浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



駒形・うなぎ・前川

dancyotei2009-04-08


4月5日(日)夜


さて。


夜。


今週は、田舎から、義母(内儀(かみ)さんの母)が
出てきているので、ご接待。


上京の主たる目的は、東京見物なのだが、この時期、というのは
花見、であるようだ。
そういえば、昨年も、ちょうど、今頃出てきていた。


昨日は内儀さんが靖国神社やら
千鳥ヶ淵の見物につき合っていた。


田舎、と、いうのは、北海道。
北海道にもむろん、桜はあるのだが、やはり
この時期の、東京の桜は特別、の、ようである。


やはり、密度が違う。
私も、大阪、名古屋、等々、日本国内の他の大都市と比べても、
下町を含めて、東京都心の桜の植えられている本数というのは、
違うのではないかと思う。


やはり、これは、桜、それもソメイヨシノの好きだった、と、いう、
徳川将軍家、江戸から続く、よき伝統なのかと思われる。
隅田川向島の桜も、家光の頃からであったか、植えられ始めたと
聞いたことがあるし、千鳥ヶ淵、市谷、四谷をはじめ、
内外(うちそと)の江戸城の濠も今でも代替わりをむろんしているが、
桜はたくさん植えられている。


秋、で、あれば、京都、であろうが、
ビルの街になっている現代でも、
桜の季節は、東京というところは、格別な空間になっていると
いってよいだろう。


そうである。江戸から続く、東京の伝統。


桜。


そして、今思い出したが、もう一つあった。
なにあろう、夏の花火。
花火大会の数も、東京は圧倒的に多いのではなかろうか。


東京人は、桜と花火が大好きだし、
東京人は、これを自慢してもよいのだと思う。


ともあれ。


義母は今年は、妹(叔母)と共にきているので駒形あたりの
ホテルに泊っている。


近くがよかろうと、うなぎの、前川に決めた。


時期的には、どぜう、も、よいし、なんといっても、
あの駒形どぜうの建物やら、入れ込みの座敷は、
是非見せたいのだが、どぜうは、うちの内儀さんもだめだし、
義母も今一つらしい。
(北海道の人々は、あまりどぜうを食わないのか。
そういえば、うなぎ蒲焼も、あまり食べる習慣はなかったと
内儀さんなどからは聞いている。)


6時過ぎ、元浅草の拙亭を出て、真っ直ぐに東に向かう。
完全に、真っ直ぐ。新堀通り国際通りも突っ切って、
蔵前通り(江戸通り)に出る。
ホテルに寄って、義母と合流。
(叔母は、疲れた、ということで、ホテルで休まれるとのこと。
今日は、一日、台東区内の循環バス、めぐりん、で、谷中方面へ
いっていたらしい。
そういえば、あれ、この前のアドマチでやっていたっけ。)


蔵前通りを渡り、隅田川側の一本裏に入り、北上。
前川は右側。


入って、一応予約をしてあったので、名前をいう。


予約をしてきたのは初めて、で、ある。
二階の、窓際であった。


前川の窓際、と、いうのは、むろん、隅田川が見える側、で、ある。


ビールをもらい、お通しがくる。





芋茎(ずいき)と油揚げの煮たの、で、ある。
ここのお通し、と、いうのは、なかなか、よい。


前にきた時には、葉唐辛子の佃煮であった。


葉唐辛子にしても、芋茎と油揚げの煮たの、も、ともに、
江戸、東京下町の昔からの味、と、いってよかろう。


こういうものが出てくると、やはり、うれしくなる
(義母などは、これに「あら、甘いわね。」などと、お気に召しては
もらえなかったようだが、、。)


さて、注文は、肝焼き、、、が切れていたので、
肝山椒、というもの。煮たもの、で、あろう。


それから、内儀さんの希望で、うまき。


そして、やっぱり、白焼き。
これは外せないだろう。


そして、うな重は、小さいの。


肝山椒からきた。





これが、意外に、めっけもの。
肝、自体には、濃い味は付いておらず、
甘辛の煮凝りがまぶしてある、と、いうもの。
山椒も利いている。


乙、で、ある。そして、うまい。


うまき。





白焼き。





どちらも、うまい。



食べながら、呑みながら、、窓から見える景色。


実のところ、いつもの夜は、隅田川というのは、ただ暗いだけ。
対岸の首都高速などの灯りが見えるだけ、、、という
それこそ、昔の風情などは、ありえようもない。
(昼間も同様であるが。)


しかし、今日は、ちょっと、違っていたのである。
なにかというと、屋形船。


花見で、ある。


この駒形あたりには、桜はないのだが、
向島隅田公園あたりの夜桜を見ようという
屋形船の行き来がとてもにぎやか。


これはよかった。
義母にもよいものを見せられた。



うな重





十年以上、十五年ほども前になるかもしれぬ、
義父が存命の頃、義母とともに、南千住の尾花
へ、一緒にいったことがあった。


先に書いたように、北海道の人はあまり、うなぎは食べない。
しかし、義父は、それから、うなぎが好きになった、という。
そんなこともあったわね、と、思い出話。


東京で、少しは、よい思い出を持ってもらえたのは、よかった。




腹一杯食って、神輿をあげる。
なぜだか、ここは、勘定は一階の玄関で、立ってする。
昔からそうなのか。
これだけの店であるから、座敷でしてもよさそうなもの、
では、ある。


ともあれ。


ホテルまで義母を送り、叔母さんに挨拶もし、
ぶらぶら歩いて、帰宅。






前川