浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



すき焼き・浅草・今半別館 その1

4167号

9月5日(月)夜

さて、今日は浅草[今半別館]。

少し前に内儀(かみ)さんが予約をしていた。

前回は、5月にすき焼きではなく、しゃぶしゃぶを
食べにきていた。

17時半から。

雷門前までタクシー。
降りて仲見世の右側の裏通りを北上する。

雷門はウイークデーのこの時刻だが、そこそこの人出。

17時半ちょうどに到着。
右側の玄関から入って、名乗る。

案内され、部屋へ。

お、珍しい。一階、で、ある。
ここのところ、ずっと二階であった。
今半別館の座敷は予約のみだが、部屋は選べない。

一階の一番手前。

初音(はつね)の間。

さかのぼると、以前にもここにはあたっていた。

初音とは、初音の鼓のこと。むろん歌舞伎、人形浄瑠璃
義経千本桜」に出てくるもの。

音羽尾上菊五郎家と澤瀉(おもだか)屋市川猿之助家の
十八番といってよろしかろう。
長いが見せ場も数多く、華やか。今でも人気の芝居。
なん度も観ているが私も好きな芝居の一つである。
是非通しで観てほしい。

この芝居に出てくるキーアイテムが初音の鼓。

部屋全体に鼓のモチーフが散りばめられている。
芝居の初音の鼓は狐とセットなのだが、狐はむろん
部屋の意匠には出てこない。狐が部屋にいるのは、
さすがに気味がわるかろう。

廊下側の欄間。

隣室との境の欄間。

掛け軸。

この絵は、なんであろうか。
平安あたりの装束の女の子と男の子。
安寿と厨子王であろうか。
掛け軸は月毎などで掛けかえるので必ずしも
鼓ではない。
署名落款があるが私には判別不能である。

壁側下の戸棚の戸。左右あって右。

彩色された彫刻。扇に梅と小さく竹。華やか。

左。

同じく、菊か。
梅と竹であれば、松でもよさそうだが、
春秋の対ということになるのか。

廊下側の障子。

下側には彩色された波に鼓の絵。
地は金であろうか。鼓には菊、桜の花が
描かれており、これも華やか。

上の障子は葦簀。
前にこの部屋きた時には、10月で、ちゃんと鼓モチーフの
障子が入っていたので、これは夏だけの趣向。
庭が透けて見えるのも涼し気。
夏にここにきたことはなかったのかもしれない。
まあ、確かに真夏にすき焼きでもない。

隣の部屋と間の襖。

これも波に鼓。
波と鼓というのは、決まりものの組み合わせなのか。
鼓の音を波に例えることがあるよう。
生憎まったくわからないのは、悲しい。

さて。
黒塗りの椅子とテーブルの席。
掛けて、注文。

すき焼きのコースは7,000円から15,000円まであるが、
いつも通り下から二つ目の10,000円の言問(こととい)。

肉は近江牛A4~A5クラスの肩ロース170g。

このへんがちょうどよい。
この上は、サーロインリブロース

先付け。

これ、小さなものだが凝っている。
全体にちょっと甘酢の出汁。
スモーク香を付けた炙りほたて、味を含んだなす、
こまかく叩いたおくらととろろ、一番上が貝ひも。

前菜。

割り箸も触れておこう。
見たことのあるタイプ。木目がきれいに通り、
先端部分にかけて、丸く削ってあり、手元側が
斜めに切ってあるもの。

皿の上は、右から半熟玉子。季節的に月に見立てているか。
隣が、下の四角く切ってあるのが柿。のっているのが
胡桃味の白酢とのこと。

真ん中が穴子の白焼きの鮨。

松葉に刺さっている二つは銀杏、なのだが、
餅銀杏と説明された。
食感がもちもちした銀杏。
特別な種類の銀杏があるのかと思うと、
そうではなく、もち米と一緒に炊くとできるらしい。
初めての出会いである。

左が、むかごのうに焼きとのこと。
むかごを餅のように、なのか、餅となのか固めて
うにを塗って焼いたもの。

どれもなかなか手が込んでいるよう。

 

つづく

 


今半別館

03-3841-2690
台東区浅草2-2-5

 

 

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