浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

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上野動物園開園130周年記念で思うこと 〜鯖 その1

dancyotei2012-03-21


3月20日(火)春分の日



春のお彼岸、中日(ちゅうにち)で、ある。


お彼岸はご存知の通り仏教の行事で
先祖の墓参りの日。


春彼岸、秋彼岸なんというと、季語、にもなるが、
ただ彼岸といえば、俳句では春のことのよう。


こんな句があった。




毎年よ彼岸の入に寒いのは 子規




寺町である浅草の拙亭近所も黒い礼服を着た、
墓参の人々を見かける日。毎年の恒例、である。


暑さ寒さも彼岸まで、などといい、彼岸は我々の
季節感の基にもなっているが、子規先生ではないが、
今年は、特に、いつまでも寒い。


休みも、寒いと、あまり外にも出なくなり、
家でゴロゴロ、と、いうことになってしまう。


これではいけない、と、
夕方、御徒町に魚を見に、自転車で出る。


寒いので、コートにマフラー、手袋までしている。


そうそう。
そういえば、今日から上野の動物園の130周年の
イベントが始まる、というニュースがあった。


コピーが『はじまりはいつも上野から』、というらしい。


130年。


そんなになるのか、というのが正直な感想、で、ある。


明治15年(1882年)開園ということ。


彰義隊と官軍との戦い、上野戦争によって、
山東叡山寛永寺であったものが焼き尽くされた。


そして、そのあとが、明治政府により公園として指定され、
明治10年に第一回内国博覧会、その後、14年に第二回と
博覧会が開かれた。


これに伴って、不忍池が一部埋め立てられ、池の畔(ほとり)で
競馬が行われたり、上野の山と不忍池が全体で、
文明開化を押し進める明治政府の一大見本市会場となっていった、
のである。


その一つが、動物園であったということ。


確かに『はじまりはいつも上野から』なのだが、
これは江戸に連なるものほとんどを塗り潰していった歴史、
でもあることを、私などは考えずにはおれない。


例えば、上野東照宮などこんな中で、顧みられることもなく
むしろ、邪魔者として、荒れるにまかされていたのか、
と、いうことなのである。

池波正太郎と下町歩き「上野の山」

ご存知の通り、寛永寺というのは、歴代将軍の
霊廟もあり、幕府の祈願寺江戸城の次に大事な場所
で、あったのである。
明治新政府にとっては、これらをどうしても
塗り潰さなければならなかった。
そういう意味で、明治以降も上野は多分に
政治的な場所であったのである。


私などが思うのは、もう、130年たったのだから
よいのではなかろうか。寛永寺を再建する、というのは
どうだろうか。


例えば、寛永寺の本堂、天台宗では根本中堂というが、
瑠璃殿とも呼ばれ、今の噴水広場の中央にあった。





これは江戸期(文化文政頃)、二代歌麿の、
「新版浮絵上野東叡山之図」というものである。
手前が法華堂、常行堂という建物と、高廊下、
奥が根本中堂。


橋のような高廊下の場所は、ちょうど、今の動物園の前の広場。
で、その奥が噴水広場ということになる。
この絵だけでは、よくわからぬが、やはり、
瑠璃殿というくらいで、瑠璃色に輝き、日光東照宮のような、
きらびやかな、いわゆる権現造、であったのであろう。
あの場所に、つい百数十年前まで、こんなものがあった、
ということは、ほとんどの人が知らなかろう。


むろん、再建するにはお金はかかるし、噴水広場も
わるくはないのだが、文化的な意義とすれば、
圧倒的に、寛永寺根本中堂再建であろう。


日本橋の上に首都高を走らせているのも同様なのだが
あまりに江戸がこの東京でないがしろにされてきたし、
それが、今もって続いている。
時間が経てば経つほど、忘れられ、なかったこと、
に、なっていく。


この時代に、私はもう一度、考えてみることを
提案したいのである。東京の原点、元は江戸であったと。
そして、それはすばらしい文化を持った都市であったと。


さてさて。


そんなことを踏まえつつ、春が待ち遠しい130周年を迎える、
動物園のある上野、なのだが、話は、アメ横、で、あった。




自転車を飛ばして、昭和通りを渡り、丸井裏を抜けて、
アメ横のいつもの魚やにきてみる。


今日はなにがあるかな?


お!、鰹がある。
1本800円。


日本橋の吉野で食べてうまかったが、自分で料理するのは
とても荷が重い、だろう。


鯛に、小鯛(春子)もある。


穴子
一山、300円。
これは随分安いが、割いていない。
自分でさばくのはさすがに私には無理、で、ある。


穴子はうなぎなどと同じように頭に目打ちを打って割く。
天ぷら用にぎんぽをさばくのに使ったので、目打ちは
家にあるのだが、穴子はやったことはない。


鯖だ。


5本、500円。


ちょっと、この春先になってくると、危険ではある。
産卵期が近付き、子持ちでパサパサ、ということも過去、
なん度かあった。


実は今日は、〆たものが食べたい、と、思って、
出てきたのであった。


子持ちでも、脂があることもある。
迷うが、まあ、一か八か、いってみるか。


買って、帰宅。


なかなか、いい大きさ、で、ある。





出刃包丁を取り出す。


すると、、、お!。



ちょいと、錆が出ている。
これはいけない。
研(と)がねば。


出刃はステンレスではなく、普通の鉄製なので、
洗ってよく乾かさずに仕舞ったりすると、てきめん、
すぐ錆が出てしまう。


一度、鯖を冷蔵庫に仕舞って、包丁の研ぎに、かかる。






長くなった。



つづきはまた明日。