浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



新橋烏森・鮨処・しみづ

dancyotei2009-04-09



4月8日(水)夜


さて。


昨日、ほんの少し、で、あるが、仕事の段落がついた。


昼からパシフィコ横浜の展示会に。
横浜もよい天気。


春を通り越して、初夏のよう。
海風も気持ちがよい。
展示会などよりも、横浜散歩でもしたい気分、で、ある。


展示会は16時までで終わり、帰る。
東海道線で新橋まで戻ってくる。


もういいか。
今日は、直帰、、、、。
(まあ、本当のところ、朝から、そのつもり、
であったのだが。)


さて。
どうしようか。


新橋。


ここで思い出したのが、そう、2月にいった、
鮨、しみづ


新橋は、私には、そうそうこない場所。
ちょうどよい機会である。


しかし、、先週の神田鶴八
から、こう鮨が続く、のは、ヤケ、で、あろうか、、。


まあ、そうとうに、仕事のストレスがたまっていることは
確か、なのだが、この程度で、多少抜けるのであれば
次善、ではあろう。(むろん誰かに接待させているわけでもないし、
社用でもなく、手銭であり、借金をしているわけでもない。
内儀(かみ)さんには、多少いわれるだろうが、、。)


TELを入れ、あいているのを確認。


烏森神社の路地を入り、店の前。
夏のような、葭簀(よしず)の入った、格子。


開けて、入る。


18時と、時刻も早い。


先客は、一人。


親方の正面に、座る。


ビール。
サッポロラガーの中瓶。


やっぱり、ちょっと、つまもうか。


「なんにします?」


「なにが、いいですか?」


聞いてみる。


「なんでも。」


そうであろう。
こういう聞き方は、失礼というものだ。
うちは、うまいものしか置いていません。
基本はそうであろう。


と、親方は


「刺身、か、煮たもの、、か、、」


「あ、そうですね。煮たのは、なにが?」


「子持ちいか、なんかは?」


「はい。じゃ、それ、お願いします。」


やりいかの子持ち。煮いか、で、ある。
下足も入れて、甘いたれもかけて、小鉢、で。


柔らかい。


喉が渇いていたので、ビールをがぶがぶ
呑んでしまう。
瓶から、どんどん減っていく。


はて?
よくよく、グラスを見ると、形はごく普通、なのだが、
一般にあるものよりも、ゆうにふたまわりほどは、大きい。


親方にいってみると、
「小さいグラスって、嫌いなんですよ」と。


そうである。
まあ、これは好み、の問題であるが、
よく、小ぶりの一口程度のグラス、というのがある。
店の雰囲気、あるいは季節によっては、
それもいいこともあるが、こんな初夏のような日には、
がぶがぶ呑みたい。
大きめのグラスはわるくない。
チマチマしていては、呑んだ気がしない。


つまみは、煮いか、だけにし、にぎりにしてもらおう。


最近、ここ、しみづ、鶴八、むろん、柳橋美家古も
含め、美家古系にくるようになり、あらためて、鮨やは、
にぎり、である、と思うようになってきた。


美家古系は、バランスとして、酢飯が大きい、と、
なん度も書いているが、にぎってうまい、と、いうこと。


これは鮨をにぎる、ということを大切に、第一に考えている、
ということになる、と、思われる、のである。


つまり、にぎることを前提に、魚を用意している、と。


まあ、考えてみれば、鮨や、としては当たり前、のこと。


鶴八などは、間違いなく、そうだろう。
そのため、普通の鮨やよりは、魚の種類は随分と少ない。
にぎれないものは、置いていない、と、いうことである。


よく、鮨やでは、だらだら、呑むものではない、と、
いわれることもある。
しかし、今一般には、東京でも鮨やでは、にぎりの前に、
刺身が切られ、つまみ、呑んで、仕上げに、にぎりというお客が
多いだろうし、店もつまみをたくさん出した方が、儲かるので
こういう客は大切にしているだろう。


それはそれで、わるくはないが、鮨やは、やっぱり
にぎり鮨を食うところ。刺身や魚料理が食いたければ、
鮨やでなくとも、むろんよい。ちょっと気の利いた小料理屋、
カウンター割烹なども、東京にもたくさんある。
そいうところへいけばよい、ともいえる、かもしれない。


しかし、考えてみると、一方で、天神下の一心、
観音裏の一新など、つまみにも力が入っており
一品料理としてうまいし、かといって、にぎりも同様に、うまい。
むろんこういう例もある。


