浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



箱根塔ノ沢・福住楼 その5

dancyotei2014-12-29

12月21日(日)



引き続き[福住楼]二日目。



夕食。



先付。



あんきもともずく酢、右はふぐの皮の煮凝り。



造り。





鯛、まぐろ、海老、手前は昨日もあった、やがら、か。



鍋。



開けると、




なんと、活きた、鮑。

蒸し焼きになる。

刺身をつまんでいると、火が通った。

バターを落としてナイフで切る。



身もむろんうまいが、肝もまた、よい。

さて。

二日目の夜は、鍋の二回戦。

牛すき焼き、なのだがピンボケ。

煮えるのを待って、焼物。



鰆(さわら)の幽庵焼き。



幽庵焼き、と、いうのは酒、しょうゆ、味醂

柚子の香りをつけたつゆに漬けこんで焼いたもの。

上品である。

揚げ物。



これは、ふぐ。

煮物。



煮魚、なのだが、なんの魚か忘れてしまった。

ご飯。



おつゆは赤だし。

昨年もそうであったが、鍋が2回戦、

それも生鮑とすき焼き。

連泊するレアな客用の献立ということになろう。

メニューは一泊の客のために一種類だけ用意されている。

これ以上の我儘はいうまい。

まあ、毎年のことなので慣れてしまってもいるが。

続けて、朝飯。





二日目は湯豆腐はなし。



出汁巻玉子ではなく、オムレツ。

オムレツもむろん温かい。

レタスにポテトサラダ、ウインナー。

わさび漬けに蒲鉾、焼きたらこ、昆布の佃煮。

干物はえぼだい。

えぼだいは鯵の開きよりもうまいかもしれぬ。

まぐろ中落ち。

焼き海苔、お新香。

味噌汁。

それから。

立つ朝は、コーヒーを出してくれる。



部屋で勘定をして、10時出立。

仲居さん、若旦那に見送られて、立つ。

お世話になりました。

また、来年。

帰りは、箱根山を一まわりしていこう。

国道を登って、宮ノ下、小涌谷

元箱根に降りる。



今日は、快晴。

しかし、風が強くて寒い。

芦ノ湖も白波が立っている。

早々に車に戻り、ターンパイクへ。

見晴らしがよい、尾根道。

あまりにも美しいので、車を停めた。



箱根には、今年も会社の合宿研修など、

生まれてこの方、むろんなん度なん度もきている。

しかし、富士がきれいに見えるということは、

箱根でも意外に少ないように思う。

この姿を見ると、美しい山河のある我が国国土の

素晴らしさを思わずにはいられまい。

特に富士というのはその代表であることに

異論のある者はおそらくあるまい。

既に冬枯れの木立、芦ノ湖の青さ。

手前に箱根外輪山があって、広く裾野を見せ、

その多くを白い雪に覆われている。

イタリアシシリア、タオルミーナのホテルから

見えた、富士同様の成層火山のエトナ山も素晴らしかった。






エトナを遠景にした紺碧の地中海、

ギリシャローマ時代からの石造りの街並みもよい。

しかしこの富士の絶景とこの二日間お世話になった

箱根塔ノ沢温泉の数寄屋造りの日本旅館[福住楼]は

私達が守らねばならぬ誇るべきものであると実感する

のである。





福住楼