浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)
断腸亭料理日記本店
 

上野藪蕎麦

7月12日(木)夜

いつもの通り、五反田からの帰り道、
なにを食べようか、考える。

今日は暑いことは暑かったが、少しはまし、であった
かもしれない。

そばはどうだろうか。

あまりに灼熱の天気だと、そばという気にもならぬが
まだよいか。

上野[藪蕎麦]。

そうである。季節。あそこのサラダそばを
食べねばいけなかろう。

あれは、うまい。

ここは冬はかき南蛮、夏はサラダそばである。

私はいつも帰り道は山手線を御徒町で降りるのだが、
上野まで一駅乗り越す。

上野の[藪蕎麦]は距離的には、どうなのであろうか、
どちらも同じくらいかもしれぬ。

だが、上野駅は大きい。
山手線を降りてから、改札、どこの改札を出るのか
でも変わってくる。そして改札から店まで。

帰り道の山手線は、内回り先頭車両に近いところに乗る。
御徒町の北口で降りるからである。
最後尾に乗ってみたらどうか。
五反田から御徒町の山手線の内回りは、先頭車両の方が
混んでいる。後ろの方はすいているかもしれぬし、降りれば
店までも近いかもしれぬ。

案の定、五反田の最後尾はかなりすいており、
大崎で座れた。
その後もずっとすいている。
上野で降りて、最後尾から最も近い改札は不忍改札であった。
不忍改札を出ると、ガードの下に出る。
ガード下を少し歩き、丸井前の横断歩道を渡る。
やはりこのルートが最短であった。

丸井脇の通りを進み[藪蕎麦]到着。

7時半頃。

ウイークデーの夜は滅多に混まない。

カウンターもあいていたが、二人掛けのテーブルも
すすめられたので、座ってみる。

道々、なにを呑もうか考えてきた。
ここにはビールではなく、シャーベット状に凍らせた
一合枡入りの菊正という夏向きの選択肢もある。

うーん、どちらにしようか。
悩ましいが、今日はビール。エビスの中瓶にしよう。

つまみは?。

品書きを見ながら考える。

そばはサラダ蕎麦と決めてきている。

具沢山なので、軽いものでよいか。

じゃあ、板わさあたりか、な。

ビールがきて、


板わさ。



板わさの、蒲鉾の切り方というのは、
いつからこんな風になったのであろうか。

飾り切りなのはよいのだが、厚いということ。
ここだけではなく、他の東京のそばやでもこんな風に
切っていたのを見たことがあるような気がする。

板付きの蒲鉾というのは、ご存知の半円の変形、
いわゆる蒲鉾型である。

普通はいわゆる小口切りというのか、板を横にして
縦に真っすぐ切って、おかめそばの、まゆの形、蒲鉾型になる。

これをさらに板と同じ方向に半分に切っている。
だが、厚みはある。
そういう切り方である。(伝わっていようか?)

以前に山口県民であったか、東京の蒲鉾の切り方は
薄くてとてもダメ、というのをなにかのTVで視たことがあった。

科学的にも蒲鉾というのは厚く切った方が、
魚の旨みを感じやすいらしい。

同じ蒲鉾の量でも、厚みを感じやすい切り方。
そうなのではなかろうか。

どこか、蒲鉾やさんが提案でもしているのであろうか。

つまみながら呑んでいると、サラダそばが、きた。

お姐さんが、つゆと、お好みでドレッシングをかけて、という。

そばつゆのうえにドレッシングもついている。

もちろんドレッシングも私はかける。

別盛になっている具も全てのせて、よく混ぜる。

ドレッシングの酸味はおさえてあるので、男でも平気。
うまいもんである。
鴨肉や芝海老天も入っている。

真夏にはせいろでも、もったりする。
このくらいさっぱり食べられるのは、ありがたい。

そばや、うどんや、それも老舗でドレッシングをかける
サラダそばなるものを出すところは、そう多くはあるまい。

そもそもそばというものは、そばの香りを味わうもの
などいわれるので、こういうものはご法度と考える人も
あろう。そういう意味ではカレー南蛮なども然りか。

しかし、私などにはそういうこだわりはあまりない。
いやまあ、店にもよるか。
例えば、藪蕎麦でもストイックな浅草並木などでは場違い。
江戸らしい雰囲気が台無しである。(あの店は絶対に出さなかろうが。)
だが、上野であれば、OK。
ただ奇を衒っただけのものは論外だが、味はこなれており十分にうまい。
そばにはこういうバリエーションがあってもなんら問題は
ないと思うのである。







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