浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



銀座8丁目地先 長崎郷土料理・ぎんざ吉宗

4464号

12月7日(木)第一食

長崎ちゃんぽんが食べたくなった。
調べても近所ではあまり見当たらない。

以前は、有楽町の交通会館の地下にあって
よく行っていたのだが、数年前に閉店してしまった。

どこへ行けばよろしかろう。

出てきたのは、銀座[吉宗(よっそう)]。
私も知っている、茶碗蒸しが有名な老舗長崎料理店。
ちゃんぽんではなく皿うどんならば、あるよう。

正直のところちゃんぽんと皿うどんの違いも
よくわかっていない私だが、行ってみようか。

[吉宗]は知ってはいたが、行ったことがあったろうか。
一度行ったような気もするが、よく覚えていない。

[吉宗]は銀座8丁目のクラブ街にに大きな店が
あったはずだが、令和3年(2021年)に銀座ナインに
移転していた。

さて、銀座ナイン。
皆様もご存知であろう。
銀座と新橋の間の高速下の商業街、モール。
主に飲食店が入っている。

ここの住所は中央区銀座8丁目7番地先、と書いてある。
この最後の「地先」、というのはなんであろうか。

それには、ここが以前なんであったのか、
から紐解いていかなければいけない。

ご存知の方はおられようか。
そう、川、または堀。
外濠から浜御殿(浜離宮)までで、
汐留川といっていた。

現代の地図

明治以降徐々に埋め立てられ、60年前、最初の
東京オリンピック前の昭和38年(1963年)までに
高速もでき、現在の姿になっている。

江戸の地図(銀座側)

境目なので、切絵図も二枚に渡る。

江戸の地図(芝側)

新橋というのは、今の中央通りがこの汐留川に
掛かっていた橋の名前。別名芝口橋。
この中央通りが東海道になるわけだが、ここから先が
芝になり、渡ったところの町名も芝口で、芝口橋。
汐留川の河口には将軍家の別邸浜御殿がある。

明治の地図。(明治30年(1987年)「東京一目新図」)

これは、明治。
伊達仙台藩と脇坂竜野藩の広大な藩邸跡が陸蒸気の
新橋ステーションになっているが、新橋も汐留川も
江戸のままちゃんとある。浜御殿は浜離宮になっている。

そして述べたように東京オリンピックまでに汐留川は
埋められて、上に高速ができ、その下が商業施設になった。

川の跡で、実はここ、住所がない、のである。
「地先」というのはそういう意味のよう。

本来、川は住所の外なので、中央区でも港区でもどちらでも
よい、もしくは川の中央で半々に分かれるような
気がするが、中央区銀座8丁目地先と、中央区になっている。
どういうことなのか?。

日経新聞に「銀座にナゾの番外地 秘めた歴史に迫る」
(2011年10/21)という記事を見つけた。
この銀座ナイン(と同インズ)の疑問を調査しているのである。

どういうことかというと、川を埋めたてた時にやはり
区議会で議論されたらしいのだが、結論には至らなかったという。
住んでいる人はいないので、区に入る住民税は発生しない。
固定資産税や事業税は都の管轄らしい。
警察、消防の管轄は事業者と話し合って決めていると。
つまり、一応、所属が決まっていなくとも問題はない、
というのである。
中央区でも港区でもほんとうはないのだが、銀座8丁目地先は、
自らそう名乗っているだけ、のよう。
銀座ナインという名前は、銀座9丁目にしてほしいという
事業者の願い、という。
まさかの真実。勝手に名乗っていただけ。
こんなことがあるのだ。おもしろい。

ただ、こうなるとまたまた疑問が出てくる。
こうして川や濠、堀を埋めたてた場所は数多くある
はずだが他はどうであろうか。
ポイントは埋め立てて高速になり、かつ下が商業施設に
なっているところ?。例えばこの汐留川に交わっている
三十間堀は埋め立ててそのまま町になっており、当然、
地番も振られている。また、一本東の楓川は川底を高速
が走る形。高速(道路)になると地番が振られない
ということか。汐留川は高速に例外的に商業施設が
できた、ということか。
いや待て、汐留川はたまたま区境で所属を決めるのに
もめたので、そのままになった。もしかすると、
そういうことか。これ、また他も調べてみよう。

ともあれ、銀座[吉宗]であった。

銀座線で13時半到着。
ここの皿うどんは二種類あって、太麺と揚げた細麺。
太麺は数量限定でもう売り切れ。
細麺の皿うどんと、名物茶碗蒸しのセット、
1640円也、にしてみる。

きた。

皿うどんの量も多そう。
そして、大きな器の茶碗蒸し。
この器のデザインもよい。
有田焼だそうな。

開けると、

渦巻の蒲鉾が二つ見えるが、大きいだけに具沢山。
椎茸、鶏肉、銀杏などなど。

皿うどん
こちらは、見た通り、いわゆる、あんかけ細麺の
かた焼きそば。味は、まあ、特にかわったところは
ない、かもしれぬ。

そして、茶碗蒸しに入っているものもそうだが、
長崎の特徴であろうか、蒲鉾の赤い部分が
大きいよう。

これだけ食べると、さすがに腹一杯。

ご馳走様でした。

 

ぎんざ吉宗

中央区銀座8丁目7番地先 銀座ナイン2号館 地下1階
03-6274-6002

 

 

 

※お願い
メッセージ、コメントはFacebook へ節度を持ってお願いいたします。
匿名でのメールはお断りいたします。
また、プロフィール非公開の場合、バックグラウンドなど簡単な自己紹介を
お願いいたしております。なき場合のコメントはできません。