浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



牛込細工町から、、、

dancyotei2009-12-13

12月11日(金)夜〜12日(土)


さて。


土曜日、なのだが、またしても、ちょいと二日酔い。


昨夜は、同僚とオフィス近所に最近できた、
「朝〆和豚専門店・豚三昧」という居酒屋(焼きとん)で
焼酎を随分と呑んでしまった。


この店は、住所は、新宿区細工町、という。


江戸の地図を出してみよう。






私が毎日、牛込神楽坂から、オフィスまで
通う通勤路、で、ある。


ついでに、現代の地図も。




より大きな地図で 断腸亭料理日記/神楽坂 を表示





この界隈、江戸の頃からの旧町名や町割りが、ほぼ、残っている。


細工町(さいくまち)、箪笥町(たんすまち)、
納戸町(なんどまち)、払方町(はらいかたまち)、
それから、蜀山人大田南畝先生も住んでいた牛込の御徒町
北町、中町、南町、あるいは、二十騎町なんという
江戸からの町名が残っている。


二十騎町には先手組の与力の二十人の屋敷があり、
南畝先生と同時代の狂歌作家、朱楽菅江
(あけらかんこう、本名山崎景貫)はその先手の与力が本職で
屋敷はここにあったようである。


細工町、とは、なんであろうか。


細工町は上の地図にあるように、江戸の頃から
町屋、の扱いで、ある。


各資料によれば、幕府の江戸城内の建物から、
調度品の類まで、蒔絵などの施された、いわゆる細工物の製作、
修理などを統括する、御細工所という組織があった。
そして、そこに所属する同心が、四十数名。
で、その、御細工所同心の拝領屋敷として
細工町は、成立しているようである。


細工同心とはいえ、幕府の家来でおそらく、最下級の
南畝先生の御徒(おかち)と同様の御家人、武士ではあった
のかとも思われる。それが、町屋扱い、というのは、いささか
不思議、ではある。


少し調べてみると、理由がわかった。


江戸の地図を見ていると、「拝領屋敷」というのが
よく出てくるのだが、その言葉の問題になる。


一般には、大名屋敷なども「拝領屋敷」という
扱いになるようである。
つまり、幕府から、土地を拝領している。
この拝領、と、いうのは、なにか。
拝領というのは、もらったのではなく、土地の所有権は幕府にあり、
勝手に売り買いをしてはいけないものではある。
まあ、大名が大きな屋敷を勝手に売ってしまうということはなかろう。


しかし、細工同心のような、おそらく貧乏な、御家人は、
土地の使用権を賃貸したり、売ることがあったようなのである。


おそらく、幕府(この場合の彼らの管理者は、御細工所の頭、
(これは中堅の旗本が勤めたよう)ということになろうが)
としては、そんな細かいことまで管理はせずに、
黙認していた、ということであろう。


それで、実質的には、本来の細工同心が住んでいる
屋敷地というよりは、町人が住んでいる
『町』であったのであろう。


(じゃあ、実際に、その細工同心の役目をしている
人々は、どこに住んでいたのか、というのが、
疑問になる。例えば、御徒の人々は南畝先生のように、
先のように御徒組屋敷に、ちゃんと、住んでいたようである。
(おそらく、ここは幕末まで御徒組の屋敷として扱われていたと
思われる。)


そこはそれ、役目によっては、いろいろ、“黙認”の
程度も違っていた、ということなのか。または、時間の経過で
細工同心の家も人も入れ替わり、売る奴も、貸す奴もいて、
最初は、細工同心の屋敷地であったが、段々にウヤムヤになり、
それほど広いスペースでもないし、もういいか、ここは、
町屋にしてしまおう、というようなこと、だったのかもしれない。)


ともあれ。


牛込の細工町の由来は、そういうことらしい。


で、この牛込界隈、今は、その御徒町の跡である、北町、中町、
南町、あるいは、二十騎町などは、山手、牛込のお屋敷町という
色彩で一軒一軒が、庭もあるような、比較的大きな区画の静かな住宅地。


だが、ここ細工町は、江戸の頃から、町であったせいであろう、
路地に接して、びっしりと家が建っている。
そして、近年はこのあたり牛込中央通りを軸にして、
以前には私も回ってみたが、フレンチやら、イタリアンなどの
密集地帯で、ミシュランの星付きのフレンチまである。


さらに、最近は、そうしたレストランだけではなく、
趣味そばだったり、和食の店も増殖中。


そんな流れで、この路地に、ちょっとお洒落な看板の
「朝〆和豚専門店・豚三昧」なる店も
できたのであろう、と、推測する。


毎朝この店の前を通っていたが、
『朝〆和豚』というのが妙に気になる。


豚はやはり、新鮮な方が、特に焼きとん(モツ)系は
よいのだろう。


夜になり、天気予報通り、風も出て、大雨で寒いなか、
8時前、同僚と二人、この店に入り込む。






これは、見た通り、レバ刺し。
寒いので、焼きとん、は食べなかったが、
いう通り、レバ刺しも、なかなかうまかった。


しかし、とにかくまあ、食べるよりは、
呑む方が先に、なってしまって、今朝のテイタラク、と、
いうわけであった。








朝〆和豚専門店・豚三昧
TEL:03-3831-6430
住所:台東区東上野2丁目2−9