3月18日(火)夜
今日はなにを食べよう。
例によって、オフィスを出て牛込神楽坂の
駅に向かいながら、考える。
今日などもだいぶ昼間は暖かったのだが、
さすがに夜になると、ちょっと肌寒い。
また簡単に湯豆腐でもいいか。
いや待て、毎度湯豆腐ではやはり、芸がない。
こんな時には、池波レシピが強い味方。
「大根と鶏の鍋」は、少し前にやったし、
うん、そうだ。
「浅利むき身と大根の千六本の鍋」は、しばらくやっていない。
浅利などはむろん年がら年中あるが、
やはり貝の旬は春であろう。
駅の隣のスーパーに寄る。
浅利むき身というのは、普通スーパーなどには
あまり置いていないのだが、ここにはある。
浅利のむき身というのは東京では定番のおかずの
材料であった。
遠浅の東京湾ではたくさん獲れた。
売場にきてみると、
あれま!。
むき身どころか、むいていない浅利もない。
時刻が遅く、売り切れか。
こうなっては、仕方がない。
売場にあるもので考えよう。
ぶり切り身、天然、が、半額に、今、売場のお兄さんが
シールを貼っていった。
簡単に、照り煮のようなものにしようか。
あとは?。
浅蜊むき身のことを考えていたら、小松菜に
行き当った。
私の育った家には私の父、父方の祖父母も
同居をしていた。
父、祖父、祖母は代々東京の大井町あたりの生まれ育ちで
曽祖父の代までさかのぼれば、あのあたりの百姓であった。
浅蜊むき身があれば小松菜としょうゆで味濃く煮た
煮びたしが、定番のおかずであった。
小松菜を一把。
帰宅。
小松菜を洗って、根元の部分を切る。
根本だけは丁寧に茎の間の泥を洗い、5cm程度の長さに切る。
例によって切ったものは葉の部分、葉と茎両方ある部分、
太い茎の部分、火の通りやすさによって三つに
分けておく。
小松菜の煮びたしには浅蜊むき身がなければ、
油揚げなど入れるが、冷蔵庫に厚揚げがあったので
薄く切って入れよう。
鍋に湯を沸かし小松菜の太い茎の部分から入れる。
ここで調味料を入れる。と、いっても、酒としょうゆのみ。
我が家で煮物といえば魚の煮つけでも、
砂糖はおろか、みりんも入れなかった。
今でも私は小松菜の煮びたしには、しょうゆと酒のみが
合うと思っている。
厚揚げも入れ、最初に入れた茎の部分がしんなりしてきたら、
次に太い部分、最後に葉と、順に入れる。
柔らかくなったら、火を止めて置いておく。
さて。
ぶりの方。
本当は、照り焼きなのであろうが、面倒なので
フライパンで照り煮。簡単にできる。
これは、フライパン。
熱し、軽く油を敷く。
両面を焼き、ここにしょうゆ、酒、砂糖を入れ、煮詰める。
しょうゆは、濃口と今日はたまり、も入れてみる。
多少、コクが出るか。
煮詰まってきたら、みりんも少し。
別段みりんを入れなくともよいのだと思うが、
プロは照りを出すために、最後に入れると、よく書かれているので、
入れてみた。
火が入ったぶりは崩れやすいので、慎重にヘラで取って皿へ。
小松菜も小鉢に取る。
照り煮の方は、たまりが入っているので、
見た目にも多少黒っぽくなっている。
コクもある。
小松菜の煮びたしの方。
しょうゆだけの濃い味の小松菜が私の故郷の味、
で、ある。
品はないが、うまいもんである。
酒にも、飯にも合う。