浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



箱根塔ノ沢・福住楼 その3

dancyotei2015-12-30


12月26日(土)〜28(月)



朝飯を終えて、部屋の移動。

山側の桐の1から、早川側の桜の1へ。

桜の1というのは風呂場に最も近い

川側の二階の角部屋。

以前にもなん回か泊まったことがある。

入ったところが主室で次の間が奥という変則的な造り。



これが建物の角の次の間、六畳。

二面が窓。





白木の衣桁掛けと縁側側の飾り窓。

R(アール)の付いた三角形の意匠がおもしろい。

次の間の床と押入れ。



押入れの扉の表面も手が込んでいる。





主室側の縁側。



外側の手すりというのか、

ちょっと洋風な味もあるように思われる。

主室の押入れ。



襖(ふすま)の色が上が白で下が赤。

この配色も大胆というべきであろう。

TVが置かれてその向こう、数寄屋造りで書院と呼ばれるところ。



机が置かれ本来は書きものをしたところ。

ここの造りも見事というべきであろう。



光を落として撮影するとこんな感じ。

欄間部分の彫刻の意匠の見事さと障子の桟の細かさが際立つ。





床の間と床脇。

これも決まりもの。



ここで年賀状書き。



これが入口の扉。



半間の襖。

押入れの紅白の襖と呼応する斜めの紅白の切り替えしの意匠。

入口から直(じか)に主室なので目隠しの衝立(ついたて)が

左に置かれている。

主室の額。



山 光 澄 楽 心



「山光澄我心」山光我が心を澄ますというのが漢語の決まり文句として

あるようだがそのバリエーションなのかも知れぬ。

読み方は山光澄み心楽しむ、か。

この部屋は劇作家の北條秀司氏縁(ゆかり)という。

2時近くなって、湯本まで昼飯に出る。



玄関は昨日はなかった薦被(こもかぶ)りの四斗樽(しとだる)。

クリスマスが終わって正月の準備が始まっている。

番頭さんに声をかけて出る。

玄関外。



これは手洗い(?)。

毎年こうだが、黄色い菊の花が浮かべられこれも正月の準備か。

玄関の硝子戸。



写っている外の風景がゆがんでいるのがおわかりになろうか。

板ガラスの表面を平らに作る技術のなかった頃のものであろう。

このゆがんだガラスに出会うと、なにかとてもほっとする。

正月の駅伝ももう少し。



早川の流れ。



流れが渕になると、温泉の色であろうか

水が白濁している。

おわかりになろうか、石にポツポツと鴨。



アップ。



都心部のお濠などにも最近は鴨が増えているように思うのだが

実際にはどうなのであろうか。

ここなん年かお昼は、

湯本駅手前の一号線沿いにある鮨や[中村家]。

ビールをもらって、鯵と穴子のにぎりと、



一人前。



ぶらぶらまた、塔ノ沢まで、歩いて戻る。



部屋に戻り、私はもう書き終わっているので、

また、転寝(うたたね)。

この美しい部屋で手足を伸ばして

ゴロゴロする時間というのは、とても贅沢ではないか。

これだけでもこの宿にくる価値があるというもの。

パッときて、温泉に入って飯を食って

また朝すぐにパッと帰るのでは、まったくもってもったいない。









つづく







福住楼





中村家

0460-85-7351

箱根町湯本691