浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



黒門町のこと~御徒町・らーめん・藪づか

4343号

5月1日(火)第一食、5月25日(木)第一食

さて、ここ、ご存知、で、あろうか。
担々麺が看板といってよい、のか。

場所は、またまた文字にしにくい。
住所は上野三丁目。旧町は上野東黒門町

例の南インド料理[アーンドラキッチン]の

一本南の通り。
上野黒門郵便局があったり、亀住稲荷という
お稲荷さんがある通り。

先に上野三丁目と書いたが、この通りは区境
なのである。この南側は、千代田区外神田五丁目。

先日、やっぱり台東区千代田区の境の
練塀町のことを書いた

ここも書いておきたい。
お付き合い願えれば幸いである。

ただ、ここは明治から区境は変わっていないので
問題はない。
では、なにかというと、旧町の黒門町黒門町のことは
まだ書いていなかったのではなかろうか。

私のようなオールド落語ファンであれば、八代目桂文楽師。
ここ黒門町に住んでいたので黒門町の師匠と呼ばれていた。
また、先に書いたように郵便局の名前に残っていたり、
区立黒門小学校というものまだある。(小椋佳氏母校。
小椋佳氏は東黒門町の生まれ育ちである。)むろん町会
の名前にも残っている。

まず、現代の地図。

そして江戸の地図も。

[藪づか]の場所と思われるところに星印を入れてみた。

江戸のこの頃は、下谷広小路の南、下谷御成街道沿いの
大名屋敷で鳥居丹波守(下野壬生藩三万石)上屋敷
この切絵図は、幕末文久2年(1863年)。時代によって
屋敷の主は変わっているようだが、やはり将軍が先祖の
墓参に訪れる寛永寺門前の重要な場所だからであろう、
基本的に普代有力家。
鳥居屋敷の東隣りの区画は南大門町下谷車坂町、
下谷長者町下谷を冠する町々。
鳥居屋敷の南は小笠原信濃守(豊前小倉藩十五万石)下屋敷
普代名門。

で、これが明治。まず下谷区明治36年1903年)。

明治になり、もちろん大名屋敷はなくなり、壬生藩邸・
鳥居屋敷は東側に合わせてやはり下谷区に。そして町名は
この屋敷の北に隣接した黒門町(上野東黒門町)に入った。

そして、神田区明治40年(1907年)。

小倉藩邸・小笠原屋敷からが神田区で亀住町。
この亀住町は、当然明治になって生まれたわけだが、特に
由来もなく、創作された町名のよう。おめでたいので亀と。
(意外に、明治初期に創作された町名には、おめでたい
ので、というのがある。浅草の寿町もその例。)
今、亀住稲荷というお稲荷さんが[藪づか]の前にあるが、
これは、江戸期には、小倉藩邸の屋敷神であったよう。
千代田区観光協会

屋敷がなくなってもお稲荷さんは残り、町名を取って
この名になったよう。

さて、こんなところがイントロダクション。
問題の黒門町である。
まず、江戸の地図に戻ってほしい。
縦長にあえて取った。

壬生藩邸の北の黒門町は、江戸期は正確には“新”が
付いて、新黒門町である。
そして少し離れて北、池之端仲町通りの入口に元黒門町とある。

さらに北、今の上野公園の入って向かって左、当時寛永寺
黒塗りの総門がありこれを黒門といっていた。
これが黒門町の由来と言われている。

黒門町と新黒門町。これはなに?。
これは文字通り、新旧のよう。
つまり、先に、池之端仲町通り入口が黒門のそばなので、
黒門町と名付けられた。
そして、その後、南側にも黒門町ができたので、南には
新を付け、北には元がついた。こういう経緯らしい。
どちらも東叡山(寛永寺)領という共通点があったよう。
(「江戸明治重ね地図」)
ともあれ、明治以降も新元の黒門町が引き継がれたのだが、
なぜか新の方が町名から落ちてしまった。

寛永寺の黒門が由来の黒門町だが、実際の黒門から、
明治以降の東西黒門町はそこそこ離れている。
ヘンだと思っていたのである。
しかし、なぜ元は残し、新を落としたのであろうか。
新の方が黒門町として江戸期から既にメジャーであった?。
大名屋敷を含んで大きくなったので新は不似合いだから
取ってしまおう、か?。

閑話休題
[藪づか]であった。開店は2018年。知らなかった。
私が知ったのは内儀(かみ)さんに聞いて。
しかし、担々麺を看板にするところが増えたものである。
カウンターだけで、坊主頭の寡黙なお兄さんのワンオペ。
たいへんそう。

ノーマルなラーメンもあり、汁なしもあるのだが、
汁なしは夜だけのよう。

5月1日、ノーマル担々麺に煮玉子。

白髪ねぎ、青味は小松菜。

麺は細め。

もう一回、5月25日。

まかないご飯付き、肉の載ったもの。

なかなか、うまい担々麺である。
辛みはさほど強くない。また胡麻もべら棒に強くはない。

これ、なにか複雑なスパイスを感じるのである。
ラー油唐辛子系、花椒ではない、あまり担々麺には
入れないものが入っている、のではなかろうか。
だが、それが、うまいし、クセになる。
佳店であろう。
愉しみ。

 

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台東区上野3-13-1 西武ビル1階

 

 

 

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