浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



上野・そば・翁庵

4509号

2月15日(木)第一食

南高北低の気圧配置という。

典型的な、夏型というが、次によく現れるのは春らしい。
南の太平洋高気圧から、暖かい空気が流れ込み
気温が一気に上昇する。

今日の最高気温は、21.1℃(12時27分)。
2月というのに。

もう今日は、コートはいらない。

そば、で、ある。

上野警察前の[翁庵]。

やはり、今、最もよく行くのがここ、で、ある。

気軽に入れて、味のあるそばやが、なかなかなくなった。
構えず、普段着で入れる。
むろん、そばもうまい。
そして、なんといっても私のような半端な時刻に
食べたい者に、ありがたいのは昼夜通しで
やっているということ。

まあ、ここは上野駅にほど近く場所がよい。
半端な時刻にも客がよく入る、ということもあろう。
開けている店側のメリットもある。

池波先生によれば、東京下町のそばやなどは、
昼夜通しでやっているのは普通のことであった、と。

店の効率を考えれば、アイドルタイムに休むのは、
至極当然なことであろう。
働いている人にとっても、また、電気代、ガス代など
開けていれば、経費は発生する。

そばやの通し営業は客からすると半端な時刻に
入れて、便利。だが、それだけではないのではないか、
と、思い至った。

東京のそばやでは、昔から酒の呑む習慣があった。
これはなにも、池波先生だけのものではない。
歌舞伎、落語などにもよく登場する。
これは、やはり、昼の時分時(じぶんどき)の混む
時刻ではなく、客の引けた、半端な時刻がよろしかろう。

これなど、今、休みを取る店。近くのサラリーマンの
昼飯で混むそばやで、一人ビールなどを頼む人を
見かけることもあるが、これは場違い。
やめた方がよろしかろう。席を長時間占領するし、
昼飯を食っている人々にもいい気分にはさせない。

やはり、混んでいない3時、4時、といった時刻に
ゆっくりと酒を呑み、そばを手繰りたい。

2時、3時、4時、といった時刻、ただ、そばを提供する
だけでなく、ゆっくりと寛(くつろ)げる時間を
くれる。それが昼夜通しのそばやであろう。

上野のガード下あたりに「昼から飲めます!」と
看板を出している居酒屋をよく見るが、そばやで
呑むというのは、そうではない。

酒なら一合、ビール一本まで。
寛いだ時間といっても、勘違いをしてはいけない。

あれやこれやつまみを取って本格的に呑むというのは、
いけない。3人以上、大人数も避けたい。
それこそ、そばやでは野暮というもの。
そばやは、居酒屋ではない。
きっちり、区別をしてほしい。
しこたま呑みたいのであれば、ガード下へどうぞ。

ともあれ。

今月、ここは実は二回目。
前回は、2月5日、そう、あの雪の日。

燗酒(適燗)に月見いも。

ねぎせいろの小さなかき揚げがのった、
温かいねぎ南蛮。

アップ。

青みは、小松菜。

せいろでもそうだが、温かいそばでも、器は小さめだが、
そばの量はなかなかの量。

温まった。

そして、今日は酒はなし。

暖かくなったので、ねぎせいろ。

ちょっとわかりずらいかもしれぬが、
ここらしい、気持ち緑がかった、そば。

先に、つゆのかき揚げをつまむ。

かき揚げをある程度食べないと、そばをつけずらい。

わさびを箸先につけて、そばを一箸つまむ。

毎度書いているが、この一箸が大切。

適切な量、長さだけつままなければ、いけない。

つまみ上げて、つゆにつけて口に運ぶわけだが、
つゆにつけるのは、そばの先、1/3だけ。
そして、決して、箸はそばから離してはいけない。
これが、正しいそばの手繰り方。

最初の一箸はそばが多いので、どうしても
大量に、長く、つまんでしまう。

焦る必要はない。
なん回かつまみ直し、長さ、量を調整する。

つゆを先端1/3だけつゆにつけ、一気に手繰る。

よいのどごし。

一気に手繰り、食べ終わる。

うまかった。

ご馳走様でした。

 

台東区東上野3-39-8
03-3831-2660

 

 

 

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