浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



おでん

4213号

11月20日(日)夜

急に寒くなった。
曇り空。

昼の気温が13℃。
雨も降りそう。

初時雨(はつしぐれ)という季語がある。
関東地方はまだ冬らしい冬には間があるのだろうが、
そんな感じであろうか。

だが、これ、ちょいと疑問があった。
気象学的には時雨は日本海側の初雪前の雨のことをいう。
そういう意味で太平洋側で初冬の雨を時雨とはいわない
と思うが、季語としては使ってもよさそう。
多少の矛盾を感じて、ちょっと調べてみた。
すると、例えば

一時雨礫や降て小石川 芭蕉「江戸広小路」

など江戸・東京で時雨を詠んだ句はたくさんあるよう。
気象学以前から時雨という言葉はあり、初冬の雨を指す
季語。大手を振って使ってよいということであろう。
だが、なぜこういう違いが出ててきたのであろうか。
ちょいとおもしろい。

ともあれ。
こう寒いと、なんであろうか。

鍋!。
おでん、だ。

この夏、沖縄風?、豚足が入ったおでんを作った。

そう、その豚足はほぼ煮崩れているのだが、
そのつゆを凍らせて、まだある。

味は、豚足の入ったしょうゆ味。
いつも作っている、しょうゆのみの東京おでん、
ではないのだが、豚足のつゆはかなりうまい
ことを発見した。

おでんのつゆというのは、練り物、あるいは昆布、
などからもよい出汁が出る。
煮返し、煮返し、どんどんうまくなる。

関西、名古屋、静岡などもそうか。
東京は入れないが動物系の牛すじを入れる。
動物系の出汁が入ったおでんというのは、
うまいもんである。

脂だけでなくコラーゲンがたっぷり出ているし、
牛すじよりも豚足は安い。

豚足のおでん、よいものを、見つけた。

このつゆでまた、煮ようか。
冷凍庫から出しておく。

買出しは上野松坂屋へ。

上野松坂屋には日本橋[神茂]のおでん種を
置いている。
[神茂]という店は江戸期、東京の白いはんぺんを
発明した、まあ、東京一のおでん種の老舗であろう。

以前は、おでん種というものにたいした思い入れは
なかった。スーパーで売っている安いものも同じ
で、あろう、味にたいして違いなどないのでは、と。
が、改めて[神茂]の焼き竹輪だの、ボールだの
普通のおでん種を食べてみるとやはり、味が違うのが
わかった。安くはないが、うまい。

バラバラといろいろ買って、帰宅。

帰宅。

つゆ。

半解凍程度に溶けてはいるのだが、コラーゲンが
すごいので、まだ、固体。
水を足し、しょうゆ加える。

種は、こんな感じ。

焼き竹輪、つみれ、ボール、うずらボール、すじ、が
神茂。これに昆布と木綿豆腐。

玉子もゆでよう。
味が染み込みにくいので、先にゆでて、
皮をむき、つゆに入れ、煮立てる。
昆布と豆腐も先に入れた方がよいだろう。

一度煮立てて置いておく。

2時間ほど。

他の種はすぐに味が染みる。

食べる30分ほど前に他の種を入れ、煮立てる。

極弱火。

よいだろう。

さすがにビールではなく、燗酒。
先日からある、菊正宗のひやおろし
今日は火鉢に鉄瓶ではなく、簡易にレンジで燗をつける。

レンジで燗を付ける場合は、大きな陶器の器
中国茶の取っ手付き湯呑)に湯を張り、ここに徳利を
突っ込み、軽くレンジ加熱。
ぬる燗。

おでんと燗酒の出来上がり。

時計回りに豆腐、うずらボール、昆布、つみれ、すじ。
真ん中がボール。

[神茂]のつみれは、初めて食べたがほぼ白。

つみれに限らず[神茂]のものはどれも上品
ではなかろうか。
きっと、すり身の原料の魚も上等なもののみを
使っているのではなかろうか。

そして、ここなん回か、この豚足出汁のおでんを
食べてきたが、練り物というのは、どんなつゆにも
かなりの適応力を示すのではなかろうか。
世の中には、ポトフのような洋風に仕立てた
おでんもあるし、もしかしたらスパイスの香りを
ある程度抑えれば、カレー味なんというのも
ありえるのかもしれない。

関西風よりも、しょうゆだけの東京おでん。
いや、それ以上に、しょうゆ味でこってりの方が、
よりうまい?。もはや元には戻れない?
なんとなく、宗旨替え、かも。

 

 

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