浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



生鰹節甘酢がけ

4月24日(火)夜



初鰹の最終回、と、いうことになろうか。


今日は、酢の物。
鰹を茹でた生鰹節(なまりぶし)の甘酢がけ。


1本買って、刺身で食べて、
さらに、カツ。


半身の1/4を残し、茹でて冷蔵庫に入れてあった。


鰹というのは、よくよく考えると、食べ方はそう多くはない。
最もうまいのは、刺身かたたき。
酢で〆たりもしないし、まぐろのように、しょうゆ漬けにも
あまりしない。


マリネや、カルパッチョというのもあるが
これは刺身のバリエーションといってよかろう。
ものがよければ、油をかけるよりは、日本人には
刺身で食べるのが、最もうまい。


火を通すと、鰹というのは、とたんに、
パサパサになる。


和食だと、甘辛に佃煮のように煮るのもある。
だた、これは鰹でなくとも、まぐろでも、
カジキでも、この系統の魚であれば、なんでもよい。


あるいは、イタリアン。
トマトソースなどに合わせて、
パスタなどにもいけるが、やっぱり、
パサパサであることは、かわりない。


和食で火を通したもので最も一般的なのは
やはり、生鰹節(なまりぶし)。
まあ、茹でただけのもの。


私の育った家では、この季節、初夏になると、なまり、なまり、といって
小さい頃から、食卓にのぼっていた。


東京生まれの爺さんや親父の好物であったのであろう。
また、安いものでもあったのかもしれぬ。


食べ方は生姜じょうゆ、で、あった。


子供にはパサパサで、ちっともうまいものとは
思わなかった。


生鰹節の甘酢がけは、池波レシピ。


池波レシピ、とはいえ、小説ではなく出てくるのは
エッセイで、先生ご自身の好物であったのであろう。


私の家でもよく出ていたものだから、
生鰹節自体は、東京下町の初夏の庶民のごく一般的な
おかず、といってよいのだろう。


しかし、酢の物にする、というのは、私は、
先生のエッセイで知った。


やってみると、生姜じょうゆよりもずっとうまいもの
だと気が付き、刺身で残った鰹は生鰹節にするが、
その食べ方は、この甘酢がけにするようになった。


酢の物なので、甘酢をかければ、終わり、
なのであるが、他のものも、やはり入れたい。


きゅうりと、わかめか。


仕事帰り、わかめはあるのできゅうりを買って帰る。


帰宅し、きゅうりを薄く小口切り。
ボールで塩もみ。


わかめは塩わかめ。


洗って、別の水を張ったボールに入れておく。


その間に、この日記書きなど、細々とした
用をする。


30分後。


塩もみをしたきゅうりをつまんでみる。


ん!。


ちょいと、塩辛い。
塩が多かったか。


洗って、もう一度、水に漬けて、塩出し。


わかめの方は、もうよいであろう。
水からざるにあげておく。


数分後、もう一度、きゅうりの味見。


よし。


OK。


これもざるにあげる。


わかめは、このままでは長いので、切っておく。


甘酢を作る。


甘酢、といっても、地方によっては、
随分と甘くするところもあるが、
やはりあまり甘すぎるのは、好みではない。


私など、砂糖なしでもよいくらい。
50ccにちょいと一つまみと、塩も少し。


きゅうり、わかめをつぶさぬように、
ペーパータオルで包んで、水分を取る。


生鰹節は手で裂いておく。


きゅうり、わかめ、生鰹節、それぞれ、先に甘酢をかけ、
よく馴染ませておく


皿に盛り付け。


上から、もう一度、軽く甘酢をかけ回す。





生鰹節の食べ方としては、やはり、これも
池波レシピだが、味噌汁、というのもある。


しかり、私は、この酢の物、が、一番うまいのではないか、
と、思われる。


カチカチに火を通さないで、ほんの少し
柔らかめに茹でる。この状態では生ぐさいのだが、
甘酢がかかると、これが消えて、パサパサな感じも
最も抑えられる。


これから、しばらく、安くてうまい
鰹が出回る季節。


今度は、七輪で炙って、たたきを、やってみるか。