それぞれの店の考え方、で、あろうし、どちらでなければ
ならない、ということはなかろう。
結局、にぎりにしても、つまみにしても、出すものが、
品質、技ともに優れ、うまいのかどうか、で判断すべきであろうし、
また、それぞれの客がどういう呑み方、食べ方をしたいのか、
なにを求めるのか、好き好きで選べばよいもの、でもあろう。


ともあれ。


にぎり。
今日は、おまかせ、ではなく、
好み、で、にぎってもらおう。


まずは、いかと、まぐろ赤身。
一個ずつ。


いかは、あおりいか。
二月にきた時にも、あおり、で、あった。


先週の鶴八は、まだすみいか、で、あった。
あおりは、すみいかよりも、食感は柔らかい。
あまみは、同じよう、で、あるが、香り、という点では
すみいかは、独特のものがあり、これもよい。
まあ、どちらも、うまい、のは間違いないが。


一つ目を食べて、やっぱり、思い出した。
そうである、ここは、酢飯が赤酢。
存在感のある酢飯、で、ある。


まぐろ赤身。
これもよい。
やわらかく、上品なあまみ。
そうとうなモノ、なのではなかろうかと、想像される。


次は、と。


親方の後ろにかかっている、ねたの木札をみる。


随分と、光ものが充実している。


鯖は、もう終わり、なのであろうが、
小肌、鯵、きす、春子、と、四種類ある。


やっぱり、私は光ものが好きなのである。
こうあると、うれしくなってしまう。


まずは、小肌と、きす。


きす、から出てきた。


きす、というのは、にぎりとしては、めずらしい、だろう。
きちんと、〆てある。


過去にどこで食べたろうか。
天神下の一心であったか、、。


珍しいですね、と聞いてみると。


うーん、そうですね、今は。
でも、昔は、よくあったみたいですよ。


とのこと。


小肌。


魚を拵(こしら)えている親方の手元を見ていると、
一匹が随分と小さい。にぎりは、二枚付け、で、ある。


この時期は大きい小肌ばかりかと、思っていた。


ともあれ、うまい。


ビールを呑み終わり、燗酒、の気分でもないし、
あんまり呑みすぎてもいけなかろう、
焼酎でもないかと聞いてみる。
と、置いていない、と、いう。
理由は聞かなかったが、おそらく、呑ませすぎたくない
ということなのではなかろうか。


ということで、ここから、お茶。


さて。


結局、光ものは、全部、いってしまう。
春子に、鯵。


鯵は、一塩(ひとしお)はしているようにも思われるが、
酢洗いはしていない、かもしれない。


春子の〆具合は、きす、小肌よりも、身が厚い分、浅め、
かもしれない。
うまい。


と、ここで、海老を頼んでみる。


「ちょっと、、」、と、親方。


やはり、茹でる、のである。
時間がかかると。


「はい。」と、答え、
少し、ゆっくりやろう。


じゃあ、間に、たいらぎ。


平貝、で、ある。


サクサクとした食感がうまい。




少し、待っていると、海老ができた。



大きめのさいまき海老で、包丁で、トンっと、よい音を立てて
半分に切り、切ったそれぞれを再度にぎり直してから、
つけ台の上の黒い皿に置く。


やっぱりここも、色が格別に鮮やかに茹で上がっている。
味もむろんよい。
頭の方の味噌のところも、一緒に残している。


さて、仕上げにかかる。


はまぐり。


穴子
ここ、お得意。炙った穴子を、にぎり、半分に切り
片方を塩、片方に甘いたれをかけて、出す。


最後に、ここのところ、鶴八、美家古で、
なんとなく習慣になっている、鉄火巻、をもらってみよう。


と、巻くのは、赤身か、中トロくらいか、
そして、巻き方を聞かれてしまった。
「普通の細巻きでいいですか」と。


美家古流で、ともいえないので、
細巻きで、中トロくらいを、と、頼む。


たっぷり中トロを入れてくれて、これもうまい。


お勘定。


11000円也。



これだけ食べて、やっぱり、これは、安かろう。




おいしかったです、と、店を出る。



しみづ、鶴八、美家古、一心、一新、、、それぞれ、微妙に違うが、
にぎりがうまい、鮨や。



東京の鮨の世界は、ゆたかで魅惑的。


たのしいもの、で、ある。






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