浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



鶏と大根の鍋

1月17日(日)夜


昨日、さぼったおかげで、一日、仕事。
内儀(かみ)さんも、隣の部屋で、仕事。


夕方になっても終わらず、、、
今夜は、なにを食べようか、、、
隣の部屋から、内儀さんも出てきて、相談。


鮨でも取る?
鮨は寒い、か。


冷凍庫をのぞくと、鶏皮が凍っている。
鶏皮は茹でて、ぽん酢、
あるいは、甘辛に煮てもよいし、
つまみとしては、好物、で、
冷凍庫にいつも凍っている。


大根の鍋、にしようか。
簡単だし。


野菜室には、、と、のぞくと新聞紙にくるまれた
大根もある。


大根の鍋、と、いうのは、池波レシピ。
過去、なん度も作っている。


どんなものかというと、大根をほぼ、そのまま煮ただけ、
なのだが、こんなものが、と、思うのだが、滅法うまい。


基本は、大きめに切った大根を出汁で煮るだけ。
であるが、バリエーションはいろいろあり、昆布出汁、
鶏皮の出汁、あるいは、油揚げを入れる、などなどある。
煮た大根は、しょうゆだけをかけて、食べる。


なぜだか、池波作品でも、仕掛人梅安シリーズに多出している。
おそらく、この類の大根鍋は、鬼平には皆無だと思うし、
剣客にも、ほとんど出てこなかったと、思われる。



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 「ま一つ、こんなものでもよければ、いっしょに箸を入れながら、



 話し合いましょう」



 畳に部厚い桜材の板を置き、その上の焜炉(こんろ)に



 土鍋が懸かっている。



 ぶつ切りにした大根と油揚げの細切り。それに鶏の皮と脂身を、



 これも細切りにし、薄目の出汁をたっぷり張った鍋で煮ながら食べる。


新装版・梅安針供養 仕掛人・藤枝梅安(四) (講談社文庫)


池波正太郎著 「仕掛人・藤枝梅安 梅安針供養〜あかつきの闇」講談社文庫から



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この場面は品川台町の針治療の診療所兼梅安の住まいに、
目黒の碑文谷村で今は古女房と百姓をして暮らしている、
香具師の元締め、萱野の亀右衛門が頼みごとがあって訪れ、
二人で、この簡素な鍋を囲んでいるところ、で、ある。


いかにも、それらしい道具立てとして、
この鍋が登場している、と、いうことであろう。


大根の鍋は、池波先生ご自身もお好きで、
よくやっていたようでもある。


鶏皮は、冷凍庫から出して、流水で解凍。


内儀(かみ)さんが、なにか用意はないか、
というので、油揚げを買いに行かせる。


大根というのは、火が通るのに、時間がかかるが、
千六本に刻むと、火の通りは早い。


池波レシピには、浅蜊と大根の千六本の鍋
と、いうのもある。
浅蜊の場合は、火が通りやすいので、大根もそれに合わせて、
千六本がよい。


今日の、大根そのものを食べる、というものだと、
千六本でもわるくはないが、やはり、大きく切った方が、それらしい。


そこで、今日はある程度、火の通りやすい大きさ、
1cm幅で輪切りにしたものを、さらに1/4に切る。


油揚げは短冊切り。


鶏皮は、一口に。


土鍋に水を張り、鶏皮、大根を入れ
このくらいの大きさに切っても、やはり時間はかかるので
ある程度煮えるまではガスで煮ておく。


一緒に、鶏皮から脂も出て、これがよい出汁になる、のである。


カセットコンロを用意。


今日は一日家にいたので、陶器の火鉢にはずっと
火が入っており、鉄瓶がかかっている。
これは、燗をつけるためにし、鍋はカセットコンロ、
と、いうわけである。


お膳に用意し、油揚げはここで入れる。






ぐらぐらと煮えて、大根はもう食べられる。





しょうゆだけをかけて、食べる。


これがうまい。
油揚げも、鶏皮も、しょうゆだけ。


いくらでも食べられる。


あらかた食べ尽くし、つゆが残った。


冷蔵庫に冷飯がある。
毎度お馴染み、おじや、に、しよう。
鶏皮の出汁が、十分に出ていてうまいであろう。


冷飯を残ったつゆに入れ、割りほぐした生玉子を回し入れ、
軽くかき混ぜて、でき上がり。






味付けは、やっぱりしょうゆだけ。



むろん、うまい。