浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



黒毛和牛フィレステーキと里芋

11月29日(水)夜

少し前から考えていたのだが、
いつもの

国産牛フィレを買ってきた。

ちょっと久しぶりかもしれない。

国産牛フィレのステーキ。

付け合わせは、色々考えたのだが、里芋。

ステーキの付け合わせに里芋というのも、
かなり妙ではあるが、里芋が食べたかった。

今、里芋は旬といってよいのだろう。

里芋というのは考えてみるとあまり食べなくなった。

芋といえば今は、じゃがいも。
肉じゃが、フライドポテト、ジャーマンポテトを始め、
里芋と比べると食べる機会は圧倒的に多い。
先日作った豚汁もレシピは里芋であったが、私は
じゃがいもで作った。

だが、芋といえば、以前は里芋のことを指していた。
これは地域性もあって、東日本の方が強いか。

私が学んだ日本民俗学では芋=里芋に特別な意味を
認めていた。
正月の雑煮に入れる地域も多い。
お節料理の煮しめにももちろん入る。
儀礼食のポジションを占めているといってよい、と。

東北地方で秋に行われる一大イベント、芋煮会
芋も、里芋である。
おでんは味噌を塗って食べる田楽の頃から豆腐同様に
里芋も食べられていたし、汁で煮込むおでんになっても
東京では里芋は入れるものであった。

歴史的にも、里芋は稲作以前、縄文期から
食べられていたと考えられているよう。
農畜産業振興機構

里芋から米に主食が変わったといえるのか。
儀礼食に里芋が残ったのは、その名残、とも。

では、じゃがいもは日本ではいつから作られ
食べられていたのか、試みに調べてみた。
と、これが意外に古く、17世紀にはジャカルタから
入ってきており、ジャガタラ芋がじゃがいもになった
という。そして、江戸期、飢饉の時に飢えをしのぐもの
として広まった、と。 (農水省)明治以降かと思っていた。

ともあれ、里芋、少なくとも私も含めて東京の者からは
どんどん影が薄くなっていくのかもしれぬ。

閑話休題

里芋はやっぱり火を通してそのまま、塩。
あるいは、煮っ転がしにとどめをさすだろう。
半分ずつ両方やろうか。

皮を包丁でむく。
今、里芋は水煮が売られているが、やはり
あれは柔らかすぎる。
自分で堅めに火を通したい。

皿にのせ、ラップをし、

レンジ加熱。
途中触って、様子をみながら。

じゃがいもも最近はレンジ加熱だが、里芋は
じゃがいもよりは早く火が通るかもしれぬ。
しばらく皿にタオルを掛けて保温。
余熱でも火が通る。

串を刺して、一応火の通りを確認。

半分、小鍋に移し、しょうゆ、砂糖、酒。

文字通り、転がしながら煮る。
ある程度色が付いたら、火を止め、つゆがかぶるように
鍋を傾けて置いておく。
置いておく時間を取ると、味が染みる。

肉。

今日は佐賀産。個体識別番号では、
ん?黒毛和種

あ、これ、国産牛ではなく、黒毛和牛!。
見直すと、表示もそうであった。
値段はいつもの国産牛と同じくらいの3000円
ちょいであったが。

2歳半の雌。沖縄石垣市生まれ。
以後、佐賀県玄海町で肥育のよう。

両面軽く、塩。
フライパンにたっぷりオリーブオイル。

油が熱くなったらスプーンで油を上から掛け回し
ながら、焼く。

いい色になったらひっくり返す。

反対側もこんがり焼く。

皿に上げて休ませる。
ドリップを出し切る、のが意図だが、さほど出ない。
いつもより多少火を通しすぎか。

皿へ。
肉にはミルで黒胡椒を挽きまぶす。

里芋はどちらも、温め直す。
煮っ転がしと、塩を振っただけ。
http://www.dancyotei.com/2023/nov/beefsteak_fillet.jpg

ビールを開けて、切る。

焼き具合はこんな感じだが、まあ、よいか。

肉は、とにかく柔らかく、うまい。
また、うま味にもあふれている。
黒毛和牛だが、脂は強すぎぬ。
あえて、これを選んで売っているのか、わからぬが。

里芋は、塩と煮っ転がし、やはり、この二つの味が
最もうまかろう。

妙な組み合わせというのか、完全に別物。
だが、満足。

 

 

 

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