだが、
勢いあまって、2/3ほど入れてしまった。

すぐに再びふたをする。

ご飯を解凍、加熱し、丼に移しておく。
丼は、いつもの、いかにも蕎麦やにありそうなあれ。

ある程度、半熟まで、固まったら、残った玉子。

OK、これで終了。
もう加熱はしない。

このまま、丼のご飯へ。

この、丼鍋から、丼ご飯へ移すのが、鬼門で
あったのだが、あきらめた。

どのくらい玉子を固めておくのかにもよるが、
柔らかければ、きれいに移すのは、難しい。
だが、逆に、固まっていなければ、崩れることもない、
ともいえるのである。

まあ、実際には、ためらわず、すっと、移す、くらいしか
コツはないのだが。

三つ葉も切って、再加熱した赤だしと、親子に散らす。

漬物も出す。上野広小路[酒悦]の柴漬け。

出来上がり。

なめこの赤だしは、ちょっと濃いめで、上々。

後から入れた溶き玉子は、ほぼ加熱していないので
全体としては、玉子かけご飯状。
これが、ちょうどよく、うまい。

完全に固まった親子丼というのももちろんよいし、
固まっていれば、崩れにくい。

だが、親子丼、結局、これではなかろうか。
すべて固まっているわけではないので、
崩れる、崩れないも関係ない。
玉子かけご飯寄りの親子丼、これを最終形と
しようか。

 

 

 

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