11月21日(水)夜
寒くなってきたせいであろうか。
鍋が続いている。
それも、今日も、池波レシピ。
鴨鍋、で、ある。
鴨鍋というと、拙亭では正月。
甘辛で、芹を入れ、生玉子をくぐらせて食うのが通例になっている。
池波レシピでは、もう一つの鴨鍋がある。
作品は剣客商売。
おはるが実家(関谷村の百姓)から鴨やねぎ、芹、手打うどん、
などをもらってくる。
そういえば、関谷村で思い出したのだが、
いきなり、余談で恐縮である。
TVの剣客商売(藤田まこと版)をスカパーの
時代劇専門チャンネルでよくみるのだが、
この関谷村のおはるの実家が出てくることがある。
基本的に、京都近郊での撮影であるから、むべなるかな、なのだが、
関谷村の実家は、山がすぐそばにあり、段々の畑、いかにも山村。
これには、いつも違和感を感じてしまう。
関谷は、今は、足立区千住関谷。京成線の関谷が最寄だろうか。
筆者もさほど遠くはない、葛飾の四つ木に住んでいたので
土地感はあるのだが、隅田川、綾瀬川(これに今は、荒川が加わる)
などの川がすぐ近くを流れ、田んぼや畑、沼などがあったところ。
基本的には今でも平地で、坂すらない。
今、坂があるとすると、隅田川や、荒川の橋や堤防へ上がる坂である。
山が見えたとしても、遠く筑波か、秩父の山々。
池波先生の作品はどれも基本的には、江戸東京の実際の
地名が登場し、歩いてどのくらいかかるのか、といった“土地感”
のある時代小説である。
故郷の江戸東京を追体験したいという筆者などは
そこが大切なところなのである。
TVでもやはり、それを求めてしまう。
現代の鐘ヶ淵、関谷にオーバーラップさせてみる。
そうすると、どうしても違和感を感じてしまうのである。
ともあれ、鴨鍋、で、あった。
**************************
小兵衛は、おはるに命じ、金鍋(かななべ)で葱と供に焼き、
酒をふくませた醤油(しょうゆ)につけて、(鴨を)食べることにした。
酒が出た。
**************************
仕事帰り、近所のハナマサで(鴨胸肉、500g、600円程度)
買う。
帰宅し、まずは例によって、炭を熾す。
鴨肉は、凍っているので、レンジで解凍。
半解凍程度で取り出し、出刃包丁で半分ほどをスライス。
残りは冷凍庫へ。
鍋は、小さな鉄鍋。
すき焼き用の一番小さなものである。
お燗用に鉄瓶も熱くする。
あとはねぎを切るだけ。
火が通りやすく、薄く斜めに切る。
原作は「酒をふくませた醤油につけて」で、以前には、
これでやったが、ニキリを作るのが面倒なので、今日は、
酒としょうゆをそのまま、鍋に入れて焼くことにする。
お燗もつけ、皿やら箸やらをお膳に並べ準備完了。
火鉢で鉄鍋を熱し、脂身から入れ、馴染ませる。
肉、ねぎ、酒、しょうゆを入れ、焼く。
肉は、熱が入ると、みるみる縮んでいく。
色が変わったら、もう食べてもよいかもしれない。
すぐに、食べる。
ただし脂身は別。
大きなものは、鍋の中で外し、そのまま焼き、脂を出す。
しかし、肉もさることながら、脂の染みた、ねぎ。
ひょっとすると、こちらの方がうまいのではなかろうか。
これを意図して、細く切ったのである。
クタクタになって、脂が絡んだ白ねぎは
うまいこと、おびただしい。
ねぎをどんどん追加し、昨日の大根ではないが、
この“鴨脂ねぎ”は、いくらでも食べられる。
結局長ねぎ二本を一人で食べてしまった。
うまかった、うまかった。
ねぎとしょうゆの鴨鍋。
甘辛もよいが、これも、よい。