浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)
断腸亭料理日記本店
 

上野藪蕎麦


7月11日(火)夜


火曜日。


夜、なにを食べようか。


暑いし、そばかな。


上野の[藪]そば。


ここ前回きたのは、5月であった。


ちょうどよいペースかもしれない。


山手線を五反田で乗って、いつも降りる御徒町を越して
上野で降りる。


中央改札を出て真っ直ぐ。


丸井前の交差点を渡って、丸井右脇の通りに入る。


おでんやの[志んせい]やら、パチンコや、やらを右に見て
上野[藪]そばの角まで。


自動ドアを開けて入る。


今日のこの時刻、一階は空席もちらほら。


カウンターに掛ける。


くの字のカウンターも二人ほど。


酒は、もう完全にシャーベット状に凍らせた
菊正のみぞれ酒の陽気で、ある。


品書きを見て、肴はなにがよかろう。


みぞれ酒も他ではあまり見ないが、
ここは酒の肴も比較的豊富、で、ある。


新しいものもよく追加される。


同じ藪でも、本家に近い、三藪はほぼ変わらない。
ストイックなくらい。
ポリシーの違いであろう。


居酒屋ではないので、そちらにばかり力が入っているのも
違うと思うが、ちょいと目新しい気の利いたものが
あるのはうれしい。


このバランスがここは絶妙なのかもしれぬ。


それで、今日は、まぐろやまかけ。


蕎麦は、ここにくる道々、考えてきたのだが、
サラダ蕎麦。


今日は、呑んだ後にしたいので、頼むのは
後にする。


みぞれ酒がきた。



5月にきた時にもこれをもらったが、
気温のせいか、まだ固く、なかなかとけずに呑むのに
時間がかかった。


今日は逆に、随分と溶け気味。


升。



黒い漆塗。


上野藪の印(しるし)がよい表情ではないか。


今でいう、ロゴタイプのデザインということなのだと思うのだが
いつ、誰がこれを作ったのであろうか。
ひょっとすると、昔風に今のデザイナーわざわざ作ったのか。


「藪」は楷書といってよいかろう。
縦に「上野」は細めのちょっと隷書のような書体。
上が斜めに曲がっているのがよい。


やまかけがきた。



ちょっと、中トロのところもある。


しかし、盛り付けがよいではないか。


もみ海苔を重ねて、その上にわさびをのせているところ。


しょうゆをかけ回し、全部を混ぜて、食べる。


うまいもんである。


呑み終わり、食べ終わりが見えてきたところで、
サラダ蕎麦を頼む。


ここの品書きの表紙に写真入りで置かれているので
“おすすめ”なのであろう。


ちょうど、私が頼んだすぐ後に、もう一人、頼んでいる声が
聞こえたのだが、これ、どのくらいの人が頼むのか。


おそらくそう多くはあるまい。


ストイックな蕎麦ファンの方であれば、
眉をひそめるのではなかろうか。
ドレッシングをかけて食べる蕎麦なんて。


私などは、今も多少の違和感は感じなくもないが
うまいので、よいではないか、と思って
好んで食べている。


きた。



こんな感じである。


具と蕎麦は別盛り。
白いフレンチドレッシングとそばつゆが
別になっている。


蕎麦の方に、具を全部のせでドレッシングも
そばつゆも全部かけて、




さらにこれを全部混ぜ合わせて、食べる。


肉は鴨。
天ぷらのようなのは、芝海老天。


ドレッシングの酸味、蕎麦の歯ざわりが心地よい。


これが、粋なのか、野暮なのか。
毎度の議論だが。


一般論とすれば、野暮であろう。


野暮は野暮だが、上野[藪]だから許されるような気もしている。


ここは三藪とも違う。(サラダそばを“絶対”出さない)
山手の“趣味蕎麦”でもない。(まず出さない)
あるいは中目黒あたりのカフェ風のお洒落な
蕎麦ダイニングでもない。(おそらく出す)


老舗でありながら、微妙なポジションなのかもしれぬ。





台東区上野6-9-16
03-3831-4728




※明日、諸事情によりお休みさせていただきます。m(__)